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第60話 新たな攻撃手段

 虹彩館に帰り、部屋で食事を食べた後、ミラブールを使いさっぱりしたところで合成を行う。


 今日はミラブールを多用したため、1回しか合成できない。糸のレベルを上げるため、とにかく数を増やしてみようという事で、確実に増やせる単元素で作成することにした。

 

【能力】糸(Lv4)

【登録】麻、綿、毛、絹

【金属】鉄、アルミ、鋼、ステンレス、ピアノ線、(New)タン、タングステン、炭化タングステン、銅、銀、金、白金、ミスリル

【特殊】元素、スライム、ジャイアントスパイダー▼、蔓、グラウプニル(使用不可)

【媒染剤】鉄、銅、アルミ、ミョウバン

【魔物素材】ホーンラビットの角(18)、ダウン(3)

【形状】糸、縄、ロープ、網、布▼

【作成可能色】24色▼

【解析中】無


 無事『チタン』が追加されたのを確認すると、明日に備えて寝ることにした。



 今日は朝から忙しい。アキラさんに必要なリストをもらって、買い出しに来ている。


 買い物をするから、青の商人スタイルだが、セリーヌさんからウェチゴーヤ商会系列の店を教えてもらってあるので、昨日のようなミスはしない。


 味噌や醤油に共通する材料、大豆は買い占める勢いで買った。もちろん塩も欠かせないものなので買っておくが、物価が上がっているので全体的にどれも高い。


 他にも樽やコウサキ親子が料理するための道具や食器類なども次々と買っていく。


 晩御飯は僕が作ることになっているから、食材なども買いながら掘り出し物がないかもチェックしていると。


『エディ、昨日の奴らがつけてきてるぞ』


「えっ、本当に?」


 物を探す振りをしながら確認してみると、確かに昨日の3人がこちらを窺っているのが見える。


 こいつらをおびき寄せるために、青の商人スタイルで爆買いしていたのだが見事に食いついてきたな。


 コウサキ親子だけじゃなく、カトリーヌさんの敵ってだけで絶対に許さない。王都に来た人をカモにしてるのもアウトだ。


 昨日行った下級商店街に向かい、商品を見ている振りをしながら、人気のない下級住宅街に向かうと3人もついて来た。人が全くいなくなったところで、3人が声をかけてくる。


「おいそこのガキ! ちょっと止まれや!」


 無視して歩くと、キレて僕の肩を掴んでくる。


「待てって言ってるだろ!」


「何の用ですか? 僕は帰るところなので邪魔なんですけど」


「生意気なガキだな。羽振りがいいくせに、こんな所に隠れてやがったとは、道理で見つからないはずだ!」


「何の話か知りませんが、臭いので近寄らないでもらえます?」


 とにかく煽ってみる。


「何を! このクソガキが、身ぐるみ剥いで逃がしてやろうと思ったのに、どうやら死にたいようだな!」


「ちょっと何言ってるのか分からないんですけど」


 僕が小バカにしたように言うと。


「クソガキが! お前らかかれ!」


 3人のなかのリーダーっぽいヤツが合図するも、すでに奴らの足元に蔓を準備していたので一歩も動けない。騒がれると面倒なので口も塞いで大声を出せないようにする。


「モゴモゴゴゴ、モゴゴ」


 もごもご言っているが、何を言っているか分からない。


「さて、お前たちのようなヤツは無視しておけばいいと思っていたけど、ちょっと事情が変わってきたので、今後のためにちょっと実験させてもらうね」


 路地では誰か来る可能性もあるので近くの廃墟同然の空き家に移動する。蔓だと地面から生やしたまま移動できるので便利だ。


 空き家の中に入ると、ヴァイスが聞いてくる。


『エディよ、何をするつもりなのだ』


「ただ買い物してるだけで狙われて、いちいち逃げたりするの面倒だし、これからウェチゴーヤ商会を相手にする上で新たな攻撃手段が欲しいと思ってさ」


 僕がウェチゴーヤ商会の名前を出すと3人が目を見開く。


『ほう、それは興味深いな。どんな攻撃にするのだ?』


「1つは死因が分からない攻撃。もう1つは時間差で相手を倒せる方法かな」


『時間差とはどういうことだ?』


「相手が気がつかないうちに攻撃できて時間が経過すると倒せる感じかな」


『どのようにするのだ?』


「どちらも死因が分からないっていう点では共通するんだけど、極細の鋼糸を使って体の内側から攻撃する感じかな。地球では治療や美容に針を使ったりするんだけど、その針の細さが0.1ミリから0.2ミリぐらいなんだけど、そのくらい細いと痛みもほぼないらしいよ。能力でさらに細い0.01ミリの炭化タングステンワイヤーで突き刺して心臓などを攻撃すれば、死体を解剖して死因を突き止めない限り絶対に分からないと思うんだ」


『なるほどな、早速試してみるのだ』


 3人は僕の言葉を聞いてガタガタ震え始めたがもう遅い。



 検証の結果、新しい攻撃方法は成功した。


 チンピラの3人は蔓で掘った穴に入れて埋めてしまったのでバレることはないだろう。もちろん見つかっても死因は分からないだろうけど。


 念のため青の商人スタイルから黒い目立たない服に着替え、近くに誰もいないことをヴァイスに確認してもらって下級住宅街を後にした。


 ◆

 

 商人ギルドに寄って金貨を両替して、セリーヌさんから借りている家に行く。


「アキラさん、買い物に行って来ましたよ」


「かたじけないでござる」


「一晩休んだだけでも、かなり顔色が良くなりましたね」


「このような穏やかな一日を過ごせたのは久方ぶりで、これもエディ殿のおかげです」


「それは良かったです。まずは味噌や醤油の道具と材料。頼まれてた物を出しますけど、どこに出しますか?」


「こちらの部屋でお願いいたします」


「では置きますね」


 荷物を置いていると、ツムギちゃんがやって来る。


「お父様! エディ様が来ているのなら教えてください!」


「ツムギちゃんも昨日よりは調子良さそうだね」


「エディ様のおかげです」


「それじゃあ夕食の準備をするから、キッチンを借りるね」


「何かお手伝いできることはありませんか?」


「まだ、体力が戻り始めたばかりだから、無理しちゃだめだよ」


「分かりました」


 残念そうに言うが、こればかりはしょうがない。


 せっかく味噌と醤油が手に入ったので、それを使った料理が食べたいな。


 足りない材料もあるが、取りあえず作ってみることにした。


 乾燥した昆布みたいな保存食があったので試しに出汁を取りながら、買ってきたオーク肉やジャガイモ、ニンジン、玉ねぎのようなものを切っていく。


 肉じゃがを作ろうと思うのだが、同時に味噌を使った鍋も作ろうと思うので鍋の具材も切っていく。


 水につけておいた昆布のような海藻を、沸騰直前まで火にかけて取り出す。


 出汁を肉じゃが用と鍋用に分け、肉じゃが用の鉄鍋で肉を炒めて野菜を炒める。


 砂糖と水を入れて煮込みながら、醤油とみりんや日本酒を入れるのだが、残念ながらみりんや日本酒はない。


 みりんの代用品として清酒とハチミツを使うと聞いたことがあるので、蜂蜜酒(ミード)を使ってみることにする。


 最後に落し蓋をして、20分から30分、弱火で煮込めば完成だ。


 少しだけ汁を飲んでみると、割といい感じに仕上がった。


 鍋の方は、オーク肉の他に鶏肉みたいな肉や、よくわからないけど勘で鍋に合いそうな野菜も買ってきたので一緒に入れ、最後に味噌を加えて完成とする。


 残念ながら米は見つけられなかったので、代わりに麦を炊き、鶏肉の残りを油で揚げて唐揚げを作れば、今日の料理が出来上がった。


 完成したタイミングでセリーヌさんが現れたのだが、匂いに釣られたのだろうか?

 

「なんだかいい匂いがするわ」


「セリーヌさん、ちょうどいいタイミングで来ましたね、今、完成したところなので一緒に食べましょう」


 アキラさんやツムギちゃんも呼んで夕食にする。


 1つの鍋を皆でつつく文化はないので、取り分けてあげた。

 

「なんだかいい匂いで美味しそうね」


「アキラさんから買った調味料を使って作った料理です。濃い目の味付けなので、炊いた麦に乗せて一緒に食べてください」


 食べ始めたのはいいが、アキラさんとツムギちゃんが泣いている……。


「割と美味しくできたと思うのですが、口に合わなかったですか?」


「違うのでござる。まさか故郷の調味料を使って、ここまで美味しいものができると思っていなかったので、感動しているのでござる」


「美味しかったのなら良かったのです」


「ちょっとエディ君どういうこと? 凄く美味しいじゃない! そこら辺のお店よりも美味しいわよ!」


『うむ、おかわりだ!』

「早っ!」


 ヴァイスの器におかわりを入れると、僕も食べ始める。


 肉じゃがのジャガイモに味がしみて、凄く美味しい。米じゃないのが残念だが、麦は麦でプチプチした食感が癖になる。


 味噌味の鍋も美味い。やはり味噌と醤油は今後のことを考えると欠かせない調味料だな。


 それにしても、ヴァイスの唐揚げを食べる速度が半端ないな。後で追加で揚げないと足りないかもしれない。


 みんな、余程美味しかったのか動けなくなるまで食べてくれたので満足だった。


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― 新着の感想 ―
[一言] 『なるほどな、早速試してみるのだ』 3人は僕の言葉を聞いてガタガタ震え始めたがもう遅い。 敵を、あっさりと処分するところ良いね。
[気になる点] なかなかあっさり人を殺しますね〜 必然的な描写を見逃したかな [一言] 引き続き読ませて頂きます!
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