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第56話 カトリーヌ?

 昨日は旅の疲れが出たのか、ぐっすり眠ることができたようだ。水球を出して顔を洗う。魔法にもかなり慣れてきたが、戦闘ではまだ使っていないので、練習しないとなと考えていると。


 コンコン。扉をノックする音が聞こえる。


「はい」


「おはようございます。朝食をお持ちしてもよろしいでしょうか?」


「お願いします」


 運ばれた朝食は白パンにシチューだった。想像していた味とは違ったが、それなりに美味しかった。


 朝食を食べ終えて出かける準備もできたので、早速出かけることにする。


 カトリーヌさんの話によれば、上級商店街は貴族や富裕層向けのぼったくり店ばかりで、中級商店街を探すのがいいと言われていたため、中級商店街へ向かう。


 商人ギルドや冒険者ギルドは中級商店街に本部があり、上級商店街には貴族向けの出張所もあるとのことだ。


 各商店街売る品物によって大まかにエリア分けされているようなので、食品エリアに向かう。

 

 王都だけあって野菜や肉など様々なものが売られていて、調味料や香辛料を扱う店を見つけ中に入る。


 念願の蜂蜜や砂糖の甘いものに加え魚醤、ショウガ。黒コショウと塩も追加で買っておく。


 次に食材を探す。小麦粉、ニンニク、玉ねぎなどを買っていく。普通子供が大量に買い物をしてたら怪しまれるところだが、ギルドカードをあらかじめ見せているのですんなり買うことができた。


 その後、商店街で色々買いながら歩いていると。


「ちょっと君! こっちに来なさい!」


 突然女の人に腕を掴まれて、店の中に引っ張られる。


「いきなり何するんですか!?」


 引っ張った女性の顔を見て驚いた。


「カトリーヌさん! なんでこんな所にいるんですか? っていやよく見るとちょっと違う……全然違った!」


 そう、カトリーヌさんに似ている女性には、決定的に足りなかったのだ!……お胸様が。


「ちょっと君! どこ見てカティと区別してるのよ! もっと他にあるでしょ!」


「えっ! よく見ると確かにカトリーヌさんより年上っぽいような……」


 そこまで言った瞬間失言したことを悟る。彼女はがっくりうなだれて、いじけてしまう。

 

「どうせ私はカティと違って、絶壁年増女ですよ……」


 連れ込まれた周りを見回してみると衣類を売っているお店だった。


「ここってもしかしてローパス衣料品店?」

「そうよ。知ってるの? 初めてよね」


 いつの間にか回復したようだ。


「カトリーヌさんに王都で生地を売るなら、ローパス衣料品店にしなさいって言われていたので」


「生地を売るってどういうこと!? その前にカティの知り合いなの?」


「そうですよ。僕の着ている服もカトリーヌさんお手製ですよ」


「確かに斬新で格好よく目立ってたから……そうだったわ! ちょっと店の奥に行くわよ!」


 そう言って無理やり店の奥に連れていかれました。



「急にどうしたんですか?」


「君、さっきから色々買ってたでしょ? ガラの悪いやつらにつけられてたわよ」


「えっ! 本当ですか?」


「そうよ。王都に来るの初めてなんでしょう? 初めて感出しすぎで危なかったわよ」


「そうだったんですね。助けてくれたんですね、ありがとうございます」


「分かればいいのよ。それで、カティと知り合いってどういう事かしら?」


「ちょっと待ってくださいね。紹介状を書いてくれてるので……」


 カトリーヌさんから渡されていた紹介状を女性に渡す。


 女性は手紙を読みながら涙を見せる。


「カティは立ち直ったのね……よかったわ」


「あなたはカトリーヌさんのお姉さん? でよかったですか?」


「そうよ。カティの姉のセリーヌよ。よろしくね、エディ君」


「あ、はい。よろしくお願いします」


「ところで手紙には、生地を適正な価格で買い取ってあげてって書いてあるけど、エディ君、生地を持っているのかしら?」


「ありますけど、王都へ来る途中に、結構いい金額で買ってくれた人がいたので、無理して買い取らなくてもいいですよ」


「はぁぁ! 何をバカなこと言ってるの、買い取るからさっさと出しなさい!」


 急に雰囲気が変わった! この人間違いなくカトリーヌさんと血が繋がってるよ!


 取りあえず、以前、カトリーヌさんに依頼されたのと同じのを、いくつか出してみる。


「ナニコレスゴイ!」


 急に語彙力が低下した!


「どれも凄い品質ね。全部買い取りたいけど、お金足りるかしら?」

「ですから無理しない……」


 凄い睨まれた! めっちゃ怖いんですけど!


「今、凄く生地が高騰してるのよね」


「そういえば、この間買い取ってくれた人も同じこと言ってましたけど、どうして高騰してるんですか?」


「あら、知らないの? イグルス帝国が戦争を仕掛けてくるって話で、生地の材料が高騰してるのよ」


「えっ! 戦争になるんですか! それってヤバいんじゃ?」


「戦争になっても問題ないわ。どうせ7年前と一緒で、迅雷のヴァルハーレン大公様が勝つに決まってるから」


「そ、そうなんですね」


 7年前って、僕が生まれた時も戦争があったのか……。


「それよりも、生地がないと服が作れないから死活問題なのよ! ちょっと計算するから、お茶でも飲んで待ってるのよ!」


 いや、お茶出してもらってないんですけど。


 知り合いのお店としか言ってなかったのに、まさかカトリーヌさんのお姉さんのお店だったとは、顔は結構似ているのに母性が足りていない。それにしても7年前にも戦争があったなんてビックリだ、僕とは関係ないよね。


 色々と考えごとをしていると、セリーヌさんが戻ってきた。


「はい、これが内訳ね。それで金貨497枚と言いたいところだけど、金貨500枚でどうかしら?」


「金貨500枚! そんなに出して大丈夫ですか?」


「服を作って売れば、すぐ回収できるから大丈夫よ!」


「それならその金額でお願いします」


「じゃあギルドカードを出してもらえる?」


 ギルドカードに送金してもらった結果。


【商会名】モイライ商会

【会頭】エディ

【ランク】E

【従魔】ヴァイス

【残高】金貨952枚、大銀貨25枚、銀貨2枚


 この間、絹布(けんぷ)を売った金貨100枚とセラータの財宝。ジャイアントスパイダーのオークションもあるし、僕って結構お金持ちなのでは?


「ありがとうございます。確かに確認しました。おまけでカラー糸を付けますね」


「あらいいの? これもかなりの品質ね……」


「カトリーヌさんからは、上級商店街にお店があると聞いてたので、中級商店街にあるとは驚きました」


「ああ、それはカティの件があって、貴族派からの仕事を受けないために移ったのよ。あいつらプライドだけは高くて、絶対に高級商店街でしか買い物しないから」


「商店街にまで、派閥とかが影響してくるんですね」


「もちろんよ。中級商店街だって上級商店街に出している店の分店もあるわ。貴族派の連中は結構きな臭い噂もあるから注意しなさい。多分だけどエディ君、どこか貴族派の息のかかったお店で買い物して目を付けられたんじゃないかしら」


「買い物もゆっくり出来ないんですね。取りあえず今日は宿に帰ります。色々教えてもらってありがとうございました」


「まだお店の中にいた方がいいんじゃない?」


「いえ、長くいるとセリーヌさんに迷惑がかかりそうなので行きます」


「あら、そんなの気にしなくていいのよ」


「逃げるのには自信があるので大丈夫ですよ。それではありがとうございました」



 そう言ってセリーヌさんの店をでると、少し離れた所にガラの悪い人が3人こちらを見ているのが確認できた。


 ガラの悪い人がいる方向とは反対の方に歩いて行く。


『やはり付いてくるな』


「路地を曲がったら中級住宅街に入るから、そこから糸を使って屋根に登るよ」

 

『それがいいだろう』


 一定間隔で付いてくるので、走り出すと向こうも慌てて走り出すがもう遅い、曲がった瞬間人がいないのを確認して一気に屋根に登り、隠れてから覗く。


 男たちは見失った僕を血眼になって探しているが、やがて諦め帰って行く。帰っていくのを眺めていると、最初に調味料などを買った店に入って行った。あの店がハズレだったのか!


 降りる前に下級商店街の方を見てみるが、商店街とは名ばかりの小屋や露店がほとんどだった。


 そんな露店販売をしている人の中に、黒髪の男性を見つけたのだ。

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