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第327話 フラムと船

 難しい話は大人たちに任せて? フラムと船のある地下に向かう。


「城から船に乗れるのですね? 凄いです!」


 フラムは船に乗れるとあって、跳ねるように歩いてかなり嬉しそうだ。


「実は元々今日は乗る予定だったので、すでに準備できているはずです」


「そうだったんですか?」


 地下に行くと船長のジャックが近づいて来る。


「エドワード様、遅かったですな……そちらのお嬢様は?」

 

「バーンシュタイン公爵家、次女のフラム嬢だよ。船に乗ってみたいというので連れてきたよ」


「そうでございましたか。準備はできていますのでお乗りください」


 ◆


 船に乗ると湖に向けて出発する。


「これが船からの景色なんですね!」


 フラムは船からの景色が珍しいのか、甲板を駆け回っていてそれを船員たちが微笑ましく見ているが、僕も最初はあんな風に見られていたのだろうか……。


「エドワード様! お魚が泳いでいます!」


「ええ、今日は釣りをしようと思っていたんです」


「釣りというのは?」


「ああ、この棒に結びつけた糸で魚を獲るんです」


「これで魚を獲ることができるのですか?」


「やってみますか?」


「はいっ!」


 レイナードさんの時もそうだったが、意外とアグレッシブなんだな。フラムに釣り方を教えて、糸を垂らし釣れるのを待つ。


「そういえば、フラムが夢で見たという船はこれであってましたか?」


「夢で見た船とまったく同じです! 最初はお姉ちゃんに夢の話をしたら、海のないローダウェイクに大きな船はないと言われていたので、ガッカリしていたのです。しかし、王都でノワールお姉様とエリーから船の話を聞いて、もしかしたらと思って期待していたのですが、夢のままだったので本当に驚きました!」


「ん? 王都でノワールとエリーに会ったの?」


「はい! あの後、クリスタ様に誘われました、()()()()()()()()()()()で出会って仲良くなりました!」


 ……エドワード様を愛でる会ってなんだ? クリスタ殿下はいったい何をしているんだ!?


「はっ! エドワード様を愛でる会は内緒で、エドワード様情報交換会の間違いでした! さっきのは忘れてください!」


 どっちも似たような感じはいいとして、本人に言ったらダメなやつだよね!?


「……分かりました」


 それにしても、未来視というのは予知夢限定なのだろうか……僕の糸みたいにレベルが上がればコントロールできるようになったりするのかもしれないけど、あまりにも凄すぎると、おじい様の言うとおり、命を狙われる危険性があるんだよね。


「フラムは、ローダウェイクに来た時は不安そうでしたが、今は大丈夫そうですね?」


「エドワード様のステータスに書かれている女神様と同じ名前なので、もう大丈夫です!」


「そうですか。フラムに教えておきますが、加護はMPが増えます。レベルが上がった時の増え幅も、かなり大きいので覚えておいてください。レベルを上げるかどうかは分かりませんが、イグニスさんとマリアンヌさんに言ってもいいので相談してみてくださいね」


「分かりました!」


「そういえば、マリアンヌさんはシュタイン伯爵の妹さんだったと思うのですが、僕のことが嫌いとかじゃないんだね」


「お母様ですか?」


「ええ、どうやら僕はシュタイン伯爵からはかなり嫌われているようなので、もしかしたらと思っていたのです」


「それなら大丈夫です! ホルス伯父様とお母様は仲が悪いので」


「そうなんですか?」


「はい、と言っても私のせいなんですけど。私の目のことをからかって嫌がらせしたのが伯父様のところの子で、さらに伯父様自身も私のことを気味悪がっていて、それ以来お母様とは仲が悪いのです」


「以前は目のことをかなり気にしてたけど、今はそれほどでもないみたいだね?」


「……そういえば、そうですね。王都で友達ができたからでしょうか? 皆さんとても優しい人ばかりでしたから。でも、エドワード様に綺麗な瞳の色と言われてからのような気がします」


「そうだったの?」


「はいっ!」


 春風が優しく吹き抜け、フラムの笑顔は華やかに咲き誇り、ローダウェイクに訪れたときの不安な顔は、どこかへ飛んでいったようだ。


 フラムが持っている竿に当たりがきたのかしなっている。


「フラム、魚が釣れたようですね。さっき教えたとおり、ゆっくり手元のハンドルを回してください」


「わ、分かりました! こうですか?」


 魚は特に抵抗した様子もなくリールもクルクルとまわるので、そこまで大きい魚ではないようだが、この間のノワールの時のようなことが起こる可能性もあるので、注意だけはしておこう。

 

「そうです。その調子です」


 魚が釣れたのを見て、船長や船員たちも集まってきた。


「この引きだと、そこまで大きな魚ではなさそうですね。おい、タモを持って来い!」


 船長のジャックが船員を呼ぶ。このタモは僕の糸で作った物で、モイライ商会でも販売している。魚をとる仕事をしている人たちから、かなり人気があるとのことだ。


「浮かび上がって来やした!」


 船員が叫ぶので僕も見てみると。


「……」


「すみません、エドワード様。お願いできますでしょうか?」


「分かったよ」


 浮かび上がった魚を蔓を使って甲板に上げる。タモに入るような大きさではなかったのだ。


「エドワード様! 凄く大きい魚です! なんて魚なんでしょうか?」


 フラムが尋ねてくるが僕も見たこと……この世界では初めて見るな。まあ、大きさが1メートルもあるから全然違う魚かもしれない。


「僕もプレジール湖で初めて見ました。ジャックは分かる?」


「もちろん分かりますが、プレジール湖で見るのは初めてです。キンガンフーガという魚ですね。かなり素早い魚のはずなのですが簡単に釣れましたね」


「キンガンフーガ……」


「キンガンフーガというのですか! 赤い体に目が金色の魚は初めて見ました!」


 フラムはかなりテンション高いな。しかし、体長1メートルの金目鯛、しかも目玉が本当に金色って、はっきり言ってキモい。キンガンって金眼ってことなんだろうか? 近眼じゃないことを願う。


「ねえジャック。このキンガンフーガは美味しいの?」


「もちろんでございます。どう調理しても美味い魚だったかと」


「それなら、今日の夜にイグニスさんたちにも食べてもらおうか?」


「よろしいのですか!?」


「フラムが釣った魚なんだから、フラムの好きにしていいよ」


「それではお願いいたします。食べてみたいです!」


 今晩の晩ごはんのメイン食材が決まり、フラムも船を満喫したところで、城へ帰るのだった。

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