SS クリスマス特別編
カクヨムでちょうどクリスマスと重なったときのSS特別編です。
位置的には307.5話ぐらいになります。
窓から降っている雪を眺めている。降りしきる雪はただ地面に落ちるだけではなく、風に揺られたり舞い上がったりしてダンスを踊っているみたいで、ずっと見ていても飽きることはない。
「エドワード様、エミリアが参りました。また窓を開けているのですか? 風邪を引かれては……私が看病するので問題ありませんね」
ジョセフィーナが僕を呼びに来た。そういえば、風邪って引いたことないな。
「エミリアが? そういえば、ニルヴァ王国から帰ってきてから、まだ会ってなかったね」
◆
ジョセフィーナと一緒にエミリアさんの待つ部屋へ移動する。
「やあ、エミリア。久しぶりだね」
「エドワード様、ご無沙汰しております。ニルヴァ王国での活躍はお聞きしていますよ」
帰ってきて数日しか経っていないのになぜだ……。
「どんな話か気になるけど、今日はどうしたのかな?」
「実はご相談がありまして」
「相談? そんなに言いづらい相談なの?」
「……孤児院の子たちについてなんですが」
「孤児院って、ローダウェイクの?」
「はい、実は冬に入ってから孤児院から申し出がありまして、援助する代わりに孤児院の子たちに雪かきなどモイライ商会の仕事を手伝ってもらっているのです」
「孤児院からそんな申し出があったの?」
「エドワード様がニルヴァ王国へ行かれている最中だったので、どうしようか迷いましたが、孤児院も切羽詰まった様子でしたので、私の一存で申し入れを受けました」
「へー、そうなんだね。エミリアが決めたのなら全然問題ないよ。でも、そんなに切羽詰まった感じなの? 父様に頼めば援助すると思うんだけど」
「もちろん、十分な支援は頂いているそうなんですが、子供たちが祝福の儀を受けた後に渡す、旅立ちの支度金は孤児院の子たちが働いたお金を渡しているそうなんです」
「そういえば、僕もメグ姉から貰ったな」
「通常は冒険者ギルドや商人ギルドから仕事を貰うのですが、今年の冬は仕事が激減して、このまま行くと春になった時、子供たちに渡す分が減ってしまい、困っているとのことでした」
「仕事が激減した理由は分かっているの?」
「エドワード様が作られたマグマスライムローラ―で除雪作業が格段に楽になったことにより、商人ギルドからの依頼が減ってしまったようです」
僕のせいだったのかい!
「なるほど、そんな仕事があったとは、知らなかったとはいえ、可哀想なことをしてしまったみたいだね」
「マグマスライムローラ―を使う事ができない、冒険者ギルドからの仕事が残っていると思っていたのですが、今年はパレードで散財した冒険者が多かったようで、孤児院まで仕事が回ってこないのも原因の一つのようです」
「どっちにしても、僕が原因なんだね」
「いえ、エドワード様が気にすることは何一つございません。ただ、商会の手伝いによる駄賃は孤児院に直接支払いますので、頑張っている子供たちに何かあげたいと思いまして」
「えっ!?」
エミリアさんが商売以外に目を向けるなんて一体どうした!? もしかして母性が! ……目覚めてないな、いつも通りエトルタの断崖のようにまっすぐだ。
「私がいつもと違うのは分かっているのです、それでも、エドワード様と同じぐらいの子が頑張っているのを見るとつい……」
こっちの原因も僕なのか……。
「何かあげるのは全然構わないんだけど、僕に相談するって事は、何か特別な物を?」
エミリアさんは言い出しにくいのか、少し躊躇うも、決心したのか話し始める。
「エディ君の廉価版をさらに廉価させた物は作れないでしょうか?」
「僕のぬいぐるみの廉価版をさらに廉価……というか、僕のぬいぐるみをプレゼントにするの?」
「はい、孤児院の子たちはモイライ商会に飾ってある、エディ君に手を合わせるようないい子たちなんですよ。あまり高価なものは色々とまずいので、限界まで価格を抑えたものを作れないかと思いまして」
モイライ商会に飾ってあるというのも初耳なんだけど、そっちは諦めた方がよさそうか。
「限界まで価格をね……」
「なんとかなりませんか?」
ぬいぐるみをさらに安く……布の面積が少なければ安くすることができる。UFOキャッチャーによくあるような、チャームサイズぐらいなら安く作れるな。パーツもフェルトなどで簡素化すれば更に安く作れそうだ。
「サイズを手のひらサイズにして、パーツも簡素化するというのはどうでしょうか?」
「手のひらサイズで簡素化ですか……大きさは分かりますが、簡素化がちょっと分からないですね。セリーヌさんのところに行きましょう!」
◆
ということでカトリーヌさんの工房にやってきた。カトリーヌさんは母様の所に行ってるらしく不在だ。
「というわけなんですけど、セリーヌさん作れますか?」
「作るのは簡単だけど、アレ以上どうやって簡略化するのかしら?」
「そうですね、ちょっと待ってください」
簡略化した原案を紙に描いて見せる。
「なるほどね、髪もベッタリした感じにするのね。これならすぐにできるわ」
セリーヌさんは生地を持ってくると、いきなりハサミで切り始め、どんどんパーツを切り出していく。そういえば、セリーヌさんがぬいぐるみを作るところを見るのは初めてなのだが、作っている真剣な眼差しと手付きは間違いなく職人の動きだ。
「はい、できたわよ! ……これはこれで可愛いぬいぐるみね」
30分ぐらいで、ぬいぐるみを作り終えたセリーヌさんは、簡素化されたエディ君を気に入ったようだ。
「これが、廉価版のさらに廉価版のエディ君ですか……思ったよりも可愛いですね。エドワード様、早速登録していただけますでしょうか?」
「分かったよ」
エディ君を登録して、能力で出してみる。
「あら、エディ君。凄く可愛いのを作ったのね? 私も欲しいわ」
「エドワード、私の分もお願いね」
能力をつかって出したところで、カトリーヌさんと母様、あとメグ姉もやってきた。タイミング良すぎない?
「ソフィア様の勘の通りでしたね」
「言った通りだったでしょ?」
ぬいぐるみの完成を察知したのか!? 母様の勘、僕も欲しいんですけど!
「これを子供たちに届ければきっと大喜びです!」
エミリアさんも満足そうなので、これで解決かな……冬に子供たちへのプレゼントってクリスマスみたいだな……。
もちろん、この世界にクリスマスなんてものは存在しないが、トナカイのカザハナがいるんだからアレができそうだ。
「ねぇ、エミリア。そのプレゼントは僕が配ってもいいのかな?」
「エドワード様自らですか!? それは構いませんが、理由をお聞きしても?」
「ウルスに聞いたんだけど、冬に少し変わった格好でプレゼントを届けるお話があるらしいんだ」
「変わった格好というのはどのような?」
「ウルスに聞いたのをイメージとして描いてみるね」
紙を出し、ソリに乗ったサンタさんの格好を描いてみんなに見せる。
「これをエディが着るの? 凄くかわ……似合うわよ!」
メグ姉、今可愛いって言おうとしなかった?
「エドワード、やってみなさい。ハリーには私から言っておきましょう。カティ、すぐに作れるかしら?」
「お任せください。すぐに取り掛かります」
そして、話は大きくなり、ソリを改造したりと、すごい勢いで話が進んでいった。
◆
「それでは、エドワード様お願いします」
エミリアさんに呼ばれたので、みんなの前に出ていく……もちろん、サンタの衣装で……。
――おおっ!
――キャァー!
「エディ、凄く可愛い!」
「エディ様、可愛いです!」
「さすが、我が孫。何を着させても似合う!」
「ちょっとアルバン、あたしの前に出ないで! エドワードが見えないじゃない!」
……ちょっとしたファッションショー? 出発前にみんなが見に来たので非常に恥ずかしい。
ちなみに顔を少しでも隠そうと、サンタの白髭を作ったのだが、可愛くないと母様に没収されてしまったのだ。
「それでは、行ってまいります! カザハナ、お願いね」
みんなに見送られながら、カザハナにお願いすると、嬉しそうに走り出す……ディテールにこだわった結果、オープンの馬車になったのでちょっと寒いけど。
「エドワード様ぁー。寒すぎます」
走り出してすぐ、隣に座るエミリアさんが悲鳴を上げる。しょうがないな。
透明にしたマグマスライムでドームを作って風を凌ぐ。
「死ぬかと思いましたよ。これはマグマスライムですか。このような使い方もできるのですね」
エミリアさんはマグマスライムの使い方に興味津々で、ブツブツと独り言を言い始めた。何でも商売に繋げようとするところは感心するが、目的を忘れないで欲しい。
カザハナが孤児院の前に到着すると、子供たちと世話をしているシスターたちが外で待っていた……エミリアさんの方を向くとブンブンと首を振るので、エミリアさんの指示ではないようだ。
「エドワード様。この度は子供たちのためにお越しくださりありがとうございます」
代表してシスターがお礼をいう。
「出迎えありがとう。外は寒いから中に入ろうか」
とりあえず孤児院の中に入る。コラビの孤児院と違い、建物の造りはしっかりしているようだ。
「みんな、メリーフノスマス!」
――メリーフノスマス!
僕が声を掛けると、子供たち……シスターまで大きな声で返してくれる。なかなか気持ち良いな。
『メリーフノスマス』は事前に伝えてあったのが、しっかり伝わっていたようで安心した。この世界にキリストは存在しないので『メリークリスマス』では変なのだ。『メリー』は楽しい。『クリス』がキリスト。『マス』がミサを表しているということで、『クリス』をこの世界の女神の一柱、宝を司っているフノス様に変更することで、なんとなく体裁を整えたのだ。
「それでは、皆さん。モイライ商会のお手伝いを一生懸命に手伝ってくれてありがとう。そんな頑張ってくれたみんなに、エドワード様からプレゼントがありますので、ここに小さい子から順番に並んでください!」
エミリアがそう言うと、みんな一斉に並ぶ。大きい子が小さい子を誘導してあげるところなど、なかなか微笑ましい光景だ。
「はい、メリーフノスマス!」
「メ、メリーフノスマス!」
一人ひとりにプレゼントを渡していく。プレゼントはマフラーで包んであり、エディ君チャーム、ジンジャーブレッドを入れてある。受け取った子は『ありがとうございます!』と大きな声でお礼を言うと、次の子に順番を譲る。
子供たちに渡し終えると、なぜだかシスターたちも並んでいる……これはプレゼントが欲しいのだろうか?
「メリーフノスマス!」
「メリーフノスマス!」
僕の掛け声より食い気味で返ってくるので、プレゼントを渡すと、恥ずかしそうにお礼を言うと、子供たちのところへ駆けて行く。
こうして全員にプレゼントを渡し終えたあとは、エミリアから普段より少しだけ豪華な温かい食べ物を渡し、孤児院を後にしたのだった。
◆
帰りの道中。
「エドワード様。私の我儘を聞いてくださりありがとうございました。商売以外でこんなにワクワクしたのは初めてでした!」
エミリアは興奮冷めやらぬ様子でお礼を言ってくる。
「それは良かったよ。はい、メリーフノスマス!」
「メ……メリーフノスマス?」
「今回、頑張ったエミリアへのプレゼントだよ」
「ありがとうございます!」
エディ君チャームは入れてないが、子供たちにあげたマフラーより高級な素材にしてある。しかし、エミリアはマフラーを広げると。
「エドワード様、エディ君が入っていません……」
いや、そんな絶望したような目でみないで欲しい。
「そんなに欲しかったの?」
「もちろんです! お守りにいいサイズですよね!」
お守りって、使い方が違うじゃん。
「わかったよ」
エディ君チャームをあげると嬉しそうだ。この後、城のみんなにもあげようと思っていたのだが、エディ君チャームを付けるか難しい選択に悩むのだった。
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