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第318話 王族からのお茶会

 モイライ商会のプレオープンから数日間、貴族向けのプレオープンも無事済んだので、正式にオープンとなった。プレオープンでは予想以上に商品が売れてしまったため、能力を使い急遽増産し、リュングとロヴンにも頑張ってもらったのだ。


 正式なオープンも開店前から凄い人だかりができたらしく、急遽整理券を作って対応したらしい。


 王都入りしてからモイライ商会のオープンまでの間、お茶会への誘いがたくさん来ていたそうだが、モイライ商会の件があったので全て断っていた。しかし、当然断れないものもある。


 王家からのお誘いだ。クリスタ第三王女からお茶会の案内が来てしまっては、断りようがない。しかも、迎えの馬車まで来るというVIP待遇ぶりだ。


 王城に到着すると、お茶会の場所に案内される。庭園でするものだと思っていたのだが、どうやら今回は違うらしい。


 部屋に案内され、中に入ると既にみんな席についていて、空いてる席は一つなので僕が最後のようだ。


 メンバーはクリスタ殿下に宰相家のステラ、公爵家のロゼとフラム。そして、ハットフィールド公爵領以来会っていなかったアリシア嬢がいた。


 アリシアは僕を不安そうに見ている。まあ、メイドが無礼を働いた相手が、大公家嫡男だったら仕方がないのかもしれないな。おじい様からハットフィールド公爵が謝罪を入れたがっているが、断ったという話をオークションの後に聞いている。それ以来音沙汰がなかったので、諦めたのだと思っていたのだが違ったようだ。


「クリスタ殿下。本日はお招きいただきありがとうございます」


「エドワード様、殿()()は余計ですわ。モイライ商会でお会いしていますが、ゆっくりお話しする機会がありませんでしたので、お茶会を開きましたの。エドワード様はなかなかお茶会に参加なされないとの噂でしたので、心配しておりましたが、本日はお越しくださってありがとうございます」


 そんな噂が流れているのか。もう少し参加するようにしよう。


「今回は、モイライ商会のオープンでバタバタしていたので、なかなか参加する機会が無かっただけですよ。ここへ来てようやく落ち着きましたので、参加させていただきました。ところで、今回は珍しい顔ぶれですね」


「そうですね。フラムとは、バーンシュタイン公爵家が貴族派を離脱した後の食事会で、エドワード様の話をしたところ仲良くなりましたのよ。本当はいつものメンバーで集まろうかとも考えたのですが、バージルお兄様からアリシアを誘って欲しいとお願いされたのです」


「バージル殿下からですか?」


「はい、お兄様はアルバートお兄様の力になろうと、国王派以外とも交流していまして、その中でもハットフィールド公爵家のフリッツ様と仲が良いのです」


 フリッツというと、アルトゥーラを脱出した後に出会ったイケメンのことだな。


「そうだったんですね」


「お兄様から事前に経緯は聞いていたのですが、そのままエドワード様にご紹介してもよいものか判断がつきませんでしたので、アリシアとは事前にお茶会を開き話を聞いて仲良くなりました。エドワード様には思うところがあるとは思いますが、アリシアにもチャンスをあげたいと思いまして会を開かせていただきました」


 おじい様が謝罪を断った後、話が上がらなかったのですっかり忘れていたが、グイグイ来るアリシアは若干苦手だけど、嫌がらせをしたのはメイドさんなので別に恨みがあるわけではない。結果的にいえば、アリシアと出会わなかったらミラブールの開発や王都での出会いなどもなかったんだよね。


「エドワード様が大公家の方でなかったとしても、命の恩人にするべき態度ではなかったと反省しています!」


 アリシアは突然立ち上がると、謝り出した。


「アリシアが悪いわけではないので、そこまで謝らなくてもいいですよ? まあ、あのメイドさんには思うところはありますが、裏を返せば、それだけハットフィールド公爵が慕われているということにもなりますし」


「いえ、無理矢理アルトゥーラに連れて行っておきながら、あの行為は許されません。父が帰って来たのち、あの件に加担した者たちは死罪になりました」


「死罪ですか!?」


「はい、結果的に身分を隠されていたとはいえ、大公家嫡男である事実は変わりませんので。商人ギルドのギルド長やエドワード様に無礼を働いた者たちも、調査したところ、数多くの不正などにもかかわっていたことが発覚し、同じように処理されました」


「商人ギルドのトップもですか、大混乱になったんじゃないですか?」


「そうですね。エドワード様の件でギルド長の対応に腹を立てた、エミリアという副ギルド長が辞めてしまい、既に混乱していたので調査しやすかったと父は言っていましたが、今も混乱は続いていますね。今回の件を発端にアルトゥーラでは大規模な調査が行われ、かなりの数の不正が発覚いたしましたので、父も頭を抱えておりました」


 うーむ、エミリアさんは現在ローダウェイクにいるので、会うことはないとは思うけど、隠すのもな。

 

「今の話に上がったエミリアですが、ローダウェイク出身だったようで、現在はモイライ商会で働いてもらっています」


「そのようですね。父に手紙が来て経緯が書いてあったと聞いております。仕事ができる人だったので、兄はかなり悔しがっていましたね」


 さすがエミリア! そういう根回しはしっかりやってたんだな。てっきり遭遇したくないから、王都に来ないんだと思ってたよ。


「それを説明するために、クリスタにお願いを?」


「そうじゃないんです! 最初に助けてもらった時はボロボロの恰好でしたので、少しでも綺麗なドレスを着て、しっかりしたお礼を申し上げたかったのです」


 アリシアはそう言うと、優雅に身をかがめ、礼儀正しく挨拶した。


「エドワード様、わたくしをオークの集落から救っていただいて感謝しております。本当にありがとうございました」


 かなり練習したとおもわれる、その一挙一動には磨き抜かれた美しさがあった。彼女の洗練されたカーテシーは、見る人を惹きつける魅力を放っていて、この場にいるみんなが見入ってしまっている。彼女はこのお礼をするために頑張ってきたのだと思うと、申し訳なく思ってしまうな。


「こちらこそ、お礼も聞かず抜け出してしまって申し訳ないことをしましたね。アリシアのお礼はしっかり受け取りましたので、これからは仲良くしてくださいね」


「ありがとうございます!」


 アリシアはその一言を最後に泣き出してしまい、お茶会は一時中断となってしまう。

 

 オークに捕まっていた時でさえ、必死に侍女たちの名前を叫んで気丈に振舞っていた彼女の泣き顔を見て、あの時は泣きたいのを我慢して、無理矢理明るく振舞っていたのだなと思うのだった。

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