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第293話 ニルヴァ王国料理

 城に到着したので、馬車を降りてもう一度城を見る。やはり、ローダウェイク城と似たような作りになっているな。


 グレースおばあ様が兵士や侍女たちに指示をだしている。


「それでは、ヴァルハーレン家の方たちはタニアの後について行ってもらえるかしら」


「グレース様の侍女のタニアにございます。まずは国王様との謁見の準備が整うまで、控室にてお待ちいただきますので、こちらへ」


 タニアさんが歩き始めるので後をついて行く。


 ◆


「こちらの部屋をお使い下さいませ」


 連れてこられた部屋は談話室のようだが、とても広くその豪華さは想像を超えていた。壁には金色の装飾が施され、床には柔らかな絨毯が敷かれている。部屋には扉が複数ついていて中には寝室があるらしく、城に滞在する間はこのエリア一帯が僕たちに貸し出されるそうだ。

 

「部屋にはリアナとアビーの2人を残していきますので、何なりとお申し付けください」


 リアナとアビーというメイド2人が僕たちの担当になるようだ。


「リアナでございます」

「アビーでございます」


「リアナはハリーとソフィアの結婚式以来ね」


「覚えておいでですか!? クロエ様に覚えていただけているとはとても光栄でございます。うちのメリッサはご迷惑をおかけしていませんでしょうか? それだけが心配で」


「メリッサはいつも通りよ。ソフィアがそれで気にしないのだから、いいんじゃないかい?」


 どうやら、リアナさんはメリッサの母親みたいだな。確かに面影が感じられ……ないな。リアナさんはしっかりしてそうに見えるが、父親似なんだろうか。


「やはり、ご迷惑をおかけしているようですね……申し訳ございません」


「謝罪は不要よ。ソフィア自身が選んだのよ、私たちには分からない何かがあるのだわ」


「ソフィア様ですか……そうですね。娘はともかく、ソフィア様がお選びになられたんですものね……」


 何気に二人ともメリッサさんへの評価が低いな! リアナさん、親なんだから娘を信じようよ!


 話をしていると、部屋を見て回っていたアザリエたちが帰ってきた。


「寝室もかなり広いですね。クロエ様はあの部屋を使って、その隣の部屋をエディ様がお使い下さい。師匠はエディ様の隣の部屋でお願いします」


「アザリエたちは?」


「私たちはそこの部屋を交代で使いながら、ここで護衛をいたします」


「城の中だから、みんな寝ても大丈夫なんじゃないの? 部屋もたくさんあるし」


「エディ様、ここはローダウェイクではないので、そういうわけにはいきません」


「アザリエの言う通りですわ。ここは敵地ではないですが、ヴァルハーレン家に対し敵対心を持つものもいますので、用心しておく必要がございます」


「ヴァルハーレン家に敵対心を?」


「エドワード、ニルヴァ王国で人気の高かった王女のソフィアを、ヴァルハーレン家に迎えるのは色々と大変だったのよ」


「そうだったんですか!?」


「ニルヴァ王国でも人気の高いクロエ様が出てきたことにより、反対勢力が鎮まったと聞いたことがありますね」


 アザリエはニルヴァ王国で冒険者をしていたときに、聞いたことがあるようだ。


「大したことはしてないわよ」


「あれを大したことないと言えるのはクロエ様だけです」


 リアナさんが知っているようだ。


「ソフィア様を迎えに来る際、護衛の兵士を連れず、ハリー様、アルバン様、クロエ様の3人だけで来たのです! 反対する貴族たちがソフィア様を渡すまいと兵士を配置していたのですが、御三方がゆっくり歩くだけで兵士が退き、道ができるのは今でも目に焼き付いておりますわ!」

 

 普通に考えると3人()()なのだが、ヴァルハーレン家が誇る最大戦力の3人を相手にすれば、対峙した兵士は耐え切れないだろうな。それにしても、リアナさんの話では、おばあ様が何かしたような言い方だったのだが、今の話では3人が凄かったって話のような気もする。


 

「ところでリアナ、何日ぐらいかかりそうだい?」


 おばあ様がリアナさんに質問する。何日ってなんのことなんだろう。


「クロエ様が待つのを嫌いなことは十分に理解しておりますので、どんなに遅くても明日までには整うと思います!」


「それなら良かったわ」


 おばあ様、何かやらかしたんですね……。


 ◆


 アザリエたちからダンジョンの話を聞いていると夕食が運ばれてきた。


「そういえば、エドワードにニルヴァ王国の料理が美味しいという話をしたかしら?」


「そうなんですか? 初めて聞きましたね」


 来る途中でそう思わなかったのは、食材が足りてなかったせいだろうか。


「あたしが料理に力を入れ始めたのは、冒険者の日記とニルヴァ王国で食べた料理なのよ」


「へー、そうなんですね! 冒険者の日記の話は聞きましたが、そこまで美味しいのなら楽しみですね!」


「いつも美味しい料理が出てくるわけではないですよ。普段は節制してお祝い事などでは豪華になります。今回はエドワード様から大量に魔物の肉を頂いたということで、料理人たちが頑張ったそうですわ。国民にもソフィア様の子であるエドワード様からということを伝えて配っていますので、今日は各家庭でもお祝いするはずです」


 リアナさんが教えてくれたのだが、魔物の肉が僕名義ってどういうことだ? ダンジョンで確保した大量の肉を渡したのは確かなんだけど。


「おかしいですね……国王かスレーティー家からということにしてねって言ったと思うんだけど?」


「グレース様の話では、スレーティー家の当主になられたスカラー様は国の恩人の手柄を横取りできないと言われたとか。国王様はクロエ様のお孫様の手柄を横取りできないと断ったそうです」


 クロエ様のお孫様って……あなたの孫なんですけどね。


 ◆

 

 並べられた料理を見ると確かに美味しそうだ。残念ながら騎士団のみんなやアスィミは別メニューで後で食べることになるようだ。ヴァイスの分もあるのだから、みんな一緒でもいいような気もするのだが、しょうがない。美味しい物があったらアレンジして食べさせてあげたいと思う。


 おばあ様は豆料理から食べているので、僕も同じものを食べてみるか。白いんげんと肉を甘辛く煮てあるようだ。ベイクドビーンズが近いのだろうか、だとしたらリッコ(トマト)が合うはずだ。


「エドワード、この程よい甘さを再現させたくて、ロブジョンに作らせたのだけど、少し後味が違うのよ」


「そうだったんですね。確かに砂糖の甘さとは違った甘さを感じますね。蜂蜜というわけでもなさそうです」


「その通りよ。蜂蜜も試したけどダメだったわ」


「その他の甘みですか……」


 ベイクドビーンズならメープルシロップを入れたりするんだっけ? メープルシロップってあるのだろうか? まだ見たことないけど、あってもおかしくはない。


「エディ様ぁ、参考になるのかは分かりませんが、たまに王家から神樹の恵みという、甘いドロッとしたものをかけたタルトを配ることがあるのですぅ!」


「シプレはよく覚えていましたね」


「覚えていないヴィオラがおかしいのですぅ、産まれて初めて食べた甘いお菓子なんだから一生忘れないですよぉ」


(わたくし)はエディ様が()()()になったデザートを食べた時点で覚えていないですわ!」


「――! ヴィオラは相変わらず策士ちゃんですねぇ」


 どこに策士要素があったのか分からないが、ヴィオラが言うと、何か壮大な物を作っているように聞こえるのは気のせいだろうか……ただのデザートだからね。


「ところで、シプレはそのお菓子を食べた季節を覚えている?」


「季節ですかぁ? うーん、春ですねぇ」


 極寒の地で育つメープルの木は、冬、寒さを乗り切るために樹液の糖度を高めるそうで、3月から4月ぐらいが収穫時期だったはずだ。どこかにメープルの木があるのかもしれないな。いや、神樹の恵みって随分と大層な名前がついているから、特殊な木なのかもしれない。


 その後、提供したデスラビットの丸焼きが出てくるなど驚く料理もあったが、ニルヴァ王国料理は美味しい料理が多かったのだった。

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