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第296話 グラキエース・ニルヴァ

 みんなで会話を楽しんでいると、タニアさんがやって来た。


「クロエ様、エドワード様。陛下とグレース王妃がいらっしゃいました」


 そう言うと、陛下とグレースおばあ様が入ってくる。


「クロエ様にエドワード、今回の件は本当に助かった。特にストラールを救ってくれてありがとう。聞けばグレースでも回復できなかったというではないか。エドワードのような素晴らしい孫ができて鼻が高いな!」


 陛下のテンションがやたら高いな。さっき見たのは影武者なんだろうか?


「ほら、あなた。エドワードが驚いているじゃないですか」


「それはスマンな。儂がニルヴァ王国国王のグラキエース・ニルヴァで、エドワードの祖父になる。王族の孫はエドワードだけ故にじいじか、じいちゃん、どちらでもよいぞ?」


 なんだその二択は!?


「それでは、グラキエースおじい様とお呼びしても?」


「却下だな、硬すぎる! そういえば、アルバンの奴もおるから紛らわしいな。グラちゃんなんてどうだ?」


 どうだ? じゃないな。さっきの会議を見た後で、その発想は出てきませんよ。


「外孫になりますので、グラおじい様はいかがでしょうか?」


「まだ硬いが、その辺りは徐々にでいいだろう」


 時間が経っても、変えるつもりはないですけどね。


「会議はもう終わったのでしょうか?」


「いや、まだ続いているな。具体的な内容は任せて口出ししないのが、ニルヴァ王国流だ」


「そうなんですね」


「それで、褒美を取らせようと思っているのだが、何がいい?」


 褒美? 考えてもなかったな。おばあ様を見ると頷いているから、何か貰っておけということなんだろう……!


「それでは、僕たちをここまで運んでくれたロイヤルカリブーはダメでしょうか?」


「良いぞ」


 早っ! まさかの即答!


「よろしいのですか?」


「そのロイヤルカリブーについてはラナフから報告を受けている。テイムもしていないのにエドワードの言うことしか……」


 どうしたのだろう。


「エドワードよ、儂が間違っていた!」


「何のことでしょうか?」


 褒美はやっぱり無し?


「一方的にフレンドリーに呼ばせようとして、肝心の儂がエドワードのままというのは、エーデルオラケル様も許さないだろう」


 エーデルオラケルはそんな細かいことにまで口出しするの!? いや、会話できないから僕を連れて来たんでしょうが?


「そこまでは口出ししないんじゃないですかね?」


「いや、今回破壊された雪像はかなり細部まで作り込まれて、エーデルオラケル様に瓜二つであったのに破壊されてしまってな、意外と細かいところを気にするタイプなのだ」


「そうなんですね……」


「儂もエドワードのことを愛称で呼ぶことにしよう。エドワードのことを愛称で呼ぶものはなんと呼んでおる?」


「エディが多いですね」


「そうか、ではエディは除外だな」


「えっ!?」


「エドワードの愛称か……エド、テッド、テディ、ネッド、ネディか……」


 何となくだけどテディは抵抗あるな。


「よし決めた! エドにしよう。エドは儂のことをグラちゃんと呼ぶからピッタリだろう」


 ちゃん付けで呼んでないのですが……。


「それでロイヤルカリブーの件は問題ないぞ。儂でも背に乗れたことは今までないのにエドは凄いな、是非とも乗ったところを見せてくれ」


「いいのですが、乗れたことがないというのはチャレンジしたのでしょうか?」


「うむ、ことごとく失敗して、最近は止められておるな。ロイヤルカリブーは意外と容赦なく蹴ってくるからな」


「当たり前です。骨を折られると、治すのが大変なのですからね」


 なるほど、チャレンジに失敗して、グレースおばあ様に治療してもらっていたのですね……。


 それにしても、この世界のおじいさんって破天荒な人しかいないのだろうか? 第一印象は厳格なおじい様だったのだけどな。


 ◆


 込み入った話になりそうなので、僕たちが利用しているエリアにある個室の談話室に移動した。

 

「それで、エドを連れて来た本当の理由はエーデルオラケル様のことだったな」


「そうですね」


 グラちゃんは温かスライムマットの上で寝ているヴァイスの方を見る。やっぱりグラちゃんは無理、グラおじい様だな。


「なるほど、確かにグレースが言うように神聖なものを感じるな。それも、エーデルオラケル様より強く感じるとは……」


 あれっ、もしかして、ヴァイスの神聖さを感じ取ることが出来ないのって僕だけなのでは?


「エドはヴァイス様と会話できるのであったな?」


「はい、理由は分かりませんが」


「気がついていないようだが、エドからも神聖なものを感じる。その辺りが関係しておるのかもしれんな」


「僕からですか!?」


「そうだ、やはり知らなんだか。元々王族はその傾向が強いが、エドは比較にならないぐらいに強い。ヴァイス様と会話ができるのであれば、エーデルオラケル様とも会話することが可能だろう」


「それなら良いのですが、会話できたと仮定して、聞いて欲しいことなどはありますか? グレースおばあ様からは王族以外が国を治めた場合どうなるか聞いて欲しいと言われています。どこまで聞けるのかは分かりませんが、予め候補を上げてもらった方が聞きやすいです」


「なるほど、グレースはそのようなことを……その質問は必要ないぞ」


「あなた、どうして!?」


「まあ、このメンバーなら良いだろう。その質問の答えは分かっているのだ。王族がいなくても治めることは可能だ」


「それでは!?」


 グレースおばあ様の表情が喜びに変わる。


「その代わりに、魔の森とダンジョンの両方から強い魔物が溢れ出すことになるだろう」


「――!」


「治めることは可能でも、存続させることは難しいということかしら?」


 おばあ様が質問するが、そういうことなんだろうな。


「その通りだ。どんな仕組みなのかは分からぬが、魔の森の瘴気、エドたちが言うところの魔素をダンジョンに送る仕組みとなっているのだ」


「仕組みになっているのなら、問題なさそうだけど、それだけじゃないということね?」


「その通りだ、エーデルオラケル様が守られている物が、その働きをすると言われているのだが、王の役目として月に一度、それを浄化しなくてはならぬのだ」


「月に一度、エーデルオラケル様の元へ行かれているのは、そのためだったのですか」


「そうだ、本来、話すべきことではないのだが、エーデルオラケル様と直接会話できる可能性があるということで話すことにした」


「それは、浄化しなければ機能しなくなるということでしょうか?」


「浄化する直前は色が黒くなっているから、おそらくそうであろうな」


 一ヶ月経つと色が黒くなっていくのか、ダンジョンでみた魔素と同じだな。あれっ? ダンジョンの黒い魔素は浄化できなかったけど、グラおじい様は浄化できるってことなのか?


「一つ質問があります。ダンジョンで魔素が原因で調子が悪くなった人を浄化しようとしたら、失敗したのですが、グラおじい様は浄化できるのでしょうか?」

 

「ダンジョンの魔素を見ていないからなんとも言えないが、儂一人では無理であろうな」


「なるほど、浄化するときは、エーデルオラケルが手伝ってくれるのですね?」


「エドはなかなか賢いな。その通りだ、浄化するときはエーデルオラケル様も一緒に魔力を放ってくれるのだ」


「それで、エーデルオラケルに認められていない者は近づけないようにしているのですね?」


「そうだ、エーデルオラケル様が浄化を手伝ってくれる理由すら分からないのだ、嫌われている者を近づけるわけにはいかないだろう?」


「理由が分からないのですか?」


「過去は分からないが、現在には伝わっていないし、資料も残ってないのだ」


「なるほど、それでは浄化を手伝う理由や、王族がいなくなった場合のことなどを聞いてみればいいのですね?」


「その辺りが分かるのならとても助かるな。エドが話せるということが分かれば、今後聞きたいことができれば、正式に依頼するから気負わなくても大丈夫だぞ?」


「そういえば、そうでしたね」


 このチャンスにニルヴァ王国の命運がかかっていると思って、かなり緊張していたようだ。

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