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第324話 虹色トリュフ

 秘密の部屋を出た僕たちは、ヴァイスとスノーを迎えに行ってから調理場へ向かう。もちろんカラフルトリュフを実食するためだ。


「これは、クロエ様にエドワード様。お揃いでどういたしました?」


 調理場に入るとロブジョンが声をかけてくる。


「ちょっと味の()()をしてみようと思って、ラスクってあるかな?」


()()ですか。すぐに作らせましょう! バターのみでよろしかったですな?」


 ロブジョンさんが目で合図すると、他の料理人がすぐに作り始めた。


「すぐに出来上がりますので、少々お待ちください。ところでどのような味の実験でしょうか?」


「これです」


 ――!


 赤トリュフ、ピンクトリュフ、虹色トリュフを出すとみんな驚く。


「これは……もしかして、トリュフでしょうか?」


「その通りです。以前デーキンソン侯爵領のグロッタへ行った時に採取したのですが、さすがに色が色だったのと、数も少ないので仕舞っておいたのです」


「それを今回試すということは、何か分かったということですな」


「その通りです。資料に赤トリュフとピンクトリュフについて書いてある記述を見つけたのです!」


「それは素晴らしい! して、どのようなことが!?」


「まず、この赤いトリュフはかけた食べ物にスパイシーな香りと辛さが追加され、こっちのピンク色のトリュフはかけた食べ物に、甘い香りと味が追加されるようなんです!」


「ほう、普通のトリュフは香りだけで美味しく感じさせるのに対し、このトリュフは味もあると?」


「それが、このトリュフに味があるわけではなく、かけた食べ物の味を変化させるようなのです」


「そのようなものが?」


「エドワード、今の話は本当なのかい?」


「はい、おばあ様。これ単品では味は感じないと書いてありました」


「せっかくだから、少量で試してみましょう」


 おばあ様の顔が興味津々なので、もったいないとは言えないなと判断し、赤とピンクのトリュフを削って皿に乗せる。


 みんながひとかけらを手にすると口に運ぶ。

 

「ふむ、確かにスパイシーな香りはするけど味は無いようね……」


「クロエ様の言うとおりですな。ピンクの方も甘い香りはしますが、味は特に感じませんな」


 おばあ様とロブジョンは同じ意見のようだ。僕も口に入れてみるが、香りもほのかなので、かけた食べ物の味を変化させるほどはないように感じる。


「ヴァイスはどう?」


『その虹色のトリュフの匂いが邪魔して、匂いすら分からぬぞ』


「そういえば、採った時にもそんなこと言ってたね。ちょっと待ってね」


 虹色トリュフを一旦片付ける。


「これでどうかな?」


『うむ、大丈夫なようだ。しかし、強烈な匂いだったせいか、そこまで匂いはしないな』


 ヴァイスはそのままペロっと赤トリュフから食べる。


『なるほど、確かに口に入れるとほのかに匂いが漂ってくるな……ピンクの方も同じような感じだ』


 ヴァイスの感想をみんなに伝えると。


「ヴァイス様でも我々と同じような感想ですか。それにしても、虹色のトリュフはヴァイス様だけ匂いを嗅げるというのも不思議ですな」


 ロブジョンが不思議がっていると、ちょうどラスクが出来上がる。


「虹色を出すとヴァイスが大変なので最後に試すこととして、まずは赤とピンクをラスクに乗せて食べてみようか」


 まずはラスクの上にスライスした赤トリュフを乗せて口に入れる。


 ――!


 みんなの表情が驚きのものに変わる。


「スパイシーな香りは単品で食べたときの比ではないですね。ラスクがピリ辛でとても美味しいです」


「これは酒のツマミに合いそうね」


 おばあ様、そんなことしたらすぐに無くなっちゃいます。


「それではピンクトリュフも食べてみましょう」


 同じくラスクの上にピンクトリュフを乗せて口に入れる。


 ――!


「驚いたわね! ラスクが極上のデザートに感じるわ」


「クロエ様のおっしゃる通りですが、ここまで味が変化すると、ある意味料理人泣かせの食材ですな」


 確かにラスクにかけてこれなら、どんな食材でもデザートになってしまいそうだ。料理人が作った料理を、ある意味壊してしまうのと同じだろう。


「それじゃあ、最後に虹色トリュフを試してみようか?」


 あまり長く外に出しておくとヴァイスの嗅覚がおかしくなりそうなので、手早くラスクの上に乗せて口に入れる。


 ――!!


 香ばしい小麦の風味を感じたと思った瞬間、ガーリックバターのような味に変化して、最後には甘いラスクに変化したのだ。


「ラスクの香りと味が変化しましたね」


「あたしは、最初酸っぱいと感じたけど、最後には甘くなってエドワードが今までに作った様々なデザートを感じることができたわよ」


「えっ、そうなんですか!?」


「私はまるでフルコースを食べているかのように、味が変化いたしました」


 どうやら三人とも味の感じ方が違うようだ。


「ヴァイスはどうだった?」


『……美味い。とても美味い肉の連続だったぞ』


「エドワード様、ヴァイス様はなんと?」


 ロブジョンはヴァイスの感想が知りたいようだ。


「色々な美味しい肉の味がしたそうだよ」


「肉の味でございますか!? 全員が違う匂いと味を感じるとはいったい……」


「その人が望む味とか? 欲している味を色々な種類で再現しているとか?」


「望む味でございますか?」


「あたしはさっきのピンクトリュフのせいで、もっとデザートが食べたくなったわ」


(ワレ)はもちろん肉を食べたいにきまっておる』


 だよね? ヴァイスとおばあ様でその結論に達したからね。


「なかなかおもしろいトリュフではありますが、どれも料理人としてはあまり使いたくない食材ですな」


「そうだね。せっかく作った料理の味まで変えるのはやりすぎだよね」


「ここではそう感じても仕方がないわね。料理には使えないけど、野営の時など味気ない食事が続いた時には使えるんじゃないかしら?」


「そういう使い方として、昔は人気食材だったのかもしれないですね」


「そうね。料理には使えないから、エドワードが持ってなさい」


「分かりました」


 空間収納庫に格納しておくが、使うことがあるのかは不明だ。


 調べるまで時間がかかった割には食材としての価値が低いのは残念な結果だが、それもヴァルハーレン領の食事が美味しいせいなのだろうなと思ったのだった。

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