第74話 目覚め
目を覚ますと豪華なベッドに寝かされていた。
体が思うように動かないなと思っていると声が聞こえる。
「我が神よ朝の供物にございます」
『うむ、ご苦労! 今朝はなかなか美味そうな肉だな!』
「オーク肉のステーキにございます」
横を見るとちょっと豪華なソファに祭られている? ヴァイスが肉を食べていた。
その前には頭の上に犬のような耳のついた銀髪の女性が両膝をついてヴァイスにお祈り? している。
「ちょっとヴァイス何やってるの!?」
『おお! エディか! やっと目を覚ましたのだな』
「エドワード様! 目を覚まされたのですね!」
犬耳の女性の澄んだ青玉の瞳が僕を見ている。僕が返事をしようとすると。
「奥様――! エドワード様が――!」
扉を開けて駆け出していった……。
「何なんだいったい……」
『エディが寝すぎたから、みんな心配しておっただけだろう』
「えっ!? 僕そんなに寝てたの?」
『うむ、それは……』
ヴァイスが答えようとすると、ドタバタ走ってくる音がする。
開いたままのドアから最初に駆けつけて来たのはメグ姉だった。
「エディ!」
「メグ姉!」
メグ姉は僕を抱きしめてくれる。そうだった……僕はメグ姉を助けるために要塞で戦ったんだっけ。
「メグ姉、無事でよかった。怪我はもう大丈夫なの?」
「エディのお母さんに治してもらったのよ」
そこで追加でドタバタ音がしたかと思うと、他の人たちが入ってきた。
「メグ、早すぎよ」
「マルグリットさん、母親の私より先に行くなんてズルいですわ!」
カトリーヌさんと母様、メリッサさんにコレットさん、後は髪の色から判断してジョセフィーナさんかな?
母様が近づいてくると、メグ姉は僕を母様に渡す。
「本当に心配しました。折角再会したのに、今度は大怪我をして十日も目を覚まさないなんて」
「ごめんなさい……」
「でも本当に無事で良かったです」
カトリーヌさんはみんなに遠慮したのか抱擁はなかったのだが、少し残念に思ってしまった。
そして、母様がまだ紹介したことのない人の紹介を始める。
「要塞で少し見たかもしれないけれど、エドワードの専属侍女のジョセフィーナよ」
「ジョセフィーナです。要塞ではお見苦しい姿をお見せしてしまって申し訳ございません」
ジョセフィーナと呼ばれた女性は、ホワイトブロンドの髪にエメラルド色の瞳だ。凄く綺麗な人なのだが、首についた傷が痛々しい。
「よろしくね。怪我が治って良かったよ」
「そして、こっちが新たにエドワードの専属侍女にしたアスィミね。彼女は狼人族なのよ」
「アスィミです……」
「さっきヴァイスに食事を上げていた人だね。僕が寝てる間お世話してくれてたのかな? ありがとう」
「我が神をお世話するのは、当然のことなので問題ありません」
「神?」
思わずヴァイスを見る。
『わっ、我は何も言ってないぞ! その狼人族の女が勝手に言い出したのだぞ!』
「私たち狼人族には分かるのです。子狼の姿をしていますが、紛れもなく私たち狼人族にとっては神です」
「そうなの? でも僕の友達でヴァイスって名前だからよろしくね」
ヴァイスの紹介をしていると、さらに人が入ってきた。
「本当にエドワードが目を覚ましたんだね!」
父様がそう言った瞬間、何かに抱きしめられた。
「エドワードォー! 会いたかったぞー! 儂がじいじだ!」
「父さん、エドワードがビックリしているから」
僕を抱きしめていたじいちゃん? が突然吹っ飛ぶと、僕はまた別の人に抱えられていた。
「何をするのだクロエ! 痛いではないか!」
「まったく孫を怯えさせてどうするのさ。エドワード良く帰ってきたね、私がおばあちゃんのクロエだよ」
「……おばあちゃん?」
「ん? どうしたのかしら?」
マジか! どこがおばあちゃんなんだ。どう見ても20代後半にしか見えないぞ。
「いえ、あまりにもお若く、父様の姉様かと思ったので、少しビックリしました」
「これは驚いた。この子とても良いね。私に預けなさい。立派な武将に育ててあげるわ」
「辞めてください。お母様に任せたらエドワードが戦闘狂になってしまうじゃないですか」
父様やおじい様もヤバイって聞いたんだけど、おばあ様もそうなのか! ここはどこかの戦闘民族か?
『エドワードよ、家族に出会えて良かったではないか』
「ありがとう。ヴァイスがいたから来ることができたんだよ」
『だから最初にいったではないか、我は役に立つと』
「確かそんなこと言ってたね!」
ん? なんだか生暖かい視線を感じるな?
メグ姉の方をチラッと見ると。
「子狼と戯れるエディ! 良いです! 可愛すぎます!」
戯れる?
どういう事?
見渡すとみんな目を逸らした。
父様の方をみると。
「いや、エドワードは男の子だがまだ7歳だ。1人で旅するのは寂しかっただろうからしょうがないと思うよ!」
これはもしかして……。
「えっと確認だけど。さっきアスィミさん。ヴァイスと会話してましたよね?」
「エドワード様、私のことはアスィミと呼び捨てにしてください。それとヴァイス様と会話なんて恐れ多いです」
「えっ? 会話してたじゃん」
『エディよ。その女は我の言うことが、なんとなく分かるようだぞ。さすがは狼人族だ』
「ヴァイスは知ってたの? ヴァイスの声が僕にしか聞こえてないって」
『もちろんだ。大体考えてみろ、神の声が誰にでも聞こえるはずがないではないか。この世界では知らんが、普通、神の声が聞こえる者を、聖女だったり巫女など特別な存在として扱っているだろう』
「じゃあ、エンシェントウルフは人と会話してたみたいな流れの話だったけど?」
『エンシェントウルフのは念話だから、誰とでも話せるのだ』
ぜ、全然違いが分からない……。
「みんなにはどういう風に見えてたのかな?」
メグ姉が答えてくれるようだ。
「大丈夫よエディ。『ワンッ』とか『ワフッ』とか言う子狼と会話しているエディは尊いわ」
「全然大丈夫じゃないよ! じゃあ僕は今までみんなの目には、会話できるはずのない子狼と会話している痛い子だったってこと?」
「現在進行形でそう映っているけど違うの?」
「ヴァイスの言葉は出会った時から聞こえてたから、全然気がつかなかった……」
僕はがっくりとうなだれたのでした。




