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第400話 出発

 フィレール侯爵領の問題が山積しているため、そろそろ戻るべきだという話になり、出発の準備を進めていた。


 マーウォさんに任せているダイヤモンドは、完成までにもう少し時間がかかるらしい。納得のいく仕上がりになるよう、しっかりとお願いしてある。


「エディ様、出発の準備が整いました」


 騎士団副団長のアザリエが声をかけた。


「よし、それじゃあ出発しようか。父様、母様、行って参ります」


「何かあったら、すぐに連絡するようにね」


「お義父様、エディのことをよろしくお願いします」


「任せておけ」


 今回、おばあ様は長期間ローダウェイクを空けることを心配し、一足先に帰ってしまった。そのため、フィレール侯爵領へ向かうのは、おじい様とメグ姉、レギンさん、リュング、ロヴンの五人だ。


 僕たちは馬車に乗り込み、フィレール侯爵領へと出発した。



 ◆



「そういえば、小僧。陛下から許可を得たと言っていたが、城の件はどうするつもりだ?」


 レギンさんに城の話をしたところ、かなり興味を持ち、「町のイメージに合った城を考えたほうがいい」と助言してくれた。僕はその言葉を受け、じっくりと考えていたのだ。


「一応、案を考えてみました。見てもらえますか?」


 以前描いた町のイメージ図に城を加えたものを見せる。


「ほう、ローダウェイク城に似ているか?」


 確かにローダウェイク城にも似ているが、僕がベースにしたのはスペインのセゴビアにあるアルカサルだ。ローダウェイク城はドイツのノイシュヴァンシュタイン城に似た雰囲気で、どちらも円錐の屋根を持ち、共通する部分が多い。ただ、今回は岸壁の高台に建てたいと考えているため、海の監視を兼ねてフアン二世の塔のようなものを海側に設けるつもりだ。


「この高い塔からエディが攻撃すれば、海からの防御は万全だな」


「おじい様の言う通り、海側の防御を強化するために建てたいですね」


「なかなかおもしろい。しかし、儂も建築についてまったくの素人というわけではないが、専門ではないからあまり当てにするなよ?」


「レギン殿は専門外と言いつつ、いろいろ詳しいから今回も知恵を貸してほしい。一応、今回は城を建てるにあたり、建築の得意な者を呼んである」


「そんな人がいるのですね!」


「レヴィン男爵だ。今では武官として名高いが、もともとは城の修復などをしていた王国一の建築士だったのだぞ」


「アーダム隊長のお父さんがですか!?」


 寡黙で頑固な印象の人物だ。


「王国内の城は、どれも王国設立以前から存在するものばかりだからな。城に関しては修復が主だったが、国内の砦の建設にはレヴィン男爵が関わることが多かったのだ」


「そうだったんですね!」



 フィレール侯爵領についての話をしながら馬車は順調に進み、ハットフィールド公爵領のアルトゥーラを抜け、もう少しでライナー男爵領に入るというところで、突然、馬車が止まった。


「エディ様、盗賊が現れました。しばらくお待ちください」


 アザリエが報告する。


「気をつけてね」


 僕も手伝いたいが、ここは騎士団を信じて待つしかない。窓の外を見ても、盗賊の姿は確認できない。


「エディ、大人しく座って待っていればいい」


「分かっているのですが、それでも心配です」


「アザリエは的確な判断ができる。危険が迫れば、すぐに知らせるだろう。エディは、万が一に備えて待機していればいい」


「分かりました」


 座り込み、外の音に耳を澄ます。


「賊を馬車に近づけるな!」


「そっちへ行ったわ!」


「火を使う魔術師がいるわ、注意して!」


 盗賊に魔術師が!?


「威力は大したことない! こちらの装備の方が遥かに上よ。冷静に対処しなさい!」


 ――はいっ!



 しばらく待つと、アザリエが戻ってきた。


「エディ様、お待たせいたしました。出発いたします」


「怪我人はいない? 魔術師がいたんでしょ?」


「聞こえていましたか。確かにファイアの魔術を使う者がいましたが、威力は大したことなく、問題ありませんでした」


「それならよかった。でも、盗賊に魔術師がいるなんて珍しいね」


「大規模な盗賊団だったので、はぐれの魔術師かもしれません」


「はぐれ?」


「はい。自らの力を誇示したい者や、犯罪に手を染めた者が盗賊になることがあります。今回の魔術師は若かったので、前者の可能性が高いですね」


「若い魔術師なんだ」


「エディ様より少し年上くらいでしょうか」


「そんなに若かったんだね……」


「あの若さで盗賊に落ちるとはもったいない話です。賊の数が多かったため時間を要しましたが、先を急ぎましょう」


 その後、馬車は順調に進み、ライナー男爵領へと到着した。


 

 ◆


 

 ライナー男爵領に到着したが、町に人の気配がない。


「エディ様、先触れに行っていたリリーの話では、ライナー男爵の館には誰もおらず、町もまったく人気がないそうです」


「アザリエ、すまん。言うのを忘れておったが、領地拡大の決定はテネーブル伯爵によって伝えられている。町が無人なら、住民は元マーリシャス共和国側へ移動しているはずだ」


「承知しました。確認のため、元マーリシャス共和国側へ先触れを出しますので、しばらくお待ちください」



 ほどなくして確認が取れたため、馬車は元マーリシャス共和国側へと向かい、ライナー男爵とテネーブル伯爵が出迎えてくれた。


「フィレール侯爵のおかげで我が領は救われました。ありがとうございます!」


「救ったと言っても、町を作るところから始めなくてはならないので、これからですね」


「もちろん分かっております。テネーブル伯爵からいろいろと学ばせてもらっています」


「それは良かったですね」


 テネーブル伯爵についてはノワールの件があるので、少しモヤッとするな。


「フィレール侯爵、ノワールのことで二人だけで話したいのだが、少しだけ時間をもらっても?」


「ノワールについてですか? 分かりました」


 テネーブル伯爵と二人で話をすることになったのだった。

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