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第309話 春の訪れ

 雪の降る日が減り、暖かい日が増えると、雪は次第に解けてなくなり、町に活気が戻って来て春の訪れを感じることができる。


『エディ様! 何か引いてます!』


 どうやら、エリーの竿に魚がかかったようだ。


 今日はエリーとノワールの三人で釣りに挑戦している。エリーがパーティーで食べたフォーントゥナーのステーキをもう一度食べたいということで、プレジール湖で釣りをすることになったわけだが、パーティーのとき以来フォーントゥナーは釣れていない。


「エリー、竿についているつまみを回して」


『こうでしょうか!?』


「そうそう、そんな感じ」


 エリーがリールを回すと、糸がスルスルと巻き取られ、水面まで魚が上がってきた。


「エリー様、これはトラウトですな」


 トラウトを針から外しながら船長のジャックが答える。


『エディ様のとは全然違いますの……』


 エリーが肩を落とす。フォーントゥナーではないが、40センチサイズのトラウトなのでそこそこ大きい方だ。レギンさんがリールを魔改造してしまったので、エリーでも軽く引き上げてしまうんだよね。


「あれ以来、誰も釣れていないので簡単には釣れませんね。でも、この魚も大きいサイズだし、美味しい魚ですよ」


『美味しいのですか?』


「ええ、エリーたちはよくレストランに来ていると聞いていますが、魚料理はその魚を使っている可能性は高いですよ」


『このお魚も美味しかったのですね!』


 トラウトが美味しいと分かったエリーの顔に花が咲く。この後、エリーはたくさんのトラウトを釣り上げ満足そうにしている。

 



「エドワード様、私の方にも何かかかりました!」


 ずっと当たりのなかった、ノワールにもようやく当たりがきたようだ。


「ノワールも、ゆっくりハンドルを回してください」


「ゆ、ゆっくりですね?」


 いつも無表情なノワールだが、デザートを食べる時と、こういう時の慌てている姿は見ていておもしろい。

 

 ゆっくりリールを回していたノワールが急に引っ張られる!


「キャッ!」

「ノワール!」


 ノワールが船から落ちないように抱きしめて、僕も一緒に落ちないように糸で固定する。


「エッ、エドワード様!?」


「ノワール、よそ見をしないで! この引きはもしかしたら、フォーントゥナーかもしれません!」


「エドワード様! 船体が引っ張られています! 例のやつをやっちゃってください」


『ノワールが大変です! ピンクです! 凄い量のピンクがノワールから溢れています!』


 船長のジャックが電流で仕留めるように催促する。エリー、ノワールの顔が真っ赤になっているのは分かっているから、言わないであげてっ!


 エリーはどうやら、人の感情などを色で見ることができるらしく。声を失ったのもそれが原因だとエリーが教えてくれた。


 最近はエリーから相談を受けて、たまに能力の研究に付き合ったりもしている。実験体のノワールには気の毒だが、ピンクの色がどんな色なのかは、既に把握済だ。


 色の組み合わせ的には、全てではないが、地球上でいうところのオーラの色になんとなく当てはまるような気がする。


 ちなみに、声を回復できないものか、ヒール除菌プラスEXで試してみたが回復することはなかった。菌や病気などではないのだろう。声を出せなくなった原因からすると、呪いのようなものではないかと考えている。まだまだ、ヒールは改良できるのかもしれないな。


 あまり時間をかけてもノワールが可哀想なので、糸に電流を流して気絶させる。釣り糸は既にアラクネーの糸に交換してあるので、いつでも電流流し放題だ。


『ノワール、凄いです! 大きいです!』

「ノワール様、見事なフォーントゥナーでございます」


 ノワールが釣り上げたのは3メートルほどのフォーントゥナー、前回の5メートルには及ばないが、それでも大きいサイズにはちがいない。


「パーティーの時以来、全く釣れなかったのに、ノワールやりましたね!」


 そう言って、ノワールの顔を見ると、さっき見たときよりも赤くなった?


『エディ様、大変です! ノワールから見たこともないような色がいっぱい溢れています!』


 エリーの声はノワールにも聞こえているからね?


「ノワール、すみません。落ちそうだったので、思わず抱きしめてしまいました」


「いえ、ごちそうさまです……あっ!」


 ノワールは返事に失敗したようだ。頭から湯気がでそうだな。

 

『ノワールも、もう子供ではないのですから、そろそろ慣れたらどうですか?』


 『も』ってエリーはまだ、祝福の儀受けてないでしょうが。大体、初めてなんだから、慣れるほうがおかしいよ?


「だって、エドワード様が、急に熱い抱擁をなさるから……」


 抱擁はなさってないな。湖に落ちるのを未然に防いだだけなんだけど。


『王城で異形から助けてもらった時は、ノワールの方から抱きついていました』


「――っ!」


 ノワールは思い出したのか、さらに? 顔を赤くする。茹蛸のようだという表現がぴったりな感じだ。王城の時はエリーの叫び声で駆けつけたんだけど、エリーは意外と余裕あったのだろうか?


 今のうちに、フォーントゥナーに止めを刺して、空間収納庫に仕舞っておく。フォーントゥナーの解体はロブジョンさんたちでは大変なので、ウルスに切り分けるように頼んでおいたので大丈夫だろう。


 目的のフォーントゥナーをゲットしたので城へ戻ることにする。ノワールとエリーは何か話しているが聞かないことにする。エリーの声は視覚できる範囲なら普通に会話できることが分かり、便利だと思っていたのだが、ひそひそ話もエリーの声だけ丸聞こえなので少し困る。


 ◆


 城の船着き場に戻ると、家令のルーカスが待ち構えていた。フォーントゥナーを釣りに出掛けたので、釣り好きとしては結果が気になるのだろう。


「エドワード様、お早いお帰りですが、もしかしてフォーントゥナーが釣れましたかな?」

 

「ええ、ノワールが3メートルのフォーントゥナーを釣り上げました」


「それは素晴らしい! 旦那様には私の方から報告いたしますので、エドワード様はそのまま調理場の方へお願いできますでしょうか?」


「分かったよ。ノワールとエリーはルーカスと一緒に父上の所に行ってもらえるかな。そこにリヒト男爵もいると思うから」


『嫌です! エディ様と一緒がいいです』


「畏まりました。それでは、お二人はエドワード様と一緒にお越しください」


 そう言って、ルーカスは去っていった。


「ルーカスさんには、エリーの声が聞こえたのかしら?」


 ノワールが不思議そうに呟く。


「いや、聞こえてはないと思うよ。エリーの仕草や表情から読み取ったんじゃないかな」


『あの、お爺さん凄いです!』


「そういった、能力なんでしょうか?」


「うーん、多分だけど。長年の経験からくる勘じゃないのかな」


「勘ですか……大公家ともなると、家令も一流なのでしょうか?」


「どうなんだろうね? ロゼのところのスチュアートさんもできる感じだったよ」


「ヴァッセル公爵家ですか? 確かに彼もできそうな人でしたが、ルーカスさんからは比べ物にならないくらいの凄みも感じました」


「凄みか。確かにルーカスには色々と不思議なところがあるね。それじゃあ調理場に行こうか」


 3人で調理場に向かうのだった。

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