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第75話 プラスじゃなくてマーク2

 ヴァイスの声が僕にしか聞こえていないと言う、かなりショックな出来事であったが、今後外でヴァイスと会話する時は気を付けないといけない。


 体も回復して動けるようになり、みんなで晩餐をすることになった。貴族の晩餐にはいい思い出がないのだが、ヴァイスは楽しみにしているようだ。


「エドワード、ちょっといいかい?」

 

「父様。なんでしょうか?」

 

「ちょっと会わせたい人物がいるから、ついてきてもらえるかな?」

 

「分かりました」


 父様に連れられてやってきたのは厨房のようだ。


「ロブジョン、ちょっといいかな?」

 

「ハリー様! ご用事なら呼んで下されば伺いましたのに」

 

「晩餐のために忙しい君を呼びつけられないよ。一応今晩の主賓の顔をまだ見せてなかったのを思い出したから、連れて来たよ」

 

「これはありがたき幸せ。エドワード様お初にお目にかかります。ヴァルハーレン家で料理長を務めております、ロブジョンと申します。今夜はエドワード様のために色々な食材を集めましたので、お楽しみいただければ幸いです」

 

「ありがとうございます。とても楽しみにしていますね。そういえば、料理長はこのような調味料をご存じですか?」


 僕は小さな壺に小分けした醤油を料理長に渡す。


「ちょっと味見しても?」


 頷いて返事をすると、料理長は小さじを持ってきて少しすくう。


「ほう、真っ黒だとおもったのですが、濃い赤色でしょうか……」


 そのまま口に入れると。


「――! こっ、これは! この調味料単品では濃いですが、間違いなくローダウェイク名物の魚に合います! エドワード様はこの調味料をどこで手に入れられました?」

 

「手に入れたのは王都に寄ったときなんですけど、この調味料、醤油自体は遥か西にあるアシハラ国というところの物なのですが分かりますか?」

 

「アシハラ国なんて国の名前は聞いたことありませんな? ハリー様はご存じで?」

 

「そうだね、私も名前ぐらいしか知らないレベルだね。エドワードは王都でアシハラ国の人に会ったのかい?」

 

「はい、実は……」


 アキラさんと出会ったことを伝えると。


「ハリー様! 是非ともその親子をうちで雇っていただけないでしょうか!?︎ このショウユは素晴らしいです!」

 

「そんなにかい? しかし王都はそんな酷い状況なのか、ブラウ伯爵の方もさっさと片付けないとね」

 

「あの……」

「エドワードどうしたのかな?」

 

「その親子なんですが、僕の商会で雇う約束をしているのです」

 

「なんと! さすがはクロエ様のお孫様!」

 

「どうして、おばあ様の名前が?」

 

「それがね。お母様は少し食い道楽な所があってね。いや少しではないかな」

 

「そうなんですね」

 

「それでエドワード様、この壺は譲っていただけるので?」

 

「ええ、料理長なら僕よりもっと活かせるのではないかと思いまして」

 

「ではハリー様、私は晩餐に間に合わせるため、すぐ調整いたしますのでこれにて!」


 料理長は去っていくと大声で他の料理人に指示を出している。


「行っちゃいましたね?」

 

「エドワードには色々と聞きたいことが、7年分も溜まっているのに、どんどん増えていく気分だよ」


 それについては申し訳ありません。

 

「それで、コウサキ親子のことなんですが」

 

「問題ないよ。その親子には迎えの馬車を手配することにしよう。商会については、エドワードと相談したい人もいるみたいだから。晩餐の時にまた話すといいよ」

 

「ありがとうございます」

 

「感謝するのは僕の方だよ。あんな生き生きとしたロブジョンを見るのは久しぶりだからね。今日の晩餐は僕も楽しみだよ」


 ◆


 部屋に戻ると、ジョセフィーナさんがオロオロしていた。


「エドワード様を勝手に連れ出したのはハリー様でしたか! ちょっと目を離した隙に、いなくなってしまったのでビックリいたしました」


 ジョセフィーナさんはちょっと涙目だった。


「すまないね。ロブジョンに会わせたらすぐ帰ってくる予定だったけど、ちょっと長引いてしまってね」

 

「僕が話し込んでしまって、ごめんなさい」

 

「悪いのはハリー様なので、エドワード様は謝らなくて大丈夫です! エドワード様を連れ出すときには、私かアスィミに一言お願いいたします」

 

「僕が悪かったよ。次からは気を付けるよ」

 

「あと少しで捜索隊を編成する所でしたので、そうしていただけると助かります」


 捜索隊ってちょっと大げさすぎないか? ジョセフィーナさんは僕を守れなかったことが、少しトラウマになっているみたいで、侍女というよりは護衛という感じが強い。


「それじゃあ、後はジョセフィーナ、よろしく頼むね。僕は仕事に戻るから」

 

「畏まりました」

 

「それで、ジョセフィーナは僕に何か用事?」

 

「はい、湯あみの準備が整いましたので、お知らせに参りました」

 

「湯あみ!?︎ ヴァイスも一緒に洗っていいかな?」

 

「もちろんでございます」

 

「ヴァイス、湯あみだって」

 

『おお! エディの魔法で洗うのも気持ちがよいが、湯につかるのも気持ちよいから楽しみだ』

 

「よし、行こう」


 ジョセフィーナさんに案内されてやって来たのだが、お風呂をみてビックリした。


『なんだこれは!』

「大きいな……」


 石造りの部屋が大きいだけでなく、大理石のような石で作った大きな湯船まであったのだ。


「ビックリされたようですね。これはソフィア様の故郷であるニルヴァ王国の湯場をまねて、クロエ様が作られたのです」

 

「母様の故郷のですか?」

 

「ニルヴァ王国はかなり寒い地域になるため、湯の中に浸かる風習があるらしいです。ニルヴァ王国で体験されて気に入ったクロエ様が作らせたのです」


 素晴らしいお風呂だ! ナイスおばあ様! 食べ物のことといい、おばあ様とは気が合いそうだ。

 

 ヴァイスとお風呂を見てテンションが上がっていたのだが、後ろを振り返るとジョセフィーナさんは既に裸だった。


「ジョセフィーナさん、なんで脱いでるの!?︎」

 

「もちろん、エドワード様のお世話をするために決まってます。あと『さん』はいりませんので」

 

「1人で入れますよ?」

 

「いつ何時、賊が侵入してくるとは限りません。いざという時にお守りできないのでは専属侍女失格ですから」


 ジョセフィーナさんの真剣な眼差しで見つめられると、断ることが出来なかった。

 

 軽く体を洗ってから湯船に浸かる。


「これは気持ちいいね」

『うむ、最高である』


 ジョセフィーナさんにジッと見られているな。


「どうしました?」

 

「いえ、エドワード様は本当にヴァイス殿の言葉が分かるのだなと思いまして」

 

「やっぱり変ですかね?」

 

「申し訳ございません。まだ慣れてないだけだと思いますので」

 

『エディ! いつもの頼む』


 ヴァイスが湯船から出ると、魔法での洗浄を催促する。


「分かったよ。ミラブール」


 いつもの透明な水球が現れ、その中にヴァイスが飛び込むので水流を発生させると、ヴァイスが洗濯機で洗っているかのようにグルングルンと回った。


「今のは!?︎」


 しまった、ジョセフィーナさんがいるんだった。しかもグルグル回るヴァイスの前に、母様、おばあ様、メグ姉、カトリーヌさんが現れたのだ。この風呂って混浴なのだろうか?


「「「「……」」」」


 4人とも、いやジョセフィーナさんも入れると、5人が水球の中で回るヴァイスを凝視している。

 

 しばらくすると、ヴァイスが水球から飛び出て、毛についた水滴を落とす。だからみんなにかかるって。

 

「エディ、今のは何?」


 みんなを代表してメグ姉が聞くようだ。メグ姉に質問されると、なんでも答えてしまうのはもはや条件反射。


「体を洗う魔法です」


『体を洗う魔法!?︎』


 みんな驚いている。

 

 母様がヴァイスの毛を触って、何かを確かめている。


「お義母様! この毛並み凄いですわ!」


 母様がそう言うと、女性5人が裸のままヴァイスの毛を触っている。うーむ、シュールと言うか、カトリーヌさんはやっぱり最強だな。


「エディ? この魔法はヴァイス用なの?」

 

「えっ、違うよ。元々旅の途中で体を綺麗に洗いたいと思って作ったから」

 

『作った!?︎』

 

「うん、僕が洗う時はこんな感じで使うよ」


 80センチぐらいの水球を作り、その中に入り水流を発生させる。


「へえ、中の水がグルグル回ってるのね」


 メグ姉が感心して水球に手を触れる。


「水じゃない!?︎ 温かいわ」

 

「もちろん、水じゃ冷たいからね。ある程度体を洗ったら、頭と顔は小さな水球で洗うんだけどね」


 そう言うと、もう1つ水球を追加して頭と顔を包む。まるで透明な雪だるまを纏っている姿。ミラブールプラ……じゃなくてミラブールマーク2と言った所だろうか。

 

 綺麗に洗えたと思うので、魔法を解除した。


「こんな感じです」


 終わった途端、みんな僕の髪や肌を触り始める。


「エディ? これお姉ちゃんにもやってもらえるかしら?」

 

「えっ? メグ姉も洗うの? いいよ。ミラブール」


 そして洗うのが終わると、みんなメグ姉を触るので僕も触ってみる。


「メグ姉の肌ツルツルになったね」

 

「「「「――!」」」」

 

「ふふっ、お姉ちゃん少しは綺麗になった?」

 

「メグ姉はいつも綺麗だよ!」

 

「ハゥッ!」


 メグ姉が倒れた!


「母様、メグ姉が! 回復魔術を!」

 

「マルグリットさんなら大丈夫よ。それよりも私たちもその魔法を、お願い出来るかしら?」

 

「母様たちもするの?」


 4人が頷く。よし、やった事ないけど4人纏めて。


「ミラブール」


 4人に水球が纏わり付き洗っていく。カトリーヌさんの水球がヤバいことになっていて目が離せない……。


 そして、ピカピカになった5人の女性と湯船に浸かる。ヴァイスは我関せずと湯船を犬かきで泳いでいるな。川で泳いでいるのも見たが、あまり泳ぎは得意ではなさそうだ。


「それでエディ。今の魔法はどういう仕組みなの?」


 隠し事できるはずないので、エンシェントウルフから連れ去ったお詫びに魔法を教えてもらったことから、ミラブールの仕組みまで洗いざらい全て喋った。


「ふーん。目に見えない程細かい空気を混ぜるのね」


 メグ姉が精霊魔法で試してみるが上手くいかないみたいだ。


「精霊魔法じゃ、そこまで複雑なのは無理そうね」

 

「そもそも、詠唱が必要な魔術じゃ再現できないわ」


 母様が言うと。カトリーヌさんが困った顔で。


「そもそも、修行方法がエディ君の説明ではよく分からないわね」

 

「すいません。もっと詳しく聞いておけば良かったと反省してます」

 

「エドワード様と一緒に湯あみをすれば問題ないのでは?」


 ジョセフィーナさんが、爆弾をぶち込んできたよ。


「そうですが、エドワード。この魔法の魔力の消費量はどうなのかしら? 要塞のときのようなことはもう嫌よ」


 母様は魔力の使い過ぎを気にしているようだ。


「初めて作ったときは多かったのですが、たくさん使ったせいか今では大したことないですよ」


「そうなると、ジョセフィーナの案が一番になるわね」


 おばあ様、全然一番ではありません。1人でゆっくり入りたいような気もするが。問題は後回しにして取りあえず話題を変えることにした。


「あの……母様。ジョセフィーナの首の傷を治して欲しいのですが」

 

「エドワード様!?︎」

 

「エドワード、ごめんなさい。フィーナの傷は時間が経ちすぎてもう治せないのよ」

 

「エドワード様。この傷は自分への戒めのためにあえて残したのですからお気になさらず」

 

「ジョセフィーナは何一つ戒めを受けるようなことはしてないよ! 僕のせいでごめんね」

 

「エドワード様……」


 ジョセフィーナの首の傷に触れる。傷が無くなりますようにと願いを込めて。

 

 すると、触れた部分から虹色の光が広がり、光が収束するとジョセフィーナの傷は無くなっていた。


「エドワード様、今のは……」

「フィーナ! 傷が消えてるわ!」

「そんな……」

「エディ……あなた……」


 メグ姉が何かに気づいたようだ。


「どうして精霊魔法まで使えるの!?︎」

 

「精霊魔法?」

 

「今、ジョセフィーナの周りにたくさんの精霊が集まってたわ」

 

「傷が消えて欲しいとは思ったけど、精霊魔法は使ってないよ」

 

「そうなの? 勝手に集まったのかしら」

 

「そんなことあるの?」

 

「普通はないわね」

 

「メグ姉が危なかった時、指輪の精霊が教えに来てくれたことがあったけど……」

 

「そんなことがあったのね。まあエディなら精霊に愛されても不思議ではないけど」

 

「そうなの?」

 

「まあ、たまたまエディに力を貸してくれただけかもしれないけど、良かったじゃない」

 

「うん、でも勝手に消しちゃってごめんね、ジョセフィーナ。もし次、僕が攫われても二度とそんなことしないでね」

 

「エドワード様!」

 

 僕は涙を流すジョセフィーナに抱きしめられてしまうのだった。





 追伸。ジョセフィーナは結構着痩せするタイプのようです。



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