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第292話 セメンテリオ

 ペタノサウルスを食べた翌朝、いよいよニルヴァ王国の主都セメンテリオへ向けて出発だ。


 準備をして外へ出るとロイヤルカリブーが二頭いて、片方のロイヤルカリブーは頭1つ小さい。


「おはようございます」


「ラナフさん、おはようございます。もう一頭のロイヤルカリブーはどうしたのですか?」


「エドワード様の言うことしか聞かないのと、王都へはストラール様もお連れするため、ソリを追加した次第です。王都から来る時に確認いたしましたが、そのロイヤルカリブーは御者がいなくてもしっかり走りますので、エドワード様たちがお使い下さい」


 ラナフさんの話によると、元々このロイヤルカリブーは気難しく、御者できるのはラナフさんだけだったらしい。そのラナフさんの言うことを聞かないのだから、タランドス家でもお手上げだということだ。


「セメンテリオまで頼んだよ」


 ロイヤルカリブーにそう言うと、任せてといった感じで頭を下げるので、撫でてあげると嬉しそうにするので、ついつい撫でてしまう。


「ロイヤルカリブーがここまで人に懐くとは……」


 伯父上が僕に擦り寄るロイヤルカリブーを見て衝撃を受けている。そこまで驚くことなの?


「伯父上にスカラーさんおはようございます。伯父上、体調は大丈夫ですか?」


「エドワード様、おはようございます。昨日は支えが必要でしたが、なんとか一人で歩けるようになりました」


「エドワード様、おはようございます。私のことはどうか呼び捨てでお願いいたします」


 伯父上は寝込んでいたときの方が話しやすかったんだけど、元気だとガードが硬いな。スカラーさんは伯父上が鍛えていたそうで、グリージョよりも伯父上に性格がにているようだ。グリージョに似ているのは、髪と瞳の色だけで良かったね。


「それでは、城に向けて出発いたしましょう。ストラールとスカラーはこちらのソリに乗りなさい」


「「畏まりました」」


 グレースおばあ様が出発を告げたので、僕たちもソリに乗り込む。当然のようにロイヤルカリブーに乗ろうとすると、いつもは背中に乗せてくれるのに、襟首を咥えるとソリの入り口に置いたのだ。


「えっ!? どうしたの?」


「ソリの中に入れってことじゃないのかしら?」


 メグ姉がそう言うと、ロイヤルカリブーが頷いた。


「ソリに乗ればいいの? どうしてかな」


「そういうことね。分かったわ、私に任せなさい」


 何を任せるのかさっぱり分からないな。メグ姉は何かに気がついたようで、ロイヤルカリブーと意思疎通できているように見えるな。


 よく分からないままソリに乗り込み、しばらくするとソリは走り出す。ラナフさんが御者するロイヤルカリブーについて行っているせいか、この間よりも随分とゆっくりしたスピードに感じる。


「エディ、頭はここよ」


 外を見ているとメグ姉が膝をポンポンッと叩く。膝枕をしてくれるらしい。


「いや、さっき起きたところだよ?」


「昨日は凄く頑張ったでしょう? まだ、疲れが抜けきってないのよ。それに、このままソリに乗っているとまた気持ち悪くなるでしょう?」


「もしかして、ロイヤルカリブーはそのために僕を?」


「そうよ。エディの体調に気を使うなんて、なかなか賢い子ね」


「師匠はニルヴァ王国へ向かう最中に膝枕をしたじゃないですか。今度は私にやらせて下さい!」


 アザリエにしては随分と直球勝負できた。


「いいわよ」


「「「「えっ!?」」」」


 メグ姉の即答に言った本人はもちろん。他の騎士団の3人も驚いている。4人とも代わってもらえると思ってなかったらしい。


「どうしたの? エディが気持ち悪くなる前に寝かしつけなさい」


「分かりました! では、エディ様こちらに」


 アザリエが準備をするので、大人しく膝枕されることにした。



 ◆


「……エディ様」


 誰かが呼んでいる。


 目を開けると、ルビーのような赤い瞳の少女が僕を呼んでいた。


「あれっ、リーリエ?」


 アザリエに膝枕してもらったはずなのに、目覚めるとリーリエが膝枕をしているのだが……。


「騎士団の4人で交代に膝枕していまして、私が4番手になります」


 全く気がつかなかったんだけど!?


「そうだったんだね、僕のためにありがとう。今はどの辺りかな?」


「――! 遠くに城が見えますので、もうすぐ到着いたします」


 一瞬、リーリエの顔が赤くなったように見えたのだが、大丈夫なのだろうか?


「城が見えるの!?」


 起き上がり窓を開けて外を確認してみる。


「――!」


 確かに遠くに城がみえるのだが、あれがセメンテリオの城?


「おばあ様、セメンテリオ城って」


「驚いたでしょ? あたしも初めて見たときは驚いたよ」


 セメンテリオ城はローダウェイク城と似たような作りのお城だったのだ。


 ヴァーヘイレム王国の三公爵の城はどれも違う作りだった。雪深い地方の城はああなるのだろうか? 違うな、ローダウェイク城を建てたのはルトベアル王国だとおばあ様は言っていた、つまりセメンテリオ城もルトベアル王国が建てたか、関係があると考えるのが自然だろう。


 元々はこのあたりもルトベアル王国が所有していたと考えれば、ダンジョン自体もルトベアル王国が作ったことになるのだろうか?


 ルトベアル王国を滅ぼしたのがドルズベール王国ということは、ルトベアル王国が滅んだ後にニルヴァ王国が作られたことになる。


 ニルヴァ王国の歴史も一度学びたいところだけど、母様に聞いたら分かるのだろうか。


 外を見ながら考え事をしていると、セメンテリオに到着し、門をくぐり、町中へ入った。


「あの、城壁近くの雪の塊はなんだろう?」


 城壁と町の間に雪の塊がいくつかある。雪捨て場なんだろうか?


「エディ様、あれは雪像の跡ですね」


 僕の呟きにアザリエが答えてくれた。


「母様が言っていたのってこれだったんだね」


 折角作った雪像をエーデルオラケルが破壊するという謎のイベント……イベントなのか?


「エーデルオラケルはどうして雪像を壊すのかな?」


「そればかりは、エディ様が聞いてみないと分からないと思われます」


「だよね」


 返事はしたものの、みんなの中で僕が会話できるのは、既に決定事項なんだなと思ったのだった。


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