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第315話 モイライ商会の店舗

 ドレスも無事納入したので、本日はモイライ商会を見に来た。


「これが完成したモイライ商会なの?」


「その通りでございます」


 ビアンカが答える。


「父様、少し……いや、かなり大きすぎませんか?」


「そうだね。前に見たときよりも、さらに一店舗分広がっているのかな」


「ハリー様の仰る通りでございます。モイライ商会の建設最中に夜逃げしたようで、王家で接収したのち、モイライ商会の増築に回したようです」


 これが噂に聞く、ウェチゴーヤ商会の影響なんだろうか。以前見たときには隣の店舗を吸収した形だったのだが、完成している建物は反対側の店舗も吸収したようだ。


「これだと、商品がかなり足りなかったんじゃない?」


「仰る通り、三階建てなのですが、三階を現在封鎖しています。それでも売り場がスカスカなので、エドワード様が来るのを心待ちにしておりました」


 それって、僕じゃなくて商品だよね?


「それでは、中に入りましょう」


 ビアンカが扉を開けと、20人ぐらいの従業員が左右に整列して通路ができており、奥にはレジらしきカウンターも見える。


 ――いらっしゃいませ!

 

 ビアンカの後をついて従業員がお辞儀する間を通り、レジカウンター付近まで来るとビアンカが振り返ったので、僕たちも振り返る。


「皆様、おはようございます!」


 ――おはようございます!


 一糸乱れぬその挨拶は、軍隊のようだ。


「店舗の開店が近づいて来ています。この度、会頭のエドワード様とお父様である大公様が視察にいらっしゃいました。あなたたちの行動はモイライ商会の従業員としてだけではなく、フィレール侯爵、ヴァルハーレン大公家の末端としても見られているものと心得て行動しなさい!」


 ――はいっ!


 ビアンカはいったいどんな従業員研修をしたんだ? ローダウェイクの従業員より凄いような気がするのは気のせいだろうか。


「それでは、エドワード様。従業員に一言お願いいたします」


 えっ!? 聞いてないんだけど!


「モイライ商会会頭のエドワード・フィレール・ヴァルハーレンです。ここ王都での店舗はヴァルハーレン領以外の店舗として初めての出店となり、皆の働き次第ではその他の地域へ出店することになり、その際はこの中から店を任せる人が出ると聞いています。最初のお客様は貴族を招く計画をしていますが、皆の応対を見れば問題ないと思っていますので、このままオープンに向けて頑張ってください」


 ――はいっ!


 涙を流している人たちはいったいどういうことだ!? ビアンカの指導方法が気になるので、今度聞いてみることにしよう。


「エドワード様ありがとうございます。大公様、像の方をこちらにお願いいたします」


 そう言ってビアンカが指示したのはレジカウンターの左右にある謎の石造りの台座。何だろうと思っていたが今のビアンカの言葉で分かった。というかこんな所にまで設置するのか?


 父様は台座の上に収納リングから僕の像を取り出しそれぞれ設置する。


 ――おおっ!


 驚くのはともかく、祈るのは止めて!


「それでは店内を案内いたしますが、その前にエドワード様。持って来ていただいた商品をお願いできますでしょうか?」


「分かったよ。どこに出そうか? 見た感じ武器関係は二階で出した方がよいのかな?」


「ありがとうございます。おっしゃる通り、武器関連は二階にして、それ以外はこちらの部屋でお願いいたします」


 レジカウンター奥の部屋が倉庫になっているようで、部屋の中に商品を出すと、従業員たちは一斉に動き出し商品の整理を始める。


「ビアンカ、これが目玉の美容液や新しい石鹸などね」


「ありがとうございます。これらは状況を見ながら販売したいと考えております」


「そうだね。でも、最初に招く貴族で売り切れてしまいそうだけどね」


「最初に貴族を招かれるのでしたら、間違いございませんね。それでは、案内いたします」


 レジカウンター近くは従業員の邪魔なので、少し移動すると。


「まず一階ですが、見ての通り、衣料品エリア、アクセサリーエリア、雑貨エリアに分かれております」


「美容液は雑貨エリアになるのかな?」


「石鹸は雑貨エリアになりますが、美容液など一部の品は、奥の別室にて販売しようと考えております」


「別室?」


「はい、たとえばですが、来店回数が多いとか、たくさん購入をされているお得意様に優先して販売するのはどうでしょうか?」


 なるほど、VIPルームみたいな感じにするんだな。並ぶのが早い順や、くじにしても、結局並ぶ人たちで溢れかえってしまう。お得意様システムにすれば、売り上げは上がるし、転売目的の客も減らせるかもしれないな。


「いいんじゃないかな。ローダウェイクと違って王家からも購入に訪れるだろうから、そういう特別な部屋はいい案だと思うよ」


「ありがとうございます。それではこのまま進めさせていただきます」


「ねえ、ビアンカ。ぬいぐるみはどこで売るのかしら? 一つも置いてないじゃない」


 セリーヌさんはぬいぐるみが一切ないことを指摘する。確かにビアンカが最初に持って行った商品にはぬいぐるみが含まれていたが、置いてないな。二階は武器関係と言っていたから違うだろうし。三階はまだ並べるほどの商品もないと言っていたから、VIPルームにでも並べるのだろうか。


「セリーヌさん、ご心配なく。商品が少なければ、このフロアに並べようと考えておりましたが、十分に補充されましたので予定通り三階の特別室で販売したします」


「だったら、大丈夫よ」


「いや、大丈夫じゃないよ。特別室っていうのは?」


「既に商品は並べてありますので、見に行きましょう」


 二階の武器エリアでも商品を出して、さらりと説明を受けると、そのまま三階へ上がる。二階には冷蔵庫など、大型の道具の展示もするようだ。


 三階の半分は部屋になっており、スタッフルームなどがあり、僕専用の会頭部屋もあるとのことだ。もう半分は販売スペースなのだが、まだ何も用意されていない。ビアンカの話では今回持ってきたグランタオルや寝具などを販売するのだとか。そして、問題のぬいぐるみエリア。簡単な間仕切りで仕切られたその一角には所狭しとぬいぐるみが飾られている。


「ねえ、ビアンカ。どうしてシュトゥルムヴェヒターのぬいぐるみがここに?」


 量産してないはずの、シュトゥルムヴェヒターのぬいぐるみが飾られている。


「あれは、エドワード様の作られた物をソフィア様からお借りして、セリーヌさんに作ってもらいました」


 近づいてみると、確かに僕の作ったものとは明らかに違うな。


「悔しいけど、エディ君の作ったヤツの方がいい仕上がりなのよね」


 セリーヌさんが悔しがっているが、母様に渡したやつはスキルで登録したのを出したので、元々僕が作ったのより綺麗な仕上がりになっているのだ。


「シュトゥルムヴェヒターも販売するということですか?」


「そのつもりですが、大きいせいで値段が高額になってしまったため、少量しか用意しておりません」


 スキルで出す分には関係ないが、本来はたくさんの綿を使うからしょうがない。

 

「まさか、ぬいぐるみメインの売り場を作ると思ってなかったよ」


「エドワード様、ローダウェイクでも様々な貴族が購入に訪れているのです。王都に出店すれば、今まで買いに来ることを躊躇っていた、他の派閥からも購入に訪れることが予測できますので、専用の売り場を設けるのが自然な流れかと」


 なるほどね、確かに王都なら全ての貴族が出入りするので、ウェチゴーヤ商会が無くなった今、他の派閥も買いに来るだろう。


 その後、奥の部屋などの説明を受けたあと、中級商店街の店舗も案内してもらい、いつでもオープン可能だということを確認できたのだった。

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