表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
306/434

第303話 帰還

 翌朝、ファーレンを出発した僕たちは、昼過ぎにローダウェイクへ到着した。カザハナは昨日ほどのスピードは出してはいなかったが、それでもかなり早い到着だろう。


 城に到着すると、みんなが出迎えてくれる。昨日ファーレンに到着した段階で、通信施設からおばあ様が報告しているので、今日到着することは報せてあった。ちなみに、おばあ様は、おじい様と楽しそうに長電話していたのが印象的だった。


「エドワード様、お帰りなさいませ」


 一瞬、僕の頭の上に視線を移動させたルーカスが、何事もなかったかのように挨拶する。いや、顔が綻んで隠せてないからね!


「エドワードー!」


 おじい様が全速力で走ってきて僕を抱きしめる。おじい様の全速力は、鬼気迫るものがあるので辞めて欲しいな。


「おじい様、ただいま帰りました」


「帰るのが遅いから心配したぞ!」


「色々あったので遅くなりました」


「ダンジョンに入ったのであろう? クロエばかりズルいではないか、次に入る時は儂も一緒に入るからな!」


 おばあ様から聞いたのだろうな。おじい様とおばあ様を連れて行ったら、ダンジョンをクリアできそうだけど、次に入る時には魔素をなんとかできるようにしたいところだ。


「次に行く時には、おじい様も一緒に行けるとよいですね」


「さすが、エドワードは分かっておるな!」



「エドワード様、お帰りなさいませ」


「ジョセフィーナ、ただいま」


「アスィミは役に立ちましたでしょうか?」


「もちろん、しっかり活躍しました!」


「アスィミには聞いてないわ」


「大きな魔物も一人で倒していたし、大丈夫だったよ」


 嘘は言ってないので大丈夫だろう。しかし、アスィミよ。そこでホッとしていると、僕が嘘を言っているように見えるじゃないか。


「「エドワード、お帰り」」


 父様と母様もやって来た。


「あら? ロイヤルカリブーって、お母様が送ってくれたのかしら?」


「母様、このロイヤルカリブーは褒美として、グラおじい様からいただきました。カザハナといいます」


「あら、そうなのね。 カザハナ、よろしくね。エドワードの母よ」


 母様がそう言うと、カザハナもよろしくという感じで頭を下げた。


「とても賢い子なのね」


「そうなんです」


「ちょっと、フィア? ロイヤルカリブーは王族しか乗ることのできない、貴重なカリブーって言ってなかったかい?」


「ええ、ハリー、そうなのよ。とても気高い動物で、世話をする人も限られているし、王族でも背中に乗せることを嫌うのよ」


「それなのに、貰ったことはスルーして良かったのかい?」


「うーん、きっとエドワードが何かやらかしたのよ。そうじゃないと貰えないわ。そっちよりも、頭のヴァイスちゃんの上に乗っている、エーデルオラケル様と瓜二つの鳥の方が気になるわ」


 ――エーデルオラケル様!?


 母様がそんなこと言うから、みんなに注目されてしまったじゃん。


「ハリー様、中に入られた方がよろしいかと」


「ルーカスの言う通りだね。話は中でゆっくり聞くとして、ロイヤルカリブーをどうするかだけど」


 父様がそう言うと、カザハナは馬房の方へ歩いて行く。


「馬房の場所を覚えていたのか、かなり賢いみたいだね」


「そうなんです。一度行った所なら御者なしで行けます」


「そうなんだね。しかし、背中に乗れないのだったら、エドワードの馬の代わりというわけにもいかないのかな?」


「いえ、僕だけ乗れるようです」


「凄いわ! 私も乗ろうとしたことあるけど、ダメだったわ」


 お母様、試したことがあるのですね……。


「フィア、エドワードができるからって真似しちゃだめだよ。特に今は身体に負担のかかることはだめだからね」


「分かっているわ、ハリー」


 完全に二人の世界に入っているので、おばあ様に促されて部屋に向かう。


 ◆


 部屋で父様たちを待っていると、帰ってきたので報告を始める。おばあ様が話をしてくれているので安心だ。


「つまり、この子はエーデルオラケル様の娘なのね?」


「ピィ」


 僕の頭の上のスノーが母様に返事した。ヴァイスはスライムクッションの上で寝ているので、頭の上にはいない。ちなみに、僕は母様の膝の上だ。なんでも、エドワードが不足しているのだとか。いつから充電式になったのだろうか。


「スーちゃんも、エーデルオラケル様のように、大きくなるのかしら?」


「ピー?」


「まぁ、凄く可愛いわ! セリーヌに頼んでぬいぐるみを作ってもらいましょう!」


 頭の上にいるので分からないが、おそらく首を傾げたんだろうな。名前の呼び方がフランクな母様って、グラおじい様似だったんだな。


「それにしても、ダンジョンの中に帝国兵がいたのは気になるね。父様はどう考えますか?」


 さすが父様! 見事な軌道修正! 見習いたいです!


「そうだな。二つの町が魔の森に飲み込まれたのだ。何かとんでもないことを、やらかしたのかもしれんな」


「出来ることなら、帝国が魔の森に入るのを阻止したいところですが」


「帝国はシュトライトも含めれば、三つの拠点を失ったことになる。現在、他国と戦争中ということも考えると、大混乱になってもおかしくはないのだが、動きがいまいち掴めんな」


 おじい様や父様でも帝国の動きを掴めてないのか、帝国の領土はかなり広いから、しょうがないのかもしれない。


「潜入するのはどうでしょうか?」


「誰がするのだ?」


「僕ならあまり顔も知られていないので、適任かと」

 

「「それは駄目よ!」」

「「それは駄目だな」」



 みんなに反対されてしまった。



「エドワードが危険を冒す必要はありません」


「フィアの言う通りだ。そもそも何の訓練も受けていないエドワードに、隠密行動は難しいだろう」


「帝国については、兄に調べて貰えばよい」


「陛下にですか?」


「うむ、合わせてシュトライト付近までを、我が国の領土とする相談もしておこう」


「うちで動かないのですか?」


「そうだ。ヴァルハーレン家が、手柄を独占するのも良くないからな。この際、土地を持たない貴族の手柄の場にするのがいいだろう」


 そうか、僕が侯爵になったりしているので、他の貴族にも配慮しなくてはならないのか。


「父様の言う通りだね。それに、春からうちは内政に力を入れたいから。帝国にかまっている余裕はないよ」


「力を入れるとは?」


「本格的に機織り工場を作ろうと思ってね、カトリーヌとレギンに手伝ってもらっていた、パイル生地を織る機械の目処が付きそうなんだよ」


「本当ですか!?」


「さすがに高級タオルは無理でも、普通のタオルぐらいは作れるようにならないとね」


 ウルスから聞いた作り方をレギンさんとカトリーヌさんに、教えたのだが、さすがとしか言いようがないな。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ