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第27話 ヒミツの共有※

 商人ギルドを出た僕たちはカトリーヌさんの店に戻った。


 「さあ何を隠しているか話してもらうわよ!」


 帰ってくる間、後ろからホールドされていたので結局逃げられなかった……決して頭に乗っかっていたお胸様の誘惑に負けたわけではないとだけ言っておこう。


「分かりました。まずステータスに『モイライの加護』と『ミネルヴァの加護』という二つの【加護】があるんです」


「なるほど、【加護】なんて聞いたことないし、知らない名前の神様? なのかしらね」


「そうなんです。少なくともこの国で信仰している女神様ではないので、隠しておいた方がよいと思ったんです」


「確かにその通りだけど、商会名にしたのはどうしてかしら?」


「商会名として名が売れたときに、知っている人がいたら何かしらの反応があるのではないかと思いました」


「それは確かにそうね。商会名は最悪変えちゃえばいいからいいんじゃない?」


「商会名って変えられるんですか?」


「変えられるわよ。変更理由によってはギルドからの評価は当然下がるけど」


「それは知らなかったです」


「簡単に変えることができたら、悪いことを考える人が増えちゃうから公開してない規則なのよ。それで【加護】の他にもあるんでしょ?」


「はい、実は……」



 本当にカトリーヌさんを巻き込んでよいのか迷い、言葉を詰まらせていると。


「ほら私の心配はいらないから話してちょうだい」


「分かりました……その、ステータスの名前に家名があったんです……」


「家名⁉︎ そんなことが……でもそれなら隠したくなるのも分かるわ。ちなみに、なんて家名なの?」


「ヴァルハーレンです」


「ヴァルハーレンですって! 大公家じゃない」


「メグ姉がそう言ってました」


「ご当主様は昔お見かけしたことあるわ……優しそうな方でしたけど。あの人がエディ君のお父様なのかしら……」


「会ったことあるって、どんな人ですか? 僕に似てますか?」


「待って! 知ってることは教えてあげるから、少し落ち着きなさい」


 知っていると聞いて興奮の余り、カトリーヌさんに覆いかぶさっていた。


「あっ、ごめんなさい!」


「ふふっ、強引なエディ君も魅力的よ。知っていることは全て教えてあげるけど、ちょっと長くなりそうだから紅茶を淹れるわね」


 そう言うと、カトリーヌさんは紅茶を淹れて僕の前に置いた。僕が紅茶に口をつけだすと話し始める。


「そうね、何から話しましょうか。まず、ヴァルハーレン領が王都よりさらに北方にあるのは分かるかしら?」


「はい、それはメグ姉に地図を見せてもらったので」


「まず、私たちの住んでいるヴァーヘイレム王国は、隣接しているイグルス帝国とは仲が悪く、常に小競り合いをしている状態なんだけど、ヴァルハーレン家は国境を守護する貴族よ」


「強いのですか?」


「そうね、強いと思うわ。王国最強と言われてるぐらいだし。雷の魔術を使い『迅雷』と呼ばれて他国からも恐れられているの」


「迅雷ですか、カッコいいですね。糸の能力がショボイと思われて捨てられたんでしょうか?」


「7歳の祝福の儀まで能力は分からないから、その可能性は低いと思うけど王家の血筋を引いているから、もしかしたら何か調べる方法があるのかもしれないけれど……」


「王家の血筋なんですか?」


「そうよ、今の国王の従弟よ」


「従弟なんですか……その……仲が悪かったりするのでしょうか?」


「あぁ、権力争いとか気にしてるのね。それなら大丈夫よ、関係はとても良好らしいわよ。派閥も国王派だし」


「やっぱり派閥とかあるんですね」


「もちろんよ、大きく分けると国王派、貴族派、中立派の3つで、大公が国王派でその下の3つの公爵家がそれぞれ分かれているから、国王派が一番大きな派閥ね」


「カトリーヌさんは見たことあるんですよね」


「遠くからだけどね。髪の色はプラチナブロンドで瞳がグリーンだから、エディ君とは違うわね。大公夫人は見たことないから、母親似なのかもしれないわ。確か北方にあるニルヴァ王国の第二王女様だったかしら」


「王女様だったんですか?」


「そのはずよ。私の嫁ぎ先が貴族派だったから、そこまで詳しくは知らないのよ。国王派だったらもう少し色々分かったんだけど、ごめんなさいね」


「カトリーヌさんが知っている情報だけでもありがたいので、謝らないでください」


 二人とも紅茶を飲んで一息つくと。


「それにしても分からないわね。ヴァルハーレン領からこんな辺境の町までどうやって……」


「メグ姉も捨てたにしても、攫われたにしても遠すぎるって言ってました」


「大きな狼が咥えてたのよね?」


「そうらしいですね。魔の森で繋がっているのでもしかしたら狼が咥えてきた可能性も無いとは言い切れないって」


「確かに地図だけをみるとそう見えるけど、魔の森の中には深い峡谷などもあって簡単にはいかないわ。出来るだけ遠くに捨てたってのが一番現実的なのかしら?」


「僕もその可能性が高いと思います。でも確認はしてみたいので、商人として近くまで行って情報収集しようとは思ってます」


「そうね、正体はできるだけ隠した方がいいわね……」


「バレたら殺されるかもしれないですからね」



「そうだわ! エディ君の髪の色や瞳の色はこの国では見たことないから、ニルヴァ王国の特徴の可能性が高いのよね。だからニルヴァ王国出身の父が行商の最中に他界して後を継いで祖国に帰る最中って設定はどうかしら? ニルヴァ王国に向かう最中なら通り道だし、見た目が違うのも自然なはずよ!」


「そこまで考えてなかったです。僕ってそんな目立ちますか?」


「私って嫁ぐ前は王都のお店で洋服を作ってたのだけど、エディ君の特徴の人は一度も見たことないから、きっと目立つわね」


「そうなんですか、それならカトリーヌさんの設定で行こうと思います」


「その方がいいわ。念のためニルヴァ王国について調べておくから。あと布を売れるお店をいくつか紹介してあげるから旅立つ前には声かけるのよ?」


「何から何までありがとうございます」


「気にすることないわ。辛くなったら帰ってくるのよ? 私とメグは血縁関係こそないけれど家族みたいなもんなんだからね」


「分かりました。結果報告はちゃんとしますね」


「そうしてくれると嬉しいわ」



「そうだ! これで外套を作って欲しかったんです」


 そう言って黒色と青色の布を取り出してカトリーヌさんに渡す。


「お安い御用よ……ねえ、エディ君これ何の糸かしら?」


「えっ? もちろん、ジャイアントスパイダーの糸ですよ」


 カトリーヌさんが布を持ったままぷるぷるしている。それに合わせてお胸様も……。


「なんで色が付いてるのよ!」


「なんでって言われても、能力で色を付けられることはカトリーヌさんも知っているじゃないですか」


「そうじゃなくて、ジャイアントスパイダーの糸は色が染まらない糸なのよ!」


「……でも血で赤くなったやつありましたよ?」


「それは糸と糸の間に付着しているだけだから、洗えばすぐ落ちるわよ!」


 どうやらこの世に存在していないものを作り出してしまったようだ。


「それなら、色が付いてるので逆にごまかせますよね?」


「……確かにそうね。最悪、ただのスパイダーの糸ってことにすればごまかせるかしら?」


 ただのスパイダーの糸は染められるようだ。


「それならよかった! そこら辺の防具より丈夫って聞いてたんで作って欲しかったんです。あと、メグ姉とカトリーヌさんの服も作って欲しいんですけど、何色が必要ですか?」


「私とメグの?」


「僕の秘密を知ってるだけで危険かもしれないので念のために。目立つのがダメなら中に着るタイプでもありですよね?」


「そういうことなら分かったわ。私たちの分もお願いするけど、色はちょっと考えさせてもらえる? あと、何色か糸をお願いできるかしら」


「糸ですか、いいですけど、何に使うのですか?」


「取りあえず、エディ君の外套用よ。布と同じ糸じゃないと強度がでないでしょ?」


「なるほど、確かにそうですね! 何色出しますか?」


 結局、今出せる色すべての糸を出すまで帰れなかったのでした。足りない色を登録してくるようにとの宿題まで貰って……。



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 カトリーヌさんのイメージ画像です。

挿絵(By みてみん)

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