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第63話 Side ハリー・ヴァルハーレン

 時はエディが王都に到着したころ。

 ――――――――――――――――


 王都からの緊急召喚による会議から、ローダウェイクの城に戻った私は妻のフィアの所まで行く。


「フィア? 今、戻ったよ」

「ハリー、お帰りなさい。王都の会議はどうでした?」


 王都ではイグルス帝国に戦争の動きがあるという事で、王と四公(大公と三公爵)による緊急会議が行われていたのだ。


「やはり戦争で間違いなさそうだね」

「7年ぶりかしらね……」


 フィアはエドワードを失った日の事を思い出したようだ。フィアはあれからエドワードを探すためにしっかりと食事を取るようにして、今では日常生活を送れるぐらいには回復している。

 

「父さんの言う通り敵はシュトライト城に集まって来ているみたいで、集まり次第進軍してくるだろう」


「やっぱりハリーが行くしかないのね……」


「そうだね、数が集まると父さんだけではキツイからね。エドワードを探し……」


「言わなくても大丈夫よ。エドワードのことは私に任せておいて、ハリーはイグルス帝国を蹴散らしてきて」


「その言葉聞けて安心したよ。それにしても今日はいつもより体調が良さそうだね?」


「やっぱり判っちゃう? ハリーが帰ってくる1日前ぐらいかしら、南方からエドワードの気配を感じたのよ!」


「それは本当かい!?」


 フィアには不思議な力があり、7年間エドワードが生きていると言い続けていたので、諦めることなく探し続けていたのだ。


「ええ、まだ遠いのか薄っすらとだけど、もしかしたらフィーナが見つけて、こっちに向かっているのかもしれないわ!」


「それは朗報だね! 僕もイグルス帝国と戦っている場合じゃないな。これはさっさと片付けて戻ってこないとダメだね」


「それでね、ハリーにお願いがあるの」


「出来るだけエドワードの近くに行ってみたいんだね? バーランスの町に向かえるように手配しておくよ」


「ありがとう。ハリーがトゥールスに向かわなきゃいけないのにごめんなさい」


「僕の事なら心配ないからエドワードを見つけて来るんだよ。だけど体調管理は十分に気を付けるんだからね?」


「もちろん分かっているわ」


「でも今回は領内といえども、護衛の体制だけはしっかり整えるからね?」


「もちろんよ」


「それじゃあ、僕は出発の準備があるから、後のことはルーカスの指示に従うんだよ?」


「ええ、ハリーも気をつけてね」


 フィアと別れて出発の準備を始める。


「ルーカス、フィアのことは頼んだよ」


「畏まりました。護衛についてはお任せください。先行部隊も派遣して賊一匹近づけさせませんので」


「後はイグルス帝国だけだね」


「今回は他の公爵家は動かれるのでしょうか?」


「動かないよ。というより動かないように釘を刺しておいた。前回のようにもし領内に軍が入ってくるようなら、敵と見なすって言っておいたからルーカスもそのつもりで動いてくれ」


「畏まりました」


「それと、ベルティーユ侯爵とブラウ伯爵の動向にも注意しておいて」


「すでに間者を放っておきましたので、定期的に報告を入れさせます」


「ありがとう、今回はルーカスが目を光らせておいてくれるだけで、私も安心できるよ」


 ルーカスにしては珍しく躊躇いがちに聞いてくる。


「エドワード様は見つかるのでしょうか?」


「フィアがあれほど積極的に動いてるのなら、近づいてるのは間違いないんじゃないかな」


「ならば戻られた時の準備も急がねばなりませんな」


「私の子だから剣に興味があると嬉しいんだけどね」


「エドワード様は奥方様似ですから、分かりかねますな」


「だよね。そういえば王がモルガンを動かしてるみたいだから、そっちとは仲良くしてね」


「テネーブル伯爵をですか?」


「ああ、さすがに王族の人間を攫おうと計画していたなんてやりすぎたからね。7年前の償いはそろそろ受けてもらわないと」


「確かに大公家が舐められっぱなしと言うのは、よくありませんな」


「それじゃあ準備が出来次第、私も出発するので後のことは頼んだよ」


「ご武運を」


 こうして私はイグルス帝国との戦争に向けて、国境の町トゥールスに向かったのだった。


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