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第298話 神鳥エーデルオラケル(下)

 ヴァイスやエーデルオラケルから従魔契約について学んだわけだが、今のところ何一つ解決していない。一つずつ確認していくことにしよう。


「ねえ、コジローさんの容姿もシルバーの髪に青い目なの?」


『そうよ。あっ、でも最初は黒かったわね。浄化を使えるようになってから変わったのよ』


「そんなことってあるの?」


『コジロー以外は知らないし、分からないわ』


 やはり黒髪黒目だったか、名前からしてそんなような気がしていたが、転生者や転移者もしくは、アシハラ国から流れ着いた可能性が考えられるだろう。


「この城はコジローさんが建てたのかな?」


()は建ててないわ。私たちがここに来たときには、()しかなかったのよ』


「城しかないって、町が無かったってこと?」


『そうよ、町はコジローが作ったのよ! 凄いでしょ? エドワーはコジローに興味があるの?』


「そうですね。ご先祖様ですし、興味ありますね」


『それはいい心掛けね。私が教えてあげるわ!』


 ◆


 エーデルオラケルは、会話をできるのが余程嬉しかったのか、コジローの話を延々と話した。


 凄く長くて疲れたのだが、聞きたい部分が聞けたのでよしとしておこう。喋り疲れたエーデルオラケルは現在メープルシロップを飲んでいる。


 アケルトレントを嘴でコンコンと突いたら、直径30センチぐらいの木の実を落としたのだ。どうやらその中にメープルシロップが入っているようで、穴を開けて飲んでいる。アケルトレントに穴を開けて採取する方法じゃなくて少しだけ安心した。ちなみにヴァイスも真似して飲んでいる。


 結局、コジローはアシハラ国から流れ着いた人物のようで、転生者や転移者ではないようだ。


 コジローがこの地に流れ着いた時にはこの城だけがあったようで、エーデルオラケルと住み着いたところ、色々な人が集まって町ができ、ニルヴァ王国が誕生したようだ。

 

 城やダンジョンは元から存在していて、魔素をダンジョンに送るシステムも元々あったもので、色々試していくうちに発見したとのことだった。


 そうなってくると、ルトベアル王国は作った城を放棄したのだろうか? そもそも城しかないというのが不自然だ。魔素の研究をしていた実験施設とかいった方がしっくりくるな。そんな施設を持っていた国が簡単に滅ぼされるのも不思議な話だけど、ニルヴァ王国とは無関係なようだ。


 ルトベアル王国については後日考えることにして、今は浄化システムに集中しよう。


 この浄化システムだが、話を聞く限り失敗作だったようだ。放置した理由はこの辺りにあるのかもしれないな。


 聖属性を持つものが魔力を送ることによりシステム自体は動くが、装置であるクリスタルが黒くなると停止するようだ。装置が黒くならないように、魔素を浄化できるエーデルオラケルが一緒に魔力を流すことにより黒くなるのを防いでいるということらしい。


 コジローは後天的に聖属性を使えるようになったわけだが、エーデルオラケルの話を纏めるとダンジョンで目覚めたわけではないし、ダンジョンの最下層に到達したわけではないとのことだった。


 どうやら、歴史の途中でダンジョンの最下層で聖属性の力に目覚めたという話にすり替わったみたいだな。そして、いつしかダンジョンが108階あるという話になったようで、母様が見た王家の資料は間違っているようだ。伯父上が聖属性に目覚めようとダンジョンに潜っていたのは無駄だったようだな。まあ、魔物を間引くという目的には沿っているので完全に無駄ではないか。

 

 ◆

 

「ねぇ、聖属性を使える人がいなくなったら、自由になりたいの?」


『おかしなことを聞くのね? 私は今も自由よ』


「えっ、でもコジローとの約束なんだよね?」


『さっきも言ったけど、途中からは私の意思よ。それに、食事も出てくるし、トレントたちもいるこの場所は最高よ』


「コジローさんが聖属性を覚えた方法は使えないのかな?」


『大量の魔力が必要なのよ。本当はコジローと相談して魔力を貯めるクリスタルをダンジョンに隠したのだけど、隠した部屋がなくなっちゃったってコジローが言ってたわ』


「部屋が無くなったのですか?」


『そう言っていたわ。でも、私のつけた目印は残っていたから不思議なのよね……あらっ? 目印も分からなくなっているわね』


「その目印はここから感じ取れるの?」


『そうなんだけど、今は分からないわ』


『エディよ。隠し部屋で見つけたお宝はどうだ?』


「そういえば、あったね」


 空間収納庫から隠し部屋で見つけた宝石を取り出す。


『あぁー! コレよっ! コジローが隠したクリスタル!』


「空間収納庫に入れてたから感じ取れなかったのかな?」


『そうであろうな』


「これがあったら聖属性を覚えさせることができるの?」


『出来るわ! でも、誰でも覚えられるわけじゃないわよ?』


「そうなの?」


『当たり前よ! 基本的に適性がないと無理だわ』


「適性があったら、最初から使えるんじゃないの?」


『そんなに甘くないわよ。エドワーは最初から使えたのかしら?』


「そういえば、ジョセフィーナの傷を治したいと思ったら使えるようになったな」


『エドワーは才能があるのね。それだけで使えるようになる子は少ないわ。』


「そうなの?」


『あなたの母親のソフィは早く覚えたけど、姉のスティは苦労したわよ』


「スティーリア伯母上が?」


『見たわけじゃないけどね。当時グレースが言っていたわ。ストラーがスティのために腕を切り落としたって』


「伯父上が!?」


 どうやら伯父上は、子供の頃からあの性格だったようだな。


『二人きりの時にやったみたいでね、何とか使えるようになったけど、ストラーは出血し過ぎで2週間寝てたって言っていたわよ』


「母様の覚えが早かったとか、色々知ってるんですね?」


『グレースは優しくていい子よ? 会話はできないけど、小さな頃から私に話しかけてくれたわ。その日あった出来事から愚痴まで色々な出来事を教えてくれるの。コジローはもういないけど、コジローの優しさを受け継いだ子たちを見守るのも意外と楽しいのよ? それに、エドワーみたいに会話できる子が生まれるなんて、待った甲斐があったと思わない?』


 エーデルオラケルは決してコジローさんとの約束だけで、ここにいるわけじゃないと感じることができた瞬間だった。



 このエリアでなければ、伯父上たちも顔を見せてもよいということが分かったので、場所を変えて説明することにするのだが、その前に聞いて置かなければならないことがあったのだ。


「そういえば、エーデルオラケルはどうして雪像を破壊するの? かなり精巧に作ったと聞いたけど、雪像が嫌いなの?」


『何が精巧よ! 私、あんなに太ってないわよ!』


「……」


 なるほど、似せれば似せるほど破壊されるはずだと思ったのだった。

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