第393話 マーウォのヒ・ミ・ツ
「それで小僧、マーリシャス共和国はどんな状況なのだ?」
レギンさんが質問してきたので、みんなにも現状を説明しておく。
「なるほど、フィレール侯爵領の整備も大事じゃが、ローダウェイクとの行き来をなんとかせねばな」
「そうなんですよ! 街道を整備してカザハナと僕だけにしたら早く移動できるかなと考えていたのです」
地図を取り出し、レギンさんに見せる。
「なるほど。この街道が整備されれば、かなり時間は短縮されるだろう。ただ、カザハナと小僧だけなら、街道がなくても早く移動できるじゃろうが」
「本当ですか!?」
「カザハナは雪の上を翔けるように走る。あれはスレイカリブーやロイヤルカリブーの能力で、自身の重さを軽くしているのではないかと言われておる」
「そうなんですか!?」
母様や父様も首を振っているので知らないようだ。それにしても、自分の重さを軽くするって、空属性の魔法を使いこなしている感じだな。
「残念ながら、魔石のない魔物のため仮説でしかないがな。何が言いたいかというと、スレイカリブーでは無理だろうが、ロイヤルカリブーのカザハナなら木の上を翔けることができると儂は思うぞ」
ソリを引いたらリアルサンタができそうだけど、すごい高速で移動するんだろうな。
「レギンさんの言うことが本当なら、街道を整備する優先順位は多少下げてもいいのかな?」
「行き来だけならそうだけど、エディ以外の人の行き来や資材運搬も必要だから、結局街道の整備は必要だよ」
「資材なら僕が運搬すれば早く運べますよ?」
「町がどんどん出来上がっていくのに、資材の流れがないのは良くないから、エディが運ぶのはフィレール侯爵の屋敷の資材ぐらいにした方がいいかな」
「なるほど、そういうのも気にしないとダメなんですね」
「そうだね。他にもフィレール侯爵領は出来たばかりで、領民はマーリシャス共和国の人しかいないから、資材を運搬する人や建設に携わった人たちがそのまま住み着いてくれる可能性もある。人の流れを省くのは良くないね」
そうか、マーリシャス共和国の人がどのくらい残っているのかは分からないが、ヴァーヘイレム王国を快く思わない人たちは出ていくだろうから、新しい領民も必要なんだな。
「それで小僧はフィレール侯爵領をどういう風にしたいとか考えておるのか?」
「はい、おばあ様からもファンティーヌの町に負けない町を作れと言われているので考えてみました」
空間収納庫からフィレール侯爵領の地形に合わせて描いた町並みのイメージ図を出してみんなに見せる。
――!
「エディ色の素敵な町ね!」
「少しローダウェイクの町とも似ているけど、白と青の綺麗な町だね」
メグ姉や父様を始め、みんなにも好評で良かったが、エディ色というのは止めてほしい。
ファンティーヌの町はオレンジ色の屋根が特徴のクロアチア南部の都市ドゥブロヴニクと似たような町並みだった。フィレール侯爵領は白い家に青い屋根が鮮やかな、ギリシアの島サントリーニ島を参考にしてみたのだ。
「なるほど、あの辺りは日差しや風の強い地域じゃ。あの辺りで豊富に採れる石灰で白く塗り、建物の中が高温になるのを防ぎ、丸い屋根で強風を避ける。美しさと実用性を兼ね備えておる」
丸い屋根にも意味があったのは知らなかったな。
「レギン殿はマーリシャス共和国に行ったことがあるのですね」
「その頃は共和国ではなかったがな」
父様の質問にレギンさんが答えるが、共和国ではなかったということは、マーリシャス王国の時代だったんだな。
「久しぶりの王都だ。小僧の準備が終わるまで、儂らは使えそうな資材を見て回るぞ」
「大公家の名前で買えるように手配しておきましょう。買った品物もこの屋敷に配達してもらって構いませんので、必要そうな物は全て購入してください」
「それはありがたい」
「これから町を造るのですから、資材や道具はどれだけあっても困りませんからね」
資材のことは全く頭になかったな。
「私は今行っても役に立ちそうもないから、町が完成してからいくわね!」
マーウォさんなら今来ても、すごく役に立ちそうなんですけどね。
「マーウォさんにお願いしたいことがありまして」
「あら、私に?」
空間収納庫から宝物庫でもらったダイヤモンドの塊を取り出す。
「これを褒美として頂いたのです」
「……硬くて加工できない宝石ね?」
「知っているのですね?」
「もちろんよ。こんな大きな塊を見るのは初めてだけど、原石はいくつか持っているわ」
「これで指輪を作って婚約者にプレゼントしたいと考えているのです」
「加工できない石と知って私に持ってきたのかしら?」
「なんとなくですが、マーウォさんなら加工できるような気がしたので」
「なんとなくだったのね」
「なんとなくと言いましたが、マーウォさんの作るアクセサリーって、他の職人が作る物と次元が違うんですよね。もしかしたら、リュングやロヴンのように宝石を加工できる能力を持っていると考えたら納得できたので、この宝石もいけるかなと思ったわけです」
「かなり具体的な根拠で驚いたわ。持っていなかった場合どうするつもりだったのかしら?」
「その場合は加工方法を考えればいいだけなので、どちらにしてもマーウォさんなら加工できるはずです」
「加工法を考えるなんてエディちゃんらしいけど、難しい問題よ?」
「要するに硬くて加工できないなら、これと同等以上の硬い物質で加工すればいいのです。この宝石を利用して削ることも可能だと思います」
「この宝石を利用して……っ! なるほど、硬い宝石を粉にして削るのね」
「その通りです! もう一つの可能性として、僕の能力でこれより硬い金属を作り出せないかと考えています」
「なんじゃ小僧、おもしろい話をしておるな。小僧の能力で作った金属というのには儂も興味あるぞ」
「エディちゃんがそこまで考えているのだったら、教えてアゲルわ。エディちゃんの考えている通り、私の能力は宝石を加工する能力よ。でもロヴンちゃんほど使い勝手がよいものでもないのよ」
「そうなんですか?」
「ええ、能力で加工できるのは大まかなカットのみ。それも、魔力をたくさん使うわ。魔力を増やすために冒険者をやったこともあったけど、体質なのかほとんど増えなかったの」
「どうして今話す気になったのじゃ?」
「昔、この能力が見つかっちゃった時に、捕まりそうになったことがあって女装して逃げて行き着いたのがコラビの町だったのよ」
その話ってブラウは関係してないよね? いや、それより今の格好はカムフラージュなのか!?
「そういえば、町に来てしばらくはカツラをつけて、おかしな格好をしておったな」
今はおかしくないのだろうか?
「ただ女装していただけの時ね。そのあと、リーヌちゃんのお店に通い始めて真の自分に目覚めたのよ!」
今のマーウォさんが出来上がったのってカトリーヌさんのせいだったの!?
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