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第39話 Side コラビの町(下)※

 ――ジョセフィーナ視点――


 ついに私は最後の町、モトリーク辺境伯領コラビの町に到着したのです。


 辺境の町というだけあって、道のりはかなり険しいものでした。



 逸る気持を抑え、まずは情報収集開始します。いきなり孤児院に行かないのには理由があって。


 孤児院を運営している教会の神父が子供たちに酷いことをしてる場合、孤児を見せてもらえない事が何回かあったのです。当然そんな神父はヴァルハーレン大公の使者である証を見せて成敗しましたが、その場合町を出るのに時間がかかってしまいます。学習した私は、事前に下調べをしてから乗り込むように変更しました。



 しかし、調べ始めた私は、エドワード様の特徴とピッタリの少年がこの町にいるという事に驚愕します。


 自分で計画したとはいえ、こんな辺境の町にいる可能性はゼロと思っていただけに、ショックを受けました。


 そのエディという少年はこの町では有名なようで『微笑みの天使』や『ジャイアントスパイダー殺しの英雄』といった呼ばれ方をしているらしく、この2つからエドワード様で間違いないと確信したのです。


 エドワード様の母であるソフィア様は、ヴァルハーレン領では『微笑みの聖女』と呼ばれ領民から慕われており、父であるハリー様は『迅雷』と呼ばれ他国から恐れられる国の『英雄』。それにしても、7歳でジャイアントスパイダーを討伐しなければならなくなった状況が気になりますね。


 孤児院に向かった私は自身の運の悪さを呪いました。なんとエドワード様が旅立ってしまったとのことで、詳細を知るであろう人物のシスターであるマルグリットという女性も昨日、新しく着任した神父によって解雇されている事実。


 聞けば、マルグリットと言う女性はハーフエルフと言うではないですか。国としては亜人種を受け入れてはいるものの、南方から東方の地域では人種差別が酷いと聞きます。モトリーク辺境伯は中立派なので、そこまで酷くはないと思いますが、新しく着任した神父が人族主義なのでしょう。


 しかし、困りました。エドワード様がどこへ向かったか分からない以上、闇雲に探しに出るのは危険です。まずはマルグリットさんを探すべきですね。


 数日間、聴き込みをした結果、カトリーヌという女性の店を出入りしているという情報を掴んだので向かいますが、店は閉まっています。通行人に聞いてみるとしばらく休みが続いてるとのことです。


 私が途方に暮れていると、ドワーフと筋骨隆々の女性? が店の裏手に入って行くのを目撃しました。


 チャンスだと思った私は後に続いて入ります。


「リーヌちゃん、いるかしら?」

「ほらみろ、氷華もおるではないか」


 こ、この珍妙な生き物は男なんでしょうか⁉ 今はそんな事を気にしている場合ではありません! ついに見つけたのです、マルグリットと言う名のハーフエルフの女性を。


「マルグリットさん、エドワード様の行方を教えて下さい!」


 場の空気が一瞬で凍りついた事で、私は自己紹介もせずに話し出した事が、失敗したと悟るのでした。


 ――ジョセフィーナ視点終了――





 ――マルグリット視点――


 レギンと、マーウォが入ってきたと思ったら後ろから声がしました。


「マルグリットさん、エドワード様の行方を教えて下さい!」


「――!」


 エディの本当の名を知っている女! 私は警戒を最大にしながら、まず最初の2人の対処をします。


「後ろの女が何を言っているのか分からないが、割り込みはよくないから少しまってね。レギンとマーウォはここへ何しに来たの? カティに用事かしら?」


「氷華とカトリーヌの計画に乗っからせてもらおうと思ってな、マーウォと共に店を畳んできたのじゃ」


「あなた達もついて来るってことなのね?」


 レギンは後ろの女をチラッと見て話します。

 

「そうじゃな、多少秘密を知る者としては心配での、何より儂らはあやつの創り出すもの無しじゃ満足できなくなっての、あやつの所に行きたいんじゃ」


「この2人なら、いいんじゃないかしら」


 カトリーヌが2人の動向を援護したので頷きます。


 あとは、後ろの騎士の格好をした女の対処だけですが。


「そっちの二人の要件は分かったのだけど、あとはあなたの要件ね?」


 改めて女の騎士を見ると金髪、緑目の綺麗な女性で歳は15、6歳ぐらいでしょうか、女は頭を下げると話し出す。


「先程は失礼いたしました。ようやくあなたを見つけられたので、嬉しさのあまり自己紹介を忘れていました」


「私を探していたの?」


「はい、孤児院であなたの名を聞いて探していました。自己紹介が遅れましたが、私の名はジョセフィーナ・ジェンカーと申します。ジェンカー伯爵家三女になります」


「伯爵家?」


「そうです、それはどうでもいいのですが、ヴァルハーレン大公家でエドワード様の専属メイドをやっております。専属メイドと言っても、7年前にお守りする事を出来なかった無能なメイドでございますが……」


「「「「――‼︎」」」」


 私が何を聞こうか迷っているとカティが質問します。


「ジョセフィーナさん、質問いいかしら? エディ君……この町ではエディ君と呼ばれているので、そのままで呼ぶわね、エディ君は捨てられたわけじゃないって事でいいのかしら?」


「私たちがエドワード様を捨てるわけがないだろうが! ……っそうか、普通ではそういう認識になるのですね。まずはヴァルハーレン家としての言い分を聞いてもらえますでしょうか? こちらがヴァルハーレン家の使者である証になります」


「本物ね」


 カティが答えるので続きを促す――。


 衝撃の事実でした。まさかエディの乗った馬車が襲われて、その際に攫われていたとは。それよりも、エディのご両親がエディの事を諦めずに、まだ捜していると言う事実に涙が溢れます。


「ごめんなさいね、メグはエディ君を何より大切に育てていたから、エディ君のご両親が捜してるという事実が嬉しいのよ。ところであなたの首の傷はもしかしてその時に?」


「いえ、この傷はエドワード様を護れず同僚を死なせた責任をとって自害を試みたのですが、奥様に助けられたのです。傷は不甲斐ない自分を戒めるため、残したままにしてもらいました」


「なるほどエディ君は愛されているのね……メグ、話してあげたら?」


 私は頷くと、エディを拾ってから今日までのことを話しました。話し終わるころにはジョセフィーナも涙を流し、最後は二人で抱きしめ合っていたのです。


「鬼の目にも涙とはこのことか……まさか小僧が大公家の嫡男だったとは」


「相変わらずレギンの爺様は失礼ね。メグリンに後で凍らされるわよ」


「ほら、二人共いつまでも抱き合ってないで、これからの事を話しするわよ」



 少し離れると、ジョセフィーナは額を床につける。



「改めてお礼を、我が主人エドワード様を救って頂きありがとうございます!」


「私はエディがいて7年間幸せだったから。7年間苦しんだあなた達に感謝されるのは悪いわ。しかし困ったわね、エディはあなた達に命を狙われている可能性が高いと思っているのよね」


「な、なぜ我々がエドワード様の命を狙ってることに!」


「普通に考えれば、赤子が魔の森にいる時点で捨てられたと思うわよね?」


「そ、それはっ……」


「とりあえず、私たちは今からヴァルハーレン領に向かう予定だったから、あなたも一緒に来なさい。途中で見つけられればラッキーだし、最悪でもヴァルハーレン領で落ちあう事になっているから大丈夫よ」


「分かりました、よろしくお願いいたします」

「レギンとマーウォもそれでいいわね?」

「問題ないわい」

「大丈夫よ」


「じゃあ馬車はもう用意してあるから行きましょう!」


「すまないが、大公様へ手紙を出す時間をもらっても良いだろうか?」


「ジョセフィーナさん、手紙より間違いなく先に到着すると思うわよ」


 確かにカティの言う通りだ。手紙は冒険者ギルドなら依頼を受ける人がいなければ届かないし、商人ギルドなら定期便もあるがそれも月に1回程度だ。馬車で直接向かう方が断然早い。


「なら、馬車の中で準備だけしておいて、大きな町で頼むのはどうかしら?」


「マーウォの案が一番良さそうだけど、どうかしら?」


「確かにその案の方が一番良さそうです。それでお願いします」


 こうして、私たち5人はヴァルハーレン領に向けて旅立つのでした。


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メグ姉ことマルグリットのイメージ画像です。


挿絵(By みてみん)

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