第65話 盗賊※
フォルターグリズリーとの戦闘現場を後にし、糸を使ってさらに先に進む。
休憩のため木に登ったまま、以前作った魚の干物を火で炙ってから食べる。
『これは美味い! 味が凝縮してるではないか!』
「声が大きいよ。魔物に見つかっちゃう」
『近くの気配はしっかり把握しているから安心するのだ』
「そうなの? なら大丈夫なのかな。それにしても予想以上に美味しいね」
『獲りたても美味かったが、これはまた違う美味しさだな』
「休憩のついでにちょっと糸の練習してみるね」
『我は食べているから安心しろ』
何を安心するんだか。まずはいちいち回収しなくてもいいように、普通の鉄の糸で練習しよう。
直径1センチ、長さ1センチの鉄を1000メートル毎秒で発射してみる。ライフルが750から1800メートル毎秒ぐらいなのでライフルぐらいの速さだろう。
さすがに粉々とはいかないが木を破壊する。ちょっとした敵ならこれでも十分そうだな。
直径1センチ、長さ1センチの鉄の重量はおよそ6グラム、それを1000メートル毎秒で発射するのだからエネルギー量は3000ジュール。デザートイーグルが2000ジュールぐらいと考えるとそれよりも強いことになる。
しかしこれではフォルターグリズリーを1撃で倒すには少し物足りない。ゾウやサイを1撃で倒すライフル弾は1万ジュールを超えるという。対戦車ライフルで強いものは2万ジュールもあるとか、強いに越したことはないが素材をダメにしてはもったいないのが難しいところだな。
攻撃力を上げるには発射する糸を重くするのが手っ取り早い。速さについてはイメージはしているものの確認の方法が分からないからね。試しに重い金属の代表格タングステンで試してみる。直径1センチ、長さ10センチのタングステンの重量は151グラムになる。それを初速1000メートル毎秒で発射した時のエネルギー量は7万5000ジュールを超える。
うーん、ちょっと強すぎるような気もするが、取りあえず試してみよう。
発射したタングステンは空気を切り裂き、森に向かって飛ぶ。大木に着弾し貫通するが、タングステンの威力に耐えられず弾け飛んだ!
貫通したタングステンは、その後も次々と木をなぎ倒し続け、轟音が辺りに鳴り響いた。
『何をしたのだ!? ビックリするではないか!』
「……」
『エディ! まずいぞ、たくさんの魔物が音に反応したのか近づいてくるぞ!』
練習は中止となり、その場から逃げ出したのであった。
『エディのせいで干物が1匹落ちてしまったではないか!』
「ごめんね」
『まぁ、強い攻撃手段が手に入ったじゃないか』
「あれじゃ魔物を粉砕しちゃうよ」
『それは大問題だ、肉がダメになる!』
「そうなんだよね、もう少し威力を落とさないとダメだけど、いざという時の武器にはなりそうだよね」
『あとは美味しくない魔物で試すがよかろう』
「そうだね」
◆
そこから練習も挟みつつ、移動すること数日。
『エディよ、この先の森の奥に複数の人間がいるようだぞ』
「えっ、そうなの⁉ また冒険者かな?」
『ちょっと森の深いところになるが、そこそこの人数が集まっているな』
「こんな森の深い所に大人数が? 軍隊ってわけでも無さそうだし、もしかしたら盗賊かもしれないね」
『盗賊か、食べられないし無視するか?』
「何かトラブルで困っている人たちの可能性もあるから、取りあえず見に行ってみようか」
そう言って森の奥に向かうと。そこには3階建ての石造りの砦があった。周囲には犠牲になった人らしき死体も見つける。
「やっぱり盗賊の拠点だったというか結構立派な砦だね」
『確かに盗賊の砦にしては立派すぎるな』
「そういえばエンシェントウルフが、僕を見つけたのは盗賊の砦って言ってたけど、こんな感じの砦だったのかな?」
『かもしれんな、ここは魔の森ではないから、縄張りにしている者がいないのであろう』
「盗賊なんていても迷惑なだけだから、倒せるか試してみようか?」
『分かった、危なくなったらすぐに逃げるのだぞ』
頷くと、早速始める。まずはキラータイパンの毒を付与した蔓を地中に潜らせ、見張りの盗賊の足元から刺して3人を倒す。
「よしこれで見張りがいなくなったぞ。盗賊に捕まった人が中にいたらまずいから、砦ごと攻撃できないのが面倒だな」
次に扉を少し開けて、ジャイアントスパイダーの糸で作った罠を通路に張り巡らす。そして糸を使い2階に上がり窓からも中を見て、同じように罠を設置していく。
しばらくすると誰かが罠に引っかかったらしく、中が騒がしくなってきたので、今度は3階に登る。窓から中を確認すると誰もいなかったので中に入った。
3階はこの1部屋しかないみたいだ。おそらく盗賊のボスの部屋なのか、かなり豪華な内装になっている。ボスも騒ぎで下の階へ下りたのかもしれないな。
螺旋階段を上ってこれないようにまた蜘蛛の巣の罠を設置し、壁を破壊して大きな音を出す。
「上からだ!」
音に気づいた盗賊が上がってくるが、サンダースライムの糸で片っ端から倒していく。しばらくすると誰も上がってこなくなったので、前に進もうとすると。
「死ねっ、クソガキが!」
後ろから盗賊が切り付けてきた。どうやら外から3階に上がって、僕の後ろから攻撃したようだ。
しかし、後ろにも蜘蛛の巣を張っておいたので絡まって動けなくなる。
「クソッ! このガキこれを外せ!」
ちょっとだけコイツは強そうな雰囲気があるな。もしかしたらボスなのかも。取りあえず殺さずに体中をジャイアントスパイダーの糸でぐるぐる巻きにした。
さらに逃げないように。サンダースライムの糸で気絶させる。大体こういうのって物語とかで放置しておくと何故か逃げちゃうんだよね。
ということで逃げ出さないように、蔓で引きずりながら先に進む。通路に設置した蜘蛛の糸に絡まって動けない盗賊を倒しながら先へ進む。
「これでこの引きずっている盗賊以外はいなくなったかな?」
『いや、まだその奥の部屋から、臭いと殺気を感じるぞ』
扉の下の隙間からサンダースライムの糸を潜り込ませ、気絶するぐらいの雷で部屋の中をブンブンと振り回す。
あっ⁉ 当たった感触が分かる。なるほど糸によっては、感触が分かる糸もあるってことか。
『殺気がなくなったから殲滅したのだろう』
ヴァイスのお墨付きをもらったので中に入ると盗賊が3人転がっていた。捕まった人ではなかったので3人とも倒しておく。
「これでどうかな?」
『うむ、引きずっているやつ以外はいなくなったぞ』
「捕まった人はいなかったみたいね」
盗賊のボス(仮)に水をかけて起こす。
「ゴホッゴホッ! 何しやがる⁉」
「子分は皆やっつけたよ」
「何をバカな……」
蔓をつかって盗賊の死体をひとつの部屋に集めると、ボス(仮)の顔が青ざめていく。
「何のためにこんなこと、俺たちにこんなことしてただで済むと思うな! 俺のバックにはブラウ伯爵様がついてるんだからな! 酷い目に遭いたくなかったら、今すぐこれを解け!」
「『……、コイツバカだな!』」
「何を!」
「うーん、ブラウ伯爵? がバックについてるって言っても、証拠もないんじゃ信じられないよね?」
「バカはお前だ! 俺様の部屋の引き出しには、ブラウ伯爵様から直々に頂いた指示書が入っているんだからな!」
「えっと、確認してもいいかな?」
「わっはっはっは! 確認したら、すぐに解け!」
「ちょっとヴァイスこいつを見張っていてもらえるかな?」
『よいぞ』
3階のボス部屋に向かい、引き出しを調べるとブラウ伯爵の書状らしきものを見つけたので、中身を確認する。
「……」
ボスの所まで下りていくと、サンダースライムの糸ですぐにボスを殺してしまう。
『エディよ、どうしたのだ?』
「どうもブラウ伯爵は、ヴァルハーレン領の人を攫う計画をしてたみたいだね」
『何のためにだ?』
「そこまでは書いてないから分からないけど。僕を攫おうとしたのもブラウ伯爵なのかもね」
『そのブラウ伯爵は何かと因縁がありそうだな』
「そうだね。カトリーヌさんやアキラさんの件もあるし、この手紙は何かに使えるかもしれないから持っておこう」
その後、盗賊の死体を地中に埋めて分からないようにして、砦の中を隅々まで調べてから砦を破壊して後にしたのだった。
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エディとヴァイスが星空を眺めているイメージ画像です。




