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第43話 滅びの町セラータ※

 ――アリシア視点――


 私の名はアリシア・ハットフィールド、ハットフィールド公爵家三女で7歳になりました。


 公爵家では年に2回、領内の町を視察に行くのですが、祝福の儀を受けた私も今回から視察へ向かいます。


 ハットフィールド公爵領には主都アルトゥーラ以外にボーデン、ソル、バザルトという3つの町があり、今回が初めての私は一番近いバザルト町へ向かう事になりました。


 バザルトの町は何回か行ったことがあるので、何事もなく到着する予定だったのですが、問題が起きてしまったのです。


 急に馬車が止まり、外で兵士が慌ただしく動き回っていました。


「アリシア様。どうやらオークが出たようです」


 侍女のエマが報告する。


「迎撃できそうですか?」


「護衛たちなら問題ないと思われますが、数が思いのほか多いようなので少し下がります」


 馬車を後ろに下げ始めると、悲鳴が聞こえたと思った瞬間、馬車が横転する。馬車が倒れた際にぶつかったところが痛い。


「アリシア様! お怪我はありませんか⁉︎」


 エマが横転した馬車の扉をこじ開け、顔を覗かせる。


「問題ありません。外の状況はどうですか?」


「伏兵です。後方からもオークが現れ、挟み撃ちにあっています。脱出しますのでお手を!」


 エマの手に掴まって馬車の外にでますが、前後をオークに挟まれて危険な状況です。


 エマは剣を抜くと、近づいてきたオークを切り殺し。


「アリシア様こちらへ、脱出します」


 エマを含めた数人の侍女と騎士で脱出を図り、私も魔術で援護しますが、1人また1人と倒れていきます。倒しても全く減らないオークに状況は悪化の一途をたどり。エマは小さな小瓶を私に渡して来ました……。


「アリシア様、申し訳ございません。このままでは全滅する可能性も……もしもオークに掴まるようなことがあれば、その薬をお飲みください。辱めを受ける前に自害できます」


「わかりました……」


 そして最悪の状況はやってきます。私とエマの二人だけになってしまい、エマが剣で応戦し、私は魔術で援護するも。エマがオークの一撃を受け倒されてしまいました。


「エマっ! 大丈夫? 起きて!」


 呼びかけても返事はありません。絶望が私を襲いました。これまでと思った私は小瓶を出し、薬を飲もうとした瞬間、殴られて気絶してしまったのです。



 ◆


 覚めたのは森の中でした。


 目を覚ました私はオークに縛られて運ばれていることに気がつき、絶望します。このままでは最悪の未来しか待っていません。他にも運ばれている人がいることに気がついた私は、エマや他の侍女、女騎士の姿も発見し、私は力の限り皆の名前を叫びますが、気絶していて起きる気配はありません。生きているのでしょうか?


 そして、到着したのはオークの村ではなく、木々に飲み込まれた町でした……。


「もしかして、ここは滅びの町セラータ!」


 ――アリシア視点終了――



 ――エディ視点――

 

「女の人たちが運び込まれている」

『彼女たちを苗床にするのでしょう』

「助けた方がいいですよね?」


『少年ではまだオークの上位種には勝てないので、無理でしょう』


「力を貸してはもらえないでしょうか?」


『残念ながら、私は人間たちに見つかるわけにはいかないのです。少年やハーフエルフの娘の前に出たのも、(あるじ)を助けるための例外です』



 そんな決まりがあったのか……どうする。見殺しにするしかないのか……。


 考えている間に女性たちは小屋に入れられ、鍵みたいなものをかけられてしまいました。今なら僕の姿や能力を見られる心配もないと判断した僕は。


「分かりました、エンシェントウルフさんはヴァイスとここにいて下さい。彼女たちが閉じ込められた今なら、僕の能力を全開で使えます。オークの上位種がどの辺りにいるのかだけ教えてもらえますか?」


『教えてどうするのですか? 少年では勝てませんよ』


「小屋から出てくる前に串刺ししても無理ですか?」


『なるほど、しかし、それでは他のオークに見つかる……』


『エディよ、あの奥の大きな屋敷から大きな気配がするぞ』


(あるじ)!』


『オークキングはエディがなんとかしろ! 他のオークは(ワレ)と眷属で相手してやる』


(あるじ)、それでは……』


『固いこと言うな。確かに今なら見られる心配もないし、問題あるまい。我はオークとオークの上位種の食べ比べをしてみたいのだ!』


「そっちが本命かいっ!」

(あるじ)よ承りました』


 ……そんな理由でエンシェントウルフは動くのか? まぁ手伝ってくれるのなら、なんでもいいや……。



『私や(あるじ)が近づくと気づかれますので、少年が先制攻撃しなさい。大きな屋敷の横に、大きな樹が立っているのが分かりますね?』


「一番大きな樹ですね?」


『そうです、あれがエンシェントトレントの成れの果ての姿です……』


 今から突撃なのにスゲー話をぶっこんできたよ!



『あの樹のできるだけ上に登り、上から攻撃するのが良いでしょう。狙いは屋敷の2階部分の奥の部屋です』


「ありがとうございます。それでは行ってきます!」


 糸を使いできるだけ上に登り、飛び移って、元エンシェントトレントの樹に乗る。



 よし、オークに気付かれてない。それにしても、エンシェントトレント凄く高いな。地球で世界一の高さの木は、115メートルぐらいのセコイアだったと思うが、これは200メートルぐらいあるんじゃないか?


 この高さから鋼鉄の糸を射出すれば、落下の加速度も加わって凄い攻撃ができるはずだ。直径は3センチぐらいにしよう。太いと食べるところが減ってしまいそうだし、細いと攻撃力が下がりそうだから加減が難しいな。長さは普通のオークが2メートルぐらいだから3メートルにして範囲は6平方メートル、間隔は20センチでいこう。


 能力を発動して鋼鉄の糸を射出する。思ったより凄いスピードで発射されたと思ったのも束の間、轟音と共に屋敷に着弾し爆発した。


 爆発の衝撃で地面は揺れ、視界は砂埃で埋め尽くされた。何が起きたのか一瞬分からなくなったが、徐々に砂埃が落ち着いてくると。


「……」


 やらかした! 衝撃で屋敷が全壊しちゃったよ!


 今はビックリしてる場合ではない、降りて残りオークを殲滅しなければと思ったその時、意識が薄れていくのであった。




 目覚めた僕は樹の影に寝かされていた。


『エディよ、目が覚めたみたいだな』

「しまった! オークはどうなりましたか?」


『安心するがよい、我と眷属で片付けておいたぞ。エディがキングとジェネラルを片付けたので楽勝だ』


「ジェネラル? キング以外もいたってこと? ……そうかレベルアップのせいで気絶したのか」


『本来なら少年が倒せるようなレベルの魔物ではありませんからね』


 前回はしばらくの間、身体の自由が効かなかったことを思い出したので、試しに動かしてみると。


「あれ? 身体が動く。前はしばらく動かなかったのに……」


『慣れでしょうね。そのうち気絶もしなくなるでしょう』


「そうだ! 捕まった女性たちはどうなりました?」


『こちらの処理が終わってないので、まだ何もしてません。気配はあるのでまだ大丈夫ですよ』



 結局一人では殲滅できなかったな……。



『オーク共は纏めておいたから処理を急ぐのだ! お肉は鮮度が命だぞ』


 ヴァイスはブレがないな。さてオークキングから解体するか。


『キングとジェネラルは瓦礫の横だ。瓦礫から引っ張り出すのは苦労したぞ』


 元大きな屋敷、今瓦礫の横に無数の穴が空いたオークキングらしき魔物と、鋼鉄の糸で串刺しになったサイズが1回り小さいオークジェネラルらしき魔物。狙ったのはオークキングの筈なのに、ホワイ?


『ちょうどキングの下の階にジェネラルがいたようですね』


 そういうことか、オークジェネラル運持ってないな。


 取りあえず鋼鉄の糸は全て回収して解体にかかる。


 かなりの大きさなので切るのも大仕事だ。そこで思いついたことを試してみる。よくケーキなど柔らかいものを切るときに糸を使うと、断面を崩さず綺麗に切れると聞いたことがあるので、まずジャイアントスパイダーの糸の片側を固定して胴体に糸を巻き圧着するように引っ張る!


「……」

『凄いではないか!』


 断面萌えどころか断面グロだったが、凄く綺麗に切ることができた。


「この方法なら穴だらけにしなくても魔物を倒せそうだな」


 能力を使えることが分かったので、素早く解体していくが、オークキングの魔石はジャイアントスパイダーより大きく、拳3つ分もあった事にビックリする。


 全てのオークを解体するのは面倒なので、キング、ジェネラルと数体のオーク肉、その他オークは魔石だけを抜いて焼却することにしたのだった。



――――――――――――――――――――

セラータ周辺補足地図を掲載します。

挿絵(By みてみん)


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