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第320話 祝福の儀

 王都での予定が全て完了したので、ローダウェイクへ帰還することになる。今年7歳になる子を持つ貴族は、そのまま王都に残り祝福の儀を受け、そうじゃない貴族は、自領の祝福の儀を見て良い人材を探すことになるそうだ。先日のお茶会で一緒だったフラムは7歳になるので、まだしばらく王都に滞在するそうだ。


 ◆


 ローダウェイクに帰ると、母様たちに結婚の儀の報告をする。母様はウエディングドレスを見ることができなかったのをかなり悔しがっていたが、お腹の子が優先なので仕方がないだろう。


 みんなにはアリシアと仲直り? したことを説明しておいた。おじい様は、ハットフィールド公爵がアルトゥーラで行っている改革の話を、興味深そうに聞いて『あの、アルバートがそのようなことを……』と言っていたのが印象的で、昔のハットフィールド公爵からは、想像もつかない出来事だったらしい。


 そういえば、僕たちが王都へ行っている間にニルヴァ王国から使者が来たそうで、スレーティー伯父上は無事に王族になれたとのことだった。跡継ぎについてはこれから頑張ってほしいところである。


 ◆


 今日は父様とローダウェイクにある教会で祝福の儀を見に来ている。優秀な人材を確保するためには必要なことらしい。コラビの町にいた頃は実際に兵士になった子もいたので、孤児たちにとっては大イベントだ。

 

 ジョセフィーナに聞いて判明したのだが、コラビではメグ姉が文字の読み書きをみんなにある程度……僕にはしっかりと教えてくれたので、困ることはなかった。

 しかし、一般的には識字率が低いせいで、ステータスを見ても能力を読むことが出来ないのだとか。授かった能力を神父様が読み上げるのは、読めない人のためでもあるらしい。ほとんどの市民は、農家に生まれればどんな能力を授かろうが農家で一生を終える。そうならないよう、領主は祝福の儀を見て使えそうな能力を見極める必要があるのだとか。基本的にはアレンが授かった剣術などの戦闘系の能力や、メアリーが授かった水の魔術のような魔術系の能力を授かった人を探していたらしいのだが、今回、父様からは気になる能力の持ち主は召し抱えてもよいと言われているので、生産系の能力がいたら雇いたいと思っている。


 集まった多くの人を眺めていると、神父様が祝福の儀を始める。今回は騎士家からスタートのようだ。騎士家の人はやはり剣術など戦闘系の能力が圧倒的多い。ちなみに一般の人が授かる能力で多いのは男性が【健康】で、女性が【元気】だそうだ。どっちも同じように感じる。実際二つの違いはよく分からないらしい。それにしても、コラビの孤児院にいた子たちは、人数のわりにはレア能力が多かったように感じるのは気のせいだろうか。


「〇〇はトーゲイの能力を授かりました。〇〇はステータスを確認するように」


 ん!? トーゲイってなんだ? みんな特に反応してないし、授かった子もいたって普通の反応だな。


「父様、トーゲイというのは、どんな能力なんでしょうか?」


「ああ、たまに見かける能力だけど、よく分からない能力の一つだよ」


「よく分からない能力なんですね」


 解明されてない能力なのか……トーゲイってもしかして陶芸のことなんじゃないだろうか? この世界……いや、この国の焼き物のレベルはとても低いので、春になったら土でも探そうかとラーメンどんぶりの時に考えたのだが、これはもしかしてチャンスかもしれないな。


「父様、陶芸の能力にちょっと興味があります。ウルスの話では、土を捏ねて器や壺などを作る能力に、似たような呼び名のものがあるそうです」


「土を捏ねて器を作る能力には土師(はじ)というものがあるけど、それとは違うのかい?」


 どうやら、既に存在していたらしいな。確か土師は埴輪などの土器を作る人のことだったかな。しかし、ここで引き下がるのはもったいない。


「ウルスが言うには、食器に使用できる器なども作ることができるようなのです」


「――! それは本当なのかい?」


「はい、トーゲイと陶芸が同じ意味なら可能という話です。ただ、土探しから必要になると思いますので、物ができるまでは、かなりの時間がかかるかもしれませんが」


「問題ないよ、確か去年の能力の記録もあったと思うから、何人か雇えるよう交渉してみよう。他には気になった能力はなかったかい?」


「そうですね。種まきという能力の人がいましたが、何か特別な仕事はしているのでしょうか?」


「タネマキかい? そういえば、さっき一人いたな……あまり良い印象のない能力ではあるね」


 えっ!? 思った能力と違ったのかな。


「良い印象じゃないというのは?」


「そうだね……女遊びの激しい能力だという噂なんだ」


 そっちの種まきかい! そんなしょうもない能力あるのか?


「その能力は検証されているのでしょうか?」


「いや、能力が能力だけに検証するのもちょっとね」


「父様、その種まきを授かった家系の職業が農業なら、作物の種を蒔くとは考えられないでしょうか?」


「ふむ……その可能性は大いにありえるね。基本的に能力の研究というのは貴族がするから、どうしても戦闘系や魔術系に偏ってしまう。一般市民の能力についてはほとんど解明されていないのが現状なんだよ。もし作物の種を蒔く能力だったとしたら、どういった効果があると考えられるかな?」


「そうですね。ただの思いつきですが、能力を持った人が種を蒔くと、成長が早いとか病気になりにくいとか、豊作になりやすいとかでしょうか」


「なるほど……リスクもないから試してみる価値はありそうだね」


「それがいいと思います。もしかしたら、他にも本当は使えるんだけど、不遇な扱いをされている能力って結構あるのかもしれないですね」


「それはありそうだね。毎年ヴァルハーレン領での能力は記録しているから、帰ったらチェックさせてみよう」


 祝福の儀は問題なく終了し、陶芸の能力の持ち主とも交渉してくれるそうなので、陶芸に適した土を探さなければならないなと思うのだった。

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