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第278話 アスィミの力?

 アスィミは指輪から、緩く湾曲した銀色に光るシミターのような剣を2本取り出した。どうやらアスィミは双剣を使うようだ。

 

 シミターは別名シャムシールともいうのだが、ペルシア語でライオンの尻尾という意味があるのだとか。果たしてライオン相手に通用するのだろうか……いや、相手ウサギだったな。


「アスィミがあんなにやる気を出すなんて、本当にライオン相手だと血が騒ぐのかな?」


「エディ様、実はニルヴァ王国へ出発する前の話なんですが、ジョセフィーナ先輩に今回役に立たなかった場合は、ソフィア様にお願いしてエディ様の担当を外してもらうと言われていました」


 リーリエが小声で教えてくれた。全然血は関係ないじゃん……。


 アスィミが双剣を持って近づくと、座っていたレオンラビットが、ゆっくり立ち上がる。


 アスィミは双剣を構える、逆手持ちなんだなと思った瞬間、アスィミは飛ばされ壁に叩きつけられた後、床に落ちた!


『――!』


「アスィミ!」


 アスィミの下へ行こうとすると、おばあ様に止められた。


「おばあ様、どうして⁉︎」


「まだ始まってもないんだから見てあげなさい」


「えっ!」


 壁に激突して致命傷を受けたと思われたが、アスィミはのそりと起き上がると。


「ちょっといきなり酷いじゃないですか! こっちはまだ準備中だったんですからね。百獣の王の風上にもおけません!」


 なんとも無いようだが、よそ見をしたアスィミが悪いと思う。後、ライオンじゃなくてウサギだからね。


「それにしても、ノーモーションで叩きましたね。私も油断して見えなかったです」


 アザリエはレオンラビットがアスィミを叩いたのが見えなかったようだ。


 それにしてもあのフワフワの(たてがみ)、欲しいな……相手の強さが分からないので綺麗に倒してとは言いにくいな。


「クロエ様ぁ、この魔物って美味しいのですか?」


 アスィミはもう食べる気のようだ。


「あたしも食べたことないけど、かなり美味しいという話らしいよ」


 ラビット系の魔物は大体美味しいと聞いたが、レオンラビットも例外ではないらしい。


「よし! ヤル気が上がってきました。覚悟しなさいっ!」


 アスィミは落とした双剣を手に取り構えたかと思った瞬間に、眼の前から消えた!


 消えたアスィミはレオンラビットの頭の上に現れ、両目に双剣を突き刺す。


 レオンラビットは痛いのか暴れだすが、アスィミは通路まで戻って来ていた。


「エドワード様、見てくれましたか?」


「見てたけど、勢いよく壁にぶつかってたのは、なんともないの?」


「アレぐらい全然平気です」


 アレぐらいって、銀狼族は凄く丈夫にできているのだろうか。


 レオンラビットはこうしてる間にも、両目に刺さった剣が抜けずに痛いのか暴れ続けていて、近寄るだけで危なそうだ。


「アスィミ、アレどうするの? 近づくの無理じゃない?」


「もちろんしっかり仕留めますよ。見ていて下さいね」


 アスィミが近づくと音で分かったのか、アスィミに向かって攻撃してくる。


 巨体にもかかわらず、かなり素早いが、アスィミの動きは更にその上を行き、攻撃を危なげもなく躱していく。


 アスィミはレオンラビットの攻撃を器用に躱し続けるだけで、一向に攻撃する気配がない。タイミングを見計らっているのだろうか?


 レオンラビットから、目に剣が刺さったままの苛立ちと、自分の攻撃が当たらない苛立ちからだろうか、攻撃が段々と雑になってきている。


「はっ!」


 アスィミは攻撃が雑になった隙をついて、目に刺さったままの剣に蹴りをいれた!


 刺さった剣はさらに深く埋まり、レオンラビットは動きをとめてそのまま倒れてしまった。


 蹴った剣が脳まで達したのだろう。


「やりました!」


 アスィミはVサインを決めるが、蹴りを入れたときにめくれたスカートがそのままになって下着が丸見えなので台無しである。

 

「なるほど、アスィミは素速さと頑丈さが売りというわけだね」

 

 おばあ様が感心している。

 

「凄い速さでしたね」


「いや、トップスピードはまだまだ上がるんでしょ?」


 えっ、そうなの!?


「そうですね、今ので5割ぐらいですかね。全力を出すにはここは狭すぎます」

 

 なるほど、確かにあれ以上速く動くと壁に激突しそうだな。


「ちょうど大物も倒したことだし、今日はこの部屋を使って野営をしましょう。浅めの階で一度確認しておいた方がいいわ」


『畏まりました』


 みんなは、おばあ様の言葉を聞いて野営の準備にかかるものと、レオンラビットを解体するものに分かれる。


 この階で一番大きな部屋を使って泊まるようだ。アザリエが持っていた地図によると、この部屋の通路を仮に塞いでも、上下への移動には問題ないので大丈夫だろう。


「エドワードは糸を使って、他の部屋への出入り口を全て塞いでくれるかい?」


「サンダースライムとアーススライム、アラクネーの糸の3重構造にしようと思いますが、どうでしょうか?」


「サンダースライムの糸はどうするつもりなのかしら?」


「一番外側に張っておけば、近づいてきた魔物を倒せるのじゃないかと思いまして」


「なるほど……いや、ダメね。張るならアーススライムの内側にしなさい」


「どうしてですか?」


「グレースがダンジョンに誰も入れないようには言ってたが、万が一誰かが入ってきてサンダースライムの糸に触れたらまずいでしょう?」


「なるほど、人が入ってくる可能性も残っているのですね。それでは、サンダースライムは使わないで、外側からアーススライム、アラクネー、カタストロフィプシケにしましょうか?」


「外側のアーススライムを万が一魔術で解除しても、アラクネーで絶対に通れないし、魔術を使っても内側のカタストロフィプシケで防ぐのね? 完璧な構造で、ちょっとした砦みたいね」


 おばあ様のお墨付きをもらったので、3ヶ所ある出入り口を全て塞いでいると、おばあ様は松明を出して何かしていた。


「おばあ様、何をしているのですか?」


「エドワード、もう終わったのね、仕事が早いわ。密閉した部屋で火を使っても大丈夫なのか確認していたのよ」


「なるほど、煙が部屋に充満してはまずいですもんね」


「そうね。それにしても、ダンジョンとは不思議な所ね、煙が天井の石の隙間から抜けていくわ、これなら火を使っても大丈夫よ」


 さすがおばあ様だな、こういうところは見習わなくてはならない。全然気にしてなかったが、酸素が薄い感じでもないから循環はしているのだろう。


「それじゃあ、この辺りにテントを出すからみんな離れて」


 みんなが離れたところで、ヴァッセル公爵領のファンティーヌへ向かったときに使ったテントを出すと。アスィミと騎士団の4人が驚いた。そういえば、この5人は知らないんだったな。

 実はあれからテントの改良版も作ったのだが、ちょっとこのスペースでは展開できないので、お披露目は次回になりそうだ。


「これがあれば十分に生活出来そうですね……」


 中に入ったアザリエが感想を述べる。さすがにテントなので長期間は無理だと思う。


 8人分のスライムベッド(ちょっと硬め)を並べ終わって、完成である。


「ベッドまであるのですね……」


「ここがダンジョンであることを忘れてしまいそうだわ」


 ヴィオラとアザリエが少し遠い目をしている。呆れているのではないと思いたいところだ。


 これで野営の準備は完璧だろう。


「エドワード様ぁ! レオンラビットの解体が完了いたしました」


 外からアスィミの声が聞こえる。倒したレオンラビットはアスィミ、シプレ、リーリエの3人で解体していたのだが、完了したようだ。


 確認のため、テントの外へ出ることにしたのだった。

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