第299話 試練?
予想以上に長いこと話していたため、かなり遅くなってしまったが、グラおじい様に説明して別の場所にみんなを集めてもらう。
メンバーはグラおじい様に、グレースおばあ様、ストラール伯父上に、スティーリア伯母上のニルヴァ王国王家プラスおばあ様だ。
「あたしまで良かったのかい?」
「エーデルオラケルが、おばあ様にも会ってみたいそうですよ」
「どうしてあたしの名前を知っているのか気になるところだけど、近くでエーデルオラケルを見ることができるのはおもしろそうね」
グレースおばあ様が昔、エーデルオラケルにクロエ物語を読み聞かせしてたことから、おばあ様の名前を知っていたようだ。
「エドワード様、私は本当にエーデルオラケル様に嫌われていないのですか?」
「そうですよ。あの場所だけは聖属性を持っていない人が入ると駄目らしいです。その辺りの事を書いてある書物があったみたいですけど、伝わってないようですね」
「お兄様良かったですわね!」
「うむ、我が人生でこれほど嬉しいことが起こるとは……」
伯父上、かなり嬉しそうだな。聖属性を覚えられると知ったらどうなるのだろう?
「エーデルオラケル様が初代国王のパートナーだったとは……どこで誤った歴史に変わったのか一度調べなくてはならないな」
「資料が残っているといいですね」
◆
みんなが待っているとエーデルオラケルがやって来る。
『ソフィがいないのは残念だけど、家族が揃うのは良いわね』
エーデルオラケルの言葉は僕が通訳して、みんなに伝えている。
「エーデルオラケル様、聖属性を途切れさせてしまって申し訳ございません。全ての責任は私にございます」
グラおじい様がエーデルオラケルに謝る。誰のせいでもないと思うけどね。
「父上のせいではございません。長男としての責を果たせなかった私が悪いのです!」
『エドワー、なんかこの子たち面倒な性格に育ったわね。任せたわ!』
突然の無茶振り! 適当に誤魔化しておいたが、おばあ様は気がついているようだ。
「本題に入りましょう。僕たちがダンジョンで見つけたこの宝石を使えば、聖属性を使えるようになるらしいのです」
「お兄様!」
「ストラール、良かったわね」
伯母上とグレースおばあ様が凄く嬉しそうだ。
「その話だが、私に使うのでなく、スティーリアの長女エリシュカに使ってはもらえないだろうか?」
「お兄様!?」
「ストラール、どうしてだい!?」
「私の代はそのままスティーリアが女王となればよい。問題はその後だ。スティーリアの子供に男子はおらぬが、そのまま長女のエリシュカが繋げば、もう少しだけ猶予が出来る。その間に魔の森への対策を講じればよいのだ」
なるほど、確かにニルヴァ王国を存続させるという意味では理にかなっているが……。
『残念だけど、それは無理よ』
みんなに通訳すると驚く。
――!
「なぜだ!?」
『子供では魂の在り方が不確定過ぎるのと、激痛に耐えられないと思うわ。あとエリシュには適性はないわね』
「激痛があるの!?」
同時通訳していたのだが、思わず聞き返してしまう。エリシュカ嬢に適性がないという話は言わないでおいた。
『コジローは一週間、激痛に耐えて生死を彷徨ったわ』
……。
さすがに、僕も含め、命を掛けなくてはならないとは思っていなかったので、無言になる。
「なるほど、初代様と同じ試練を体験できるとは、私の人生も捨てたものではないな」
どうやら、伯父上は覚悟を決めたみたいだな。
「お兄様、命の危険があるのです。無理をしなくても!」
「そうよ。先日も死にかけたところでしょ!」
「お母様、先日も死にかけたってどういうことかしら!?」
「……」
◆
先日の伯父上の件は伯母上には内緒にしていたようなのだが、思わずばらしてしまったことにより、また話が脱線してしまう。
伯母上のために腕を切ったりしたからなのか、その前からなのかは分からないけど、伯母上は重度のブラコンを患っているようだった。
この二人を結婚させたほうが、聖属性を持った子が産まれる確率高かったのでは? と思っても言わないのがハリー式。
『エドワー、話が進まないけど、どうするのかしら?』
「デスヨネー。僕もそう思ってました」
「リアが女王になりたくないことを私は知っている。リア、私に初代様と同じ経験をさせてもらえないだろうか?」
「お兄様……」
話は纏まったようだな。
「それでは、伯父上が試練を受けるということでいいですね?」
伯父上が使った試練という言葉がカッコいいので使わせていただきました。
「父様に母様、よろしいですね?」
グラおじい様とグレースおばあ様が頷くことで、伯父上が聖属性の試練を受けることが決定した。
「それじゃあ、エーデルオラケルお願いできる?」
『分かったけど、エドワー。この宝石に少し魔力を注いでもらえるかしら?』
「えっ!?」
これってまた勝手にごっそり取られるパターンじゃないの?
『数値にすると500ぐらいかしら? 満タンに少しだけ足りないのよね。聖属性をイメージして注ぐのよ?』
なんだ、500か! 普通の人なら大変だけど今の僕なら大したことはない数値だ。
「そのくらいなら、問題ないですよ」
聖属性の魔力を宝石に注ぐと宝石は輝き始めた。1メートルの高さの宝石が輝くとさすがに凄く眩しいな。
注いだ魔力が500ぐらいになったかなと思われた瞬間。
――!
激しい光とともに宝石が真っ二つに割れたのだった! 宝石の中は空洞なんだな。
「エーデルオラケル! 宝石が割れちゃったんだけど!?」
『魔力が溜まったようね! それで大丈夫よ』
「それなら良かったけど……ん?」
何故かみんな僕の方を見ている? そういえば、宝石の説明をしてなかったな。
「心配しないで。この宝石割れるので正解みたいだよ」
「エドワード様、頭の上です」
伯父上が教えてくれるが、頭の上? いつも通りヴァイスが乗っかっている。いつも通りというのも少し変だが。
「エドワード、ヴァイスの上よ」
おばあ様が指摘するので、ヴァイスを頭から下ろしてみる。
――! エーデルオラケルが縮んだ! いや、目の前に大きいエーデルオラケルはいるじゃん。大きいエーデルオラケルという表現もおかしいな。
エーデルオラケルは体長3メートルの青い目と模様のシマエナガのはず。そしたら、このヴァイスの上に乗っている。体長6センチの可愛い鳥はなんだ? よく見るとアホ毛も生えていて、余計に可愛い。
『私のムスメよ』
「娘? えっ、これ宝石じゃなくて卵だったの? いや、エーデルオラケルもクリスタルって言ってたよね? 1メートルの卵から6センチの娘って」
『卵を核にしてクリスタルを作ったのよ』
「そんなことできるの!? でも、空間収納庫に生物は入らないはずなのに……」
『探知できるように核にしただけだから、生まれるなんて思ってないわよ。エドワーの魔力で活性化されたのかしら?』
「僕のせいなの!?」
『そうよ。それにしても、私と全然似てないわね』
大きさが違うだけで、ほぼ同じだと思うんだけど。まあ、いいか。
「……それじゃあ、魔力も蓄えたことだし、伯父上の聖属性を目覚めさせてね」
「「「「「なかったことにした!」」」」」
なかったことなんて人聞きの悪い。エーデルオラケルの娘が生まれただけでしょうが。
「ほら、君のママはあそこだよ?」
「ピッ」
しかし、エーデルオラケルの娘はプイッと顔を背けた。態度としてはあれなんだけど、見た目が可愛いので何をやっても可愛いのが困るところだ。
『エドワーの魔力で覚醒しちゃったんだから、エドワーが面倒みてあげて?』
「僕のせいなの!? いや、親子で一緒にいた方が良いにきまってるじゃん」
「|ピピ ピ ピィピピ ピ、ピッピピッピ!《彼の魔力が気に入ったわ!》」
ピピピ言いながら、僕を指さした。いや、翼だな。
うーん、幻聴だろうか? ピーしか言ってないのに、何を言っているのか分かるような気がする。それにしても、娘は喋ることできないんだな……。




