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第70話 再会

 バーランスの町に数日間滞在し、7年間の隙間を埋めるため、一緒に過ごした。僕がいなくなった心労でつい最近まで寝たきりだったせいか、かなり痩せ細っていたので、体力の回復しそうな料理を作ると、涙を流しながら食べていたのが印象的だ。

 

 父が戦争に赴いているため、バーランスの町に長く留まるのは不味いらしく、ローダウェイクへ向かうことになった。


「エドワード、行きますよ。馬車に乗りなさい」

「はい。母様」


 馬車に乗り込む。侍女のコレットさんから、『お母さん』ではなく『母様』と呼ぶように指摘されたため呼び方を変えたのだが、まだ慣れていない。


 母様は気にしないらしいのだが、それで父様や母様が侮られるとなると変えないわけには行かなかったので、その辺りの言葉遣いは今後練習していくこととなった。


 馬車が動き出し、それに合わせて護衛の兵士も動き出す。護衛の隊長をしているアーダムさんはとても強く、手合わせをしてみたが全く歯が立たなかった。もちろん糸の能力は使ってないのだが、今後は剣術の方も練習していった方が良いらしいので、そちらも頑張らないといけない。


 今後の僕の扱いについてだが、公的には生まれてからずっと病気で寝込んでいることになっているらしいので、病気が治った発表をすることになると思うが、細かいことは父様が帰ってきてからになるそうだ。


 馬車がイーリス街道に入り走っていくが、しばらくすると停まってしまった。兵士が慌ただしく動き、アーダム隊長がやってくる。


「奥様、申し訳ございません。怪我をした一般市民がこちらを警戒して武器を取っているため手出しできないため、しばらくお待ちください」


「分かりました。一般市民ですか、怪我の状態はどうですか?」


「盗賊にでも襲われたのか、かなりの切り傷です」


「私が行きましょう」


「それが怪我をしているのがドワーフなんですが、もう一人珍妙な生き物もいるので奥様にお見せして良いものか判断しかねているのです」


「ドワーフですか⁉」


 ドワーフという単語に反応して思わず身を乗り出してしまう。


「エドワード様はドワーフに興味が?」


「いえ、コラビの町でドワーフのレギンさんと言う人に良くしてもらったので……」


「なるほど……いや、確か珍妙な生き物がドワーフのことを『レギン』と呼んでいたような」


「本当ですか⁉」


 返事も聞かずに馬車を降り、兵士の先頭まで行き、見知った顔を確認すると思わず走って行く。


「レギンさん! それにマーウォさんまで!」


「小僧!」


「エディちゃん!」


「どうしたんですか!? こんなに怪我をして。大丈夫なんですか!?」


「小僧、今は儂らより……」


 レギンさんが何かを言いかけた時、馬車の中から人が出てくる。


「エディ君!」


「カトリーヌさん! どうしてここに!?」


 思わずカトリーヌさんに抱きついてしまう。


「エディ君! 大変なことに! メグを助けて!」

 

 一瞬、頭が真っ白になる。そうだ、このメンバーにメグ姉がいないなんておかしいのだ。僕が固まっていると母が声をかけてくる。


「エドワード。まず話を聞きましょう。その前に2人を治療します」


 そう言うと母様はレギンさんとマーウォさんの怪我を魔術で癒していく。


「すまない、恩に着る。なるほど小僧とそっくりじゃの」


「エディちゃんお母様と出会えたのね!」


「それで3人に何があったのか聞いても?」


「そうだわ! 帝国兵が街道に出たのよ!」


 カトリーヌさんの一言で周囲の空気が一変する。


「どういうことかしら?」


「私たちはローダウェイクに向かっている最中、ローダウェイクの手前で盗賊に襲われまして、それに応戦したジョセフィーナとメグが手こずるような相手だったのです。ジョセフィーナが言うには盗賊ではなく帝国兵だったと。ジョセフィーナが切られ状況的に不利と判断したメグが私たち3人を逃がしてくれたんです! どうかメグとジョセフィーナを助けてください!」


「ジョセフィーナも一緒だったんですね? アーダム隊長、先行部隊を至急出しなさい! エドワード、私たちも向かいますよ。そうね、カトリーヌさん? は私たちと一緒の馬車に乗りなさい。中で詳しく話を聞くわ。レギンさんとマーウォさんは後ろの馬車に乗ってちょうだい。怪我は治したけど血はすぐには戻らないから馬車の中で休んでなさい」


 アーダム隊長が先行部隊を出発させて、僕たちも慌ただしく出発する。


「カトリーヌさん、早速話を聞きますが、ジョセフィーナとはどこで?」


「コラビの町です。私とメグがエディ君を追いかける準備をしていた所にレギンさんとマーウォの後をつけてきたみたいで」


「ちょっと待って! メグ姉が出たってことは新しい神父様が来たってこと?」


「そうよ、エディ君が旅立ってしばらくしてからよ。でもね、人族主義の神父様だったらしくて追い出されたそうよ」


「そんな酷い!」


「まあ、メグは早くエディ君の所に向かえるって喜んでたけどね。それで私を含めた5人で馬車に乗ってイーリス街道を全速力で来たのよ」


「そこで帝国軍と遭遇したと?」


「ええ、トゥールスへ向かう分岐の所で最初別の馬車を襲っていたの。それを見たジョセフィーナが飛び出しちゃって、メグも加勢するために降りて戦っていたのだけど、どんどん敵が増えてきちゃってジョセフィーナが帝国軍だって言い出したのです」


「ジョセフィーナが言うのなら間違いなさそうね」


「でもどうして帝国軍が領内に?」


「それは分からないわね。ハリーが負けるとは思えないし」


「それが、帝国軍は最初一般人を攫おうとしてたのよ」


「人質にするためってことかしら?」


「ええ、おそらくは」



 あれっ、人質? 盗賊? どこかで……。


「そうだ! 母様。実はヴァルハーレン領に入る直前の森で盗賊の砦を潰したのですが、盗賊の砦にこんなものが」


 そう言ってブラウ伯爵の指示書を渡す。


「盗賊のボスが命乞いをしてきた時に、ブラウ伯爵がバックについているって言うから証拠はあるのか? って聞いたらその書状の在りかを吐きました」


「ブラウ伯爵ですって⁉」

 

 カトリーヌさんがビックリする。


「カトリーヌさん、ごめんなさい。実はセリーヌさんにあって、ブラウ伯爵のこと聞いてしまったんです」


「いいのよ、姉さんが話したのならしょうがないわ」

 

 カトリーヌさんが僕を抱きしめる。


「なるほど、今回の件もブラウ伯爵が怪しいってことね。ブラウ伯爵が帝国軍を手引きしたのかしら?」


「王都でもブラウ伯爵のせいで治安が悪化しているって聞きました」


「そうなのね、エドワード、この書状は私が預かってもいいかしら?」


「はい。僕が持っていても使いどころが分からないのでお任せします」


 そして馬車が停まり、アーダム隊長がやってくる。


「奥様、現場に到着しました」


 僕たちが降りると兵士たちは殺された人たちを調べていました。


「やはり切り殺された盗賊は帝国兵で間違いなさそうです。それと、襲われたと思える一般人の死体も多数みつかりました」


「多分最初に襲われてた人たちよ。 あっ!」


 カトリーヌさんが走って剣を見つける。


「メグの剣よ……」

「メグ姉……」


「奥様それと、トゥールスに向かう道沿いの森に切り開かれた跡と、たくさんの足跡も見つかりました」


「なるほど、その道を使って追いましょう。きっとそこにいるはずよ」


 母様がそう言った所で、僕に報せが来る。


「精霊だ……どうしたの?」


『ふむ、エディが渡した指輪に宿っていた精霊だと言っておるぞ』


「えっ、そうなの?」


『頑張ったけど守り切れなくてすまなかったと謝っているが……不味いぞ! そのメグとやらに危険が迫っとるらしいぞ!』


「メグ姉が!」


『案内するからついてこいと言っておるぞ』


「すぐ行きます! 案内してください!」


 僕がメグ姉の所に行こうとすると。


「エドワード! どこに行くのです!?」


「メグ姉が……メグ姉が危ないって! 母様ごめんなさい先に行きます!」


「エドワード!」


 僕は糸を使い、精霊の後を追って森の中に入ったのでした。


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