表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/434

第33話 Side ジョセフィーナ

 私の名前はジョセフィーナ・ジェンカー。ヴァルハーレン大公の嫡男、エドワード様の専属侍女としてお仕えしています。今年で16歳になりました。専属侍女と言っても、実際にエドワード様と過ごしたのはわずか3ヶ月の間だけですが。


 エドワード様は奥様にそっくりな美しい顔立ちをお持ちで、私は彼のお世話をすることが幸せでした。その3ヶ月は私にとって貴重な時間だったのです。


 エドワード様の専属侍女になる前は、ジェンカー伯爵家の三女として、武勇で有名な父との縁を結びたいという話が数多く寄せられていました。縁談は私にとっては望ましくないものでしたが、偶然にもヴァルハーレン大公の元に生まれてくる嫡男の専属侍女を募集しているという話を耳にした瞬間、私は思わず飛びついてしまいました。


 私自身が言うのも何ですが、当時9歳でありながら、他の候補者を圧倒するほどの武の才能を持っていたことが幸いし、専属侍女の座を手に入れたのです。


 しかし、充実した日々は()()()()が判断を誤ったために、崩れ去ってしまいました。


 奥様とエドワード様が乗った馬車を盗賊に襲撃されてしまったのです。その時、旦那様はイグルス帝国からの侵略に対抗するため不在でした。頼りになる奥様の専属侍女であるコレットさんも偶然にも実家へ帰省中で不在。さらに戦争による兵士の不足から、領内の移動だけだったため、護衛の兵士の数も少なくしていたことも災いしたのでしょう。


 エドワード様には私の他にもう一人、イネスという専属侍女がいましたが、二人ともニルヴァ王国の王女だった奥様が狙われていると判断してしまったのです。


 武力を一切持っていないイネスから、私に奥様の護衛に付くように提案され、私もそれが最善の策とエドワード様をイネスに預けて奥様の護衛に回りました。


 結果的に、襲撃者を撃退することには成功しましたが、逃げた盗賊たちによってエドワード様は連れ去られ、同僚のイネスは殺されてしまったのです。


 私はその場で自分の判断ミスを詫び、剣で首を貫いて自害を図りましたが、奥様の回復魔術によって一命を取り留めました。


 奥様は意識を取り戻した私に『専属侍女のあなたが死ぬとエドワードが帰ってきた時、誰が世話するのかしら?』と言って励ましてくださったのです。

 この時ばかりは声をあげて泣きましたが、奥様はそんな私を優しく抱きしめてくださいました。


 私は奥様のお付きをしながら、何度もエドワード様の探索に加わりました。しかし、どこを探してもエドワード様の痕跡は見つからなかったのです。最初は気丈に振る舞っていた奥様も、日に日にエドワード様を想う気持ちが募っていき、食べ物も喉を通らず、顔色も悪くなっていき。やがて、自力で立つこともできなくなりました。私は奥様の苦しむお姿を見て、自分の無力さを呪ったのです。


 そして、2年経ったところで、私は一人でエドワード様を探すことを決意します。奥様と旦那様にその旨を告げると、二人は危ないからと反対しました。しかし、私は意志を曲げません。旦那様は私の父に説得を頼みましたが、それが裏目に出てしまい、父は私にエドワード様を探し出せる力をつけさせるため、鍛え直すと言い出したのです。さすがの旦那様も頼む相手を間違えたと頭を抱えて嘆いていたのを思い出しました。


 そこから2年の間、私は父の厳しい特訓に耐えたのです。そして、晴れてエドワード様を探しに行く旅へ、出発できるようになりました。私は2年間、特訓を受けながら考え抜き、魔の森沿いの町を全て探す計画を立てたのです。旦那様と父から許可を貰いましたが、私のことを心配した奥様は、最後のコラビの町まで探した後は、一旦ヴァルハーレン領へ帰ってくるようにと約束させられたのです。


 旅は想像以上に困難を極めましたが、現在は最後の目的地であるコラビの1つ前のルースの町。


 ルースの町ではエドワード様の手掛かりを見つけるどころか、教会に神父すらいない状態。孤児院も酷い有様で、かなりの時間を取られてしまいましたが、旦那様には報告の手紙をだしておきました。


 最後の町、コラビへ向かう準備をしているとき、私はここまでの長い道のりを思い返します。どれだけ探してもエドワード様は見つからず、私は心の中で苦笑しました。さすがの私でも分かっているのです。こんな遠くにエドワード様がいるはずはないと。それでも、私は諦めるわけにはいかないのです。


 地図上で見ているのと、実際見てみるのでは違い過ぎました。ここはあまりにも遠すぎるのです。それに、魔の森沿いの町は、孤児の面倒をみる余裕のない町が多かったのです。


 旦那様達が探索範囲を絞っていた理由も当時はもどかしく思い、分かりませんでしたが、今では分かります。それでも私は諦める訳にはいけません。エドワード様を何としても見つけなければならないのです。日常を取り戻すために。


 私は旅の最後の目的地、コラビの町に一縷の望みをかけて歩き出しました。


「エドワード様、どうかお待ちください。このエドワード様の専属侍女ジョセフィーナ・ジェンカーが必ずお迎えにあがります!」


----------------

コラビ周辺補足地図を掲載します。

挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ