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第53話 脱出

 城の屋根の死角にハンモックをくっつけて、一夜を明かした僕は朝日を感じて目を覚ます。


「気絶してしまった。完全に失敗だ!」


『エディよ、目覚めたか。気を失ったようだが、上手くいったのか?』



 魔力が1000を超えて少し余裕が出た僕は、素材合成を1つだけ登録しようとしたのだが。


 まさか組み合わせが間違っていて登録できなかった場合でも、魔力が失われると思わなかったのだ。


 結果、既に体を洗ったり屋根に登ったりで魔力を少し消費していたので、1度目にミスリルと鉄の合成に失敗して魔力500消費。そして2度目の合成であえなく気絶。


 魔力が1000超えたせいか、1回合成しただけでは魔力の消費を感じることができなかった。魔力のご利用は計画的に。



 まずは魔力を確認する。


【名前】エドワード・ヴァルハーレン

【種族】人間【性別】男【年齢】7歳

【LV】13

【HP】400

【MP】1040

【ATK】390

【DEF】390

【INT】770

【AGL】400

【能力】糸(Lv4)▼、魔(雷、氷)

【加護】モイライの加護▼、ミネルヴァの加護、フェンリルの加護

【従魔】ヴァイス


 回復して上限も久しぶりに5増えている。旅の最中は危ないから注意していたのに、あっさり気絶してしまった。続いて糸の詳細を見る。


【能力】糸(Lv4)

【登録】麻、綿、毛、絹

【金属】鉄、アルミ、鋼、ステンレス、炭化タングステ(New)、銅、銀、金、白金、ミスリル

【特殊】元素、ジャイアントスパイダー▼、蔓、グラウプニル(使用不可)

【媒染剤】鉄、銅、アルミ、ミョウバン

【魔物素材】ホーンラビットの角(18)、ダウン(3)

【形状】糸、縄、ロープ、網、布▼

【作成可能色】24色▼

【解析中】無


 気絶はしたものの、しっかり登録されていた。


 炭化タングステン、非常に硬い金属で硬さを表すモース硬度は9、ダイヤモンドの10に次ぐ硬さを誇る。さらにタングステンとはスウェーデン語で『重い石』を意味する金属で鉄の2倍以上の重さがあり、攻撃力に期待が持てる金属なのだ。



「2回目のは登録できていたよ、登録を失敗しても魔力は消費されるみたいだから、次から注意しないとね」


『上手くいったのなら良かったではないか。それでこれからどうするのだ?』


「町から出たいけど。あの走り回ってる兵士って僕を探してるんだよね?」


『多分そうだな』



 今いる場所はこの町で一番高い建物だから、見つかる心配はないんだけど、このままでは下りられない。


 入ってきたのは西門だったから、王都は北門の方角だからあっちだな。城壁の先には森が広がっていた。


 そうか、地図を見ていると森って魔の森しかないと思ってたけど、実際はそうじゃないんだな。


 魔の森ほど高い木はないけど、一応糸で移動できそうだ。



「よし、このまま防壁に登って森に入った方が良さそうだね」


『そうだな、それがいいだろう』


 まず内側の高さ20メートルの防壁に糸で移動する。そして外側の防壁に移って、最後は森へ移動する。


「上手く外に出ることができた。近くにいると見つかるかもしれないからもう少し進もう」


『分かったぞ』



 森の木から木へ糸を使って飛び移り、先を急ぐ。このままなら王都へあっという間に行けると思っていたのですが……。



 現在、何もない平坦な道をひたすら歩いています。


 途中までは調子が良かったのだが、徐々に木の高さが低くなり、ついには飛び移れそうな木が無くなってしまったのだ。



「しかし、何もない道だね。遠くまで見えるから余計に嫌になるよ」


『確かに何もないな……いや、この先の左側の藪から水の匂いがするぞ』


「本当に? 休憩できそうなら、そこで一休みしよう!」


 ヴァイスが言った通り、藪の中に入りしばらく行くと、幅5メートルぐらいの川を見つけた。


「ヴァイス、お手柄だね! 開けた所もあるから、そこで休憩しよう」


 休憩して川の中を覗いてみると、深さは70センチぐらいありそうで、魚が泳いでいるのが見える。


「ヴァイス! 魚が泳いでる。食べられるのかな?」


『何! きっと食べられるはずだ、絶対取るのだ!』


 ヴァイスが川に入っていった。犬かきで魚を追いかけているのだが、捕まる気配はない。まあ、当然なんだけど。可愛いからいいか。

 しばらくすると戻って来た。


『エディよ、(われ)には荷が重いようだ……』

「じゃあ今度は僕がチャレンジしてみるね」


 遂に秘密兵器を出す時が来たようだ! と言っても初めてやるので、成功するかは分からない。出来るだけ広範囲で狙ってみよう。


「スパイダーネット!」


 普通、糸を作れてワイヤーも作れたら釣りをする流れなのだが、のんびり旅をしているわけじゃないからね。


 ジャイアントスパイダーの糸なんだが、丈夫な縦糸や牽引糸は水や汚れは弾く上に重さも感じないのに対し、ベタベタした横糸や付着盤は結構重い。そのため、蜘蛛の巣状で投げると投網のように沈んでいくみたいだ。


 んっ⁉︎ いま何か引っかかった感覚があった! もう少しだけ待ってから引き上げてみる。



 5匹もくっついている! ……しかし、投網にかかった魚をイメージしていたのだが、蜘蛛の巣に捕まった虫のように糸にくっついていた。


『おおっ! エディ! 凄いぞ大量だ!』


 ジャイアントスパイダーの糸って水に強いから、いけたらラッキーぐらいに思ってやってみたのだが、スゲー使える!


「ヴァイス! じゃんじゃん捕まえるぞ!」


『そうだ! じゃんじゃん捕まえるのだ!』






 30分後。


『エディよ。さすがの我でも獲りすぎだと思うぞ、しかも、魚だけじゃなくスライムまでどうするのだ?』


「……」


 ちょっと楽しくなって、調子に乗りすぎたようだ。


 30センチぐらいの鱒のような魚が50匹ぐらい、ジャイアントスパイダーの糸で作った簡易的なスカリに入っている。魚と一緒になぜか掛かったスライムは逃げないように、ジャイアントスパイダーの糸にくっつけてあるが、まずは腹ごしらえからだ。


「今から塩焼きにするけど、ヴァイスは何匹ぐらい食べる?」


『そうだな、10匹頼む』

「分かったよ」


 まずは魚の内臓とエラ、血合いを取って、その辺に生えていた竹で作った串に刺す。この時、口からまっすぐ刺すのではなく、背骨付近がS字になるように刺す。これは焼くときに魚がひっくり返らないようにするためだ。次に塩をふるのだが、尾にたっぷりつける、これは飾り塩といって、尾が焦げてボロボロにならないらしい。


 準備ができたので、焚火の周りに刺して、背中側からじっくり焼いていく。


 次に残った魚の処理だ、折角獲ったので無駄にはしない。内臓、エラ、血合いを取った魚を開きにして塩水に漬ける。時間は30分ぐらいでいいかな。


『エディよそれは何をしているのだ?』


「干物を作ってるんだよ。塩水に漬けて干すと水分が抜けて旨味が凝縮するんだ。日持ちするしちょうどいいかなって」


『旨味が凝縮するのか!』

「干さないとダメだから、すぐには食べられないからね」

『それは残念だ……』

「焼きたても美味しいと思うから、もうちょっと待ってね」



 30分ぐらい経ったので、塩水につけた魚を出して干す。そこから15分ぐらいで焼いている魚を裏返し、今度は腹側を15分焼く。

 

「よし、完成だ!」


 ヴァイスのよだれがヤバイな。


「はい、できたから食べていいよ」


 ヴァイスがすごい勢いで食べていく。


『これは美味い! 肉も良いが魚も最高だな!』


 どれ、僕も食べよう……これは美味いな。じっくり焼き上げたから骨まで食べられる。結局多めに焼いた20匹は2人で全部食べてしまった。僕は3匹だけどね。


 しばらくお腹がいっぱいで動けなかったが、少し回復したのでスライムを観察してみる。



「このスライムは流されてきたのかな?」


『まったく動いてないところを見ると、その可能性が高いだろうな』



 この世界のスライムは弱い魔物として知られている。何でも吸収することから、貴族やお金持ちはトイレに利用したりしているとか。数はそんなに多くないというよりは、ほぼ透明なゲルなので、見つかりにくいだけなんだろう。

 

 スライムの中には核と呼ばれる小さな石があり、その核を破壊すると倒せるって聞いたことがある。


 ここで不思議なのが、スライムには魔石がないということだ。核と呼ばれる物は魔石ではないと言われているが、何かは解明されてないらしい。


 試しに草を乗せてみる。


「何も起こらないな」

『お腹がいっぱいなのではないか?』


 それはヴァイス、お前の事だ。

 次に、干している魚を1匹乗せてみる。


『何をするのだ! まだ我も食べておらぬのに!』


「たくさんあるから大丈夫だって」


 スライムに乗せた魚は、くっついている面から徐々に溶け出す。


「おお! 好みの問題だったのか!」


『なかなか違いの分かるヤツだな。実におもしろい!』


 だから、お前はどこかの天才物理学者か! 鼻のところに前脚を持ってきてるけど、あれはフレミング左手の法則らしいから、お前には無理だぞ!

 その後、魚は30分ぐらいかけて、ゆっくり溶けていった。


「この丸い小さなやつが核なんだろうけど、確かに魔石とはぜんぜん形が違うな」


『その核を取るとどうなるのだ?』


「取るか破壊すると倒せるみたいだよ」


『破壊するのは簡単そうだが、取るのはどうやるのだ?』


「それは知らないな、どうやるんだろ」


 試しに剣で端っこを切ってみるが、なんの反応もない。切れた端っこは分裂することなく溶けていった。


 次は直径1ミリの鋼糸を突き刺してみるが、特に何の変化も起きないので、そのまま核に鋼糸を巻き付け一気に引き抜く。


「ん! これは倒せたのか?」


 核を引き抜いたのに、何も起こらないし溶けない。


『生命の存在は感じなくなったな』

「これで倒せてるんだ、全然実感がないや」


 触ってみるが、プニプニして気持ちいい感触だ。


 素材として取り込めるのか試してみるが、取り込めないようなので、そのままリングに収納する。


 残ったのはスライムの核だけである。


 これは登録できたりするのだろうか?



『魔石を確認。登録しますか?』


【魔石】スライム

 登録しますか? ・はい ・いいえ


 〈はい〉と念じる。


【能力】糸(Lv4)

【登録】麻、綿、毛、絹

【金属】鉄、アルミ、鋼、ステンレス、炭化タングステン、銅、銀、金、白金、ミスリル

【特殊】元素、スライ(New)、ジャイアントスパイダー▼、蔓、グラウプニル(使用不可)

【媒染剤】鉄、銅、アルミ、ミョウバン

【魔物素材】ホーンラビットの角(18)

【形状】糸、縄、ロープ、網、布▼

【作成可能色】24色▼

【解析中】無


「……」


 この世界の人たちは、未だスライムの核が魔石である事を知らない……。

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