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第283話 合流

「やぁーっ!」


 間延びしたシプレの掛け声とともに、止めを刺されたレオンラビットが倒される。


「シプレよくやりました」


 アザリエとシプレ2人でレオンラビットを倒したのだ。


「2人とも大丈夫?」


 急いで駆け寄ると、傷だらけになっていたので、ヒール除菌プラスで治療した。


「「「……」」」


「エディ、その回復魔法は前に見たのと違うわね」


「メグ姉、分かるの? ストラール伯父上を治したときに作った魔法なんだ」


「エディ様、以前は虹色に光っていませんでした……そういえば、リーリエのやつが興奮して話していたのがこれか。まさか本当に虹色に光るとは……」


「さすがエディ様、素敵ですぅ」


 そういえば、伯父上を治したときにはリーリエしかいなかったな。


「エディ様、装備のおかげで、かすり傷と打撲程度なので、そこまで強力な回復魔法を使わなくてもいいのかと」


「伯父上は傷をほったらかしにしたせいで、大変なことになったんだ。僕の目につく傷は全て治療するからね!」


 あっ、アザリエとシプレが倒れた!


「2人とも大丈夫!?」


  急いで駆け寄るが、プルプルしているだけで、大丈夫そうだ。


「エディ様、今のはズルいです……」

「不意打ちですぅ」

 

 どうやら変態モードが発動したようだ。


「二人ともいつまでも倒れてないで、移動するわよ」


 メグ姉がそう言うと、二人は立ち上がる。その間にレオンラビットを回収しておく。


「それでは、移動しましょう。シプレ、頼んだわよ」


「今ので、力がみなぎってきましたぁ」


 シプレが言うと、みなぎっているように聞こえないけどね。


 そこから、順調に進んでいくが、突然ヴァイスから待ったをかけられる。


『止まるのだ』


「みんな、止まって!」


 僕の言葉でみんなが止まる。


「エディ様、どうされました?」


 アザリエが聞いてくる。


「ヴァイスが止まれって言うから。どうしたの?」


『この先に強い魔物の臭いがするのだが、前に嗅いだことがある臭いなのだ』


「強い魔物で、前に遭遇した魔物ってこと?」


『うむ、我はいちいち名前など憶えてないからな……』


 美味しい魔物ぐらい憶えようよ。


『そうだ! ウルスが我の背中で倒した奴だ』


「ウルスが倒したってことはキングタウルスってこと?」


「「キングタウルス!」」


 アザリエとシプレが驚いた。


『うむ、それだ! アレは美味しい肉だから綺麗に倒すのだぞ。乳デカ女には触らせるなよ。せっかくの肉がダメになる』


 乳デカ女って……シプレのことか。シプレはおばあ様に影響されているのか、素材のことなんて気にしないもんな。シプレは元冒険者なんだから、ダメなような気もするけど。


 キングタウルスがバレちゃったとはいえ、どうやって僕が戦うかが問題だ。こういう時、父様なら上手く言うのだけど、困ったな。


「この先にキングタウルスがいるらしいんだけど、僕が相手してもいいかな?」


「エディ様がですか?」


「うん、この間作った技が、強い魔物相手でも使えるのか試してみたくて」


「エディの新しい技? それは楽しみね」


 メグ姉のこの一言で僕が戦えることになったのだが、父様の加護はついてなかった。


 通路を歩いて行くと、部屋の中央にキングタウルスが立っているのが見える。体長4メートルはありそうなので、以前ウルスが仕留めたキングタウルスよりも大きいようだ。


 キングタウルスがいる部屋は円形になっていて、直径は20メートル以上、高さも10メートルはありそうな部屋に、何度か見た柱が円形に配置されている。


 僕が部屋に入るとキングタウルスは戦闘態勢を……アレっ、このキングタウルス大きな剣を持ってるんですけど!?


 そう思った時には、キングタウルスは剣を振り上げて、僕目掛けて叩きつけようとしている!


斬首の吊るし人(ザ・ハングドマン)!」


 僕が叫ぶと、2本のアラクネーの糸がキングタウルスの脚に巻き付き、持ち上げ、逆さまにした。さらに2本の糸が両手を左右に引っ張ると剣を落とす。最後に身動きの取れないキングタウルスの頭を、ウインドカッターを纏った糸が胴体と斬り離した。


「「「――!」」」

 

『さすがエディだ! 今日はこれが食べたいから、ウルスに解体を任せよう』


「それがエディの新しい技? 凄いわ!」


「師匠、凄いの一言で終わらせてよいのでしょうか?」


「キングタウルスを瞬殺なんて、エディ様、凄すぎますぅ」


 シプレがピョンピョン跳ねるのに合わせて、僕の目線も上下する。


「それにしても、このダンジョンでキングタウルスが出るというのは聞いた事がないですね」


 43階まで行ったことのあるアザリエたちでもキングタウルスは見たことがないようだ。


「そうなの? 43階まででは出ないのかな?」


「まだ遭遇していない可能性もございますが、おそらくはそれよりも下の階で出るのだと思います」


「4階から急にというわけでもないか」


「そうですね、レオンラビットも初めて見ましたし。異常状態は続いているものと思われます」


 キングタウルスを収納して先へ進むことにする。


「次は奥に進めばいいのかな?」


「その先は、この部屋より小さいサイズの部屋があるだけで、行き止まりとなります。シプレ、確認してもらえるか?」


「分かりましたぁ」


 シプレは隣の部屋を確認しに行く。ヴァイスが反応していないので、魔物がいないのは分かっているけどね。


「エディ様、見てもらえますかぁ?」


 シプレが何かを見つけたようなので確認しに行く。


「何これ!?」


 部屋の中には武器や防具などが、山のように集められていた。


「冒険者というよりは騎士の装備が多いように見えますが……」


 アザリエの言う通り騎士が使う鎧や盾が、数多く見える。


「これは……」


「イグルス帝国の物ね」


 僕の呟きにメグ姉が答える。何故ここにイグルス帝国の騎士の装備が……。


「おじい様がスタンピードの原因はイグルス帝国らしいようなことを言ってたけど、ダンジョンの異変も関係しているのかな?」


「関係しているかもしれないし、そうでないかもしれないわ。私たちが悩んでいても分からないから、それを持ってみんなと合流しましょう」


「メグ姉の言う通りだね」


 この部屋にある装備品などを全て空間収納庫に収納する。


「よし、引き返そうか」


 元の通路まで戻って来ると、おばあ様たちが歩いてくるのが見えた。


「おばあ様!」


「エドワード、ちょうど良かったわ。この子たちを回復してくれるかい?」


 そう言って、おばあ様が後ろを振り返ると傷だらけの3人がいた……いや、アスィミは大丈夫そうだな。


「みんな大丈夫?」


「かすり傷なので問題ありませんわ」


「そうです。このくらい大したことありません」


 ヴィオラとリーリエも先の二人と同じことを言っている。僕が言葉を間違えると、変態が発動するのだろう。

 そのまま治しちゃえ。ヒール除菌プラス。


 虹色の光が二人を癒す。


「エディ様……」


「ヴィオラ、エディ様は先程、私たちの傷は全て癒やすと言って、私たちのかすり傷さえも癒されたのだ」


「「――!」」


 アザリエが余計なことを教えるから、二人は喜びに浸っているじゃん。あと、アザリエの言い方だが、若干ニュアンスが違うように聞こえるのは気のせいだろうか。


「おばあ様、そちらのルートはどうでしたか」


「大した魔物はいなかったけど、通常よりも強い魔物は出ているみたいね。エドワードはどうだったの?」


「こっちは、キングタウルスがでました」


「そっちは当たりだったようね」


 いや、外れだと思うのですが……。


「それよりも、キングタウルスがいた隣の部屋に大量の装備が山積みになっていまして、その中にイグルス帝国の騎士の物がたくさんありました」


「イグルス帝国のかい? 後で確認するわ。取りあえず今日はこのまま5階へ下りて。野営地にちょうどいい部屋を探そうか」


「分かりました」

 

 5階への階段はすぐ近くにあったので、みんなで下りて5階へ突入したのだった。

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