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第6話 目覚め

 朝日を感じて目を覚ました。起き上がると、そこは知らないところだった。


「ここはどこだ……」


 辺りを見回してみるとベッドが複数並んでいる。どうやら医務室のようなところに寝かされているようだ。


「なんでこんな所で寝ていたんだ……」

 

 なぜ医務室で寝かされていたのか思い出せない。怪我でもしたのかと体を見てみる、怪我もなければ痛みもないが体が縮んだ!? まるで子供の手脚だ。そもそも()って何歳だっけ?


 何があったのかを思い出そうと考え込んでいると、部屋の外から話し声が聞こえてくる。その話し声はだんだん近づいてきて、3人の少年と1人の少女が入ってきた。その中の青髪の少女が話しかけてきた。


「エディ! 気が付いたのね心配したのよ、どこか痛むところはない?」


 この部屋には()しかいない。つまり()に話しかけているようなので取りあえず返事を返す。


「大丈夫みたい……」


「よかった! 祝福の儀で突然頭を押さえて倒れるから、みんなびっくりしたんだよ」


 ()の名前ってエディだっけ? それにこの少女は誰だ、全然名前を思い出せない。それに凄い青色の髪だけど、なんかのコスプレか?


 今度は茶髪の目つきの悪い少年が話しかけてくる。


「気が付いたならよかった。エディ、お前が倒れている間に勝手に決めてしまって悪いんだが、結論から言うとお前とはパーティーを組めなくなった。お前の代わりに町長のところのユルゲンとパーティーを組むことにしたんだ。ユルゲンは、祝福の儀で火の魔術の才能を授かったんだぜ凄いだろ。彼と組めばパーティーとしてのバランスがお前よりいいからな」

 

 茶髪の少年は()にそう告げる。


 パーティーって何のパーティーだ? それに今、魔術って言ったか? そういえばさっき祝福の儀とかも言っていたな……。


 情報を整理していると、今度は大きな盾を持った茶髪の少年が話し出す。


「この盾、かっこいいでしょ! パーティー結成のお祝いに、ユルゲンのお父さんが僕の盾術の能力にあった装備をプレゼントしてくれたんだ。剣術を授かったアレンには剣を、水の魔術を授かったメアリーには、なんとヒールの魔術書まで買ってもらったんだぜ!」


「この剣もなかなかだろ。他の孤児院組では絶対に揃えられない装備だ。これもユルゲンのおかげだな」


「そうよね、水の魔術の能力を授かっても魔術書がないと魔術が使えないから、最初から魔術を覚えられるのは助かるわ」


 なんだ、この興奮したやつら? よく見れば全員、日本人じゃないな。まだ喋らずに後ろでニヤニヤした赤みがかった茶色頭の少年がユルゲン、剣の少年がアレン、青髪の少女がメアリーということが分かったけど。盾の少年だけ、名前が出てこないので分からないし、思い出せない。


 盾の少年について考えていると、メアリーが話しかけてきた。


「エディは生産職だから、冒険者は危険だし絶対無理だってアレンやユルゲンが言うのよ。だからエディは、危険なことはしないで能力の()()()を頑張ってね!」


 今なんて言った? 俺の授かった能力って()()()なのか⁉


 後ろでニヤニヤしていたユルゲンが口を開く。


「結果お前を追い出す形になってしまって申し訳ないが、生産職が冒険者になったところで足を引っ張ったり死ぬのが落ちだから、お互いの為にもなるだろう?」


 4人は交代で言いたいことを言うと去って行ったが、()は自分の能力が()()()ということにショックを受けて、途中から彼らとの会話は一切頭に入ってこなかった。


 1つだけハッキリしたことは、どうやら()はパーティーを組む前に追放されたらしいということ。


「まるでラノベの追放ものだな……」


 呟くと違和感に気が付く。


 ラノベって何のことだ?


 考えると明らかに自分のものではない、不思議な記憶があることに気がつく。その瞬間に自分の記憶とその記憶が混ざり合った。


 そうだ! 祝福の儀で能力を授かった後、激痛に襲われたところまでは覚えている……そのあと倒れたのか?


「……()って転生者だったのか――!」



 朧気だった意識が覚醒していく。


「そうか、アレンのやつ、僕をパーティーへ入れない代わりにユルゲンを入れたのか」


 僕は4人でパーティーを組むのを楽しみにしていたはずなのに、今はなぜだか他人事のように感じた。


「そう言えば、糸の能力って生産職で決定なのか?」


 僕の授かった能力は裁縫じゃなくて糸だ。転生系では糸のスキルは、首を切ったり、魔物を操ったりと割と当たりのはずなんだが……。

 

 気になったので早速試してみることにする。

 

「糸よ出ろ!」


 某アメコミの蜘蛛の能力を持ったヒーローのように、ジャンプして手首を突き出してみるが何も出ない。

 

「ガタンッ」


 物音がしたほうを見るとメグ姉が目を点にして僕を見ていた……。

 凄く恥ずかしい……穴があったら飛び込みたい。


「げ、元気になったみたいね……何で(ボソッ)すかこの可愛い生き物は! よくわかりませんがナイスポーズです!」


 メグ姉が話しかけてくるが、最後の方は小声で聞こえないな。


「ありがとう。心配かけたね」


「体に異常はないの?」


「異常? 特に問題ないみたい」


 よほど心配したのか、メグ姉は僕の身体のあちこちを触って確認するのだが、途中で抱きしめたりするのは必要なのだろうか……。


「本当に心配したわよ。5日間も目を覚さなかったんだから」


「えっ僕、5日間も寝てたの!?」


 てっきり1日か、2日ぐらいだと思っていた!


「そうよ、メアリーが目を覚ましたって教えてくれて飛んで来たんだから。ずっと寝ていたけど、喉が渇いたりお腹は空いてないの?」


「全然大丈夫みたい」


「それなら安心したわ、孤児院のみんなも心配していたから明日、元気な顔を見せてあげなさい」


「分かったよ。っていうか明日でいいの?」


「そうね、お姉ちゃんに心配かけた罰、じゃなくって。エディのステータスの事で色々と話さなくちゃならないから。今日は今からお姉ちゃんの部屋に来なさい。お腹が空いてないとはいえ、ずっと寝ていて食べてないのは良くないわ、今日は私が作るから夕食も久しぶりに二人で食べましょう」


「ステータス? 糸の能力の他にも何かあるんだね」

「そうよ。長くなりそうだから行きましょう」

 

 二人でメグ姉の部屋に向かうのだった。

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