第328話 キンガンフーガ
城へ帰ると調理場へ向かう。
「エドワード様、どちらへ向かうのでしょうか?」
「フラムたちが来た段階で料理の準備をしていると思うので、さっき釣ったキンガンフーガを渡しに行こうと」
「もしかして、余計な仕事をさせてしまうのでしょうか?」
「その心配はないから安心して。あまり見ない食材だろうから、きっと喜ぶよ」
「仕事が急に増えて喜ぶのですか?」
「うちの料理人は料理が大好きな人たちばかりだからね」
調理場に着いた。料理人たちが慌ただしく動いていているなか、近くにいたピエールが僕に気がついた。
「エドワード様、どうされました? もしかして、そちらのお嬢様はバーンシュタイン公爵家の?」
「そうです。フラム嬢ですね」
「フ、フラム・バーンシュタインです!」
「フラム様、私はここでデザートを担当しているピエールと申します」
「デザートを作るのですか!? 凄く楽しみです!」
「今夜はエドワード様が考案されたパンケーキの予定でしたが、お好きなものがあればご用意いたします」
「パンケーキが出るのですか!?」
フラムのテンションが一気に上がった。
「フラムはパンケーキが好きなのですか?」
「いえ、王都で皆様が話されているのを聞いて、一度食べてみたいと思っていたのです!」
そういえば、ナントカを愛でる会があるとか言ってたから、そこで聞いたのかな。
「それではこのままパンケーキで行きますので、お楽しみなさってください」
「ロブジョンはいないのかな?」
「今、いい食材がないか市場へ探しに行っておりますが、もしかしてフォーントゥナーでも釣られました? 私が代わりに受け取りますよ」
「そうなんだね。フォーントゥナーではないけど、珍しい魚をフラムが釣ったからお願いできないかと思って」
「珍しい魚ですか! お任せください!」
ピエールの珍しい魚に反応して、料理人たちが集まってくる。仕事は大丈夫なのかな?
魚を出そうとしたところで、誰かが走って……ロブジョンたち、買い出しに行ってた人たちが走ってきたんだけど。
「はぁ、はぁ。ほら……お前たち……俺の、はぁ、はぁ。言った通り……はぁ、はぁ。だったろ?」
かなり息を切らせているが、どこから走ってきたんだろうか?
「食材を見ていたら、エドワード様が食材を持ってくると言って急に駆け出したんですよ」
「そんなのが分かるの!?」
エリーの勘じゃないんだから。そんな能力を開花させないで欲しい。
「食材の勘ですな。食材が私を呼ぶ声が聞こえるのです!」
その呼んだ食材を切り刻むんだから怖いよっ!?
「して、エドワード様はどのような食材を?」
段々と下手な食材を出せなくなってきたな……。今回は大丈夫だけど。テーブルの上にキンガンフーガを出す。
――おおっ!
「見たことがない魚ですな!」
「見たこともないようなサイズですが、もしかしてキンガンフーガでしょうか?」
ロブジョンは知らないようだが、生まれがルージュ伯爵領のルーフスである、ピエールは知っているようだ。
「ピエールの言う通り、キンガンフーガらしいです」
「こんなに大きなキンガンフーガがいるとは驚きました」
プレジール湖で育つと大きくなるのだろうか?
「ピエールは食べたことがあるの?」
「滅多に揚がらない魚で、揚がったとしても、伯爵家に売っていたので食べたことありませんが、どのように調理しても美味しいという話を聞いたことがあります」
水揚げされるとルージュ伯爵が買い取ってたのか、羨ましいな。
「エドワード様、今回はどのように調理いたしましょうか?」
「そうだね、煮付けにしてもらえるかな?」
「ほう、煮付けですか。確かに煮付けも合いそうですな。これだけの大きさなので、何品か用意いたしましょう」
「そうしてもらえると、バーンシュタイン公爵も喜ぶと思うから、後はロブジョンに任せるね」
「お任せください」
キンガンフーガの調理をロブジョンに任せて、みんながいる部屋へ移動することにした。
◆
歩いているとジョセフィーナが近づいてきて。
「エドワード様、皆様はガラスのティールームにいらっしゃいます」
「そうなの? じゃあ、そっちに行こう。フラム、こっちだよ」
「エドワード様、ガラスのティールームというのは?」
「きっと、見れば驚くと思うから楽しみにしてね」
「驚くのですか? ……もしかして、そこはたくさんのお花が咲いていたりしますか?」
「えっ!? 合ってるけど誰かに聞いたの?」
「いえ、そういえば夢で見たのですが、あまりにも不思議な部屋でしたので、ただの夢だと思っていたのです」
「なるほど、今までは寝ている間に見た夢として処理してたんだね?」
「はい、ですが……」
「フラム、その話はどこでもしちゃ駄目だからね」
「そうでした。気をつけます」
庭園の中に作られたガラスのティールームが見えると、フラムは急に駆け出した。
「エドワード様、あれですね!? 色々な花もたくさん咲いていて、とても綺麗です! 夢で見たのと同じ不思議な建物です!」
フラムに隠し事ができるのか不安になってきた。すぐに言ってしまいそうだ……顔に出るという意味では僕も同じだけどね。
ティールームに入ると、和やかに紅茶を楽しんでいて、難しい話しは終わったようだ。
「おお、フラム! 船はどうであった?」
「とても楽しかったです! 大きなお魚を捕まえました!」
「そ、そうか。それはよかったな」
イグニスさんはテンションの高いフラムにたじろいでいる。
「フラムが捕まえたのですか?」
「はい、お母様。こーんな大きなお魚です!」
フラムが可愛く両手を広げて説明するのだが、テンションが高すぎるせいか、いまいち伝わっていないようだ。フラムの母であるマリアンヌさんが、説明を求める眼差しで僕の方を見たので、代わりに説明すると。
「エドワード、プレジール湖でキンガンフーガが揚がったのかい?」
キンガンフーガのワードにおばあ様が食いついた。
「おばあ様は知ってるのですか?」
「ええ、昔、ファンティーヌで食べたことがあるのだけど、とても美味しかったのを覚えているわ。まさかプレジール湖で揚がるなんて、初めてじゃないかしら」
「おばあ様がそこまで美味しかったのなら、とても期待できますね。ロブジョンに任せてきたので、期待してください」
「それは楽しみね」
食通で知られるおばあ様が美味しいというので、夕食ギリギリまでキンガンフーガの話で盛り上がったのだ。
夕食ではキンガンフーガの煮付けや塩焼きなどが出されて、おばあ様はもちろん、イグニスさんたちも満足したのだった。どちらかというと、フラムとマリアンヌさんは、初めて食べるシン・パンケーキの方が終始テンション高かったけどね。
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