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第26話 商人ギルドとランクアップ

 カトリーヌさんと商人ギルドへ向かいながら能力について考える。


 ・糸や布は現状制限なく取り込み、登録できる。

 ・服などの製品は取り込みできない。(できるのは単一素材の布まで)

 ・魔物素材は取り込みできない。(魔物が出した糸は可)

 ・イメージした場所から糸を出すことができる。(触っていなくても可)

 ・触っていれば糸を自由に操作することが可能。


 まとめるとこんな感じだろうか、自由に動かせるということは、色々とできる幅が広がるなと考えていると商人ギルドに到着した。


 ビアンカさんのところに行くとカトリーヌさんが話しかける。


「ねぇ、ビアンカ。例の件で提案があるんだけど」


 ビアンカさんはカトリーヌさんの後ろにいる僕の方を見てから答える。


「分かりました。個室の方に行きましょう」


 ビアンカさんの後に続いて個室に入る。


「カトリーヌ様、提案とは一体何でしょうか?」


「ジャイアントスパイダーの糸だけどエディ君に任せてみない?」


「エディ様にですか? 確かに討伐されたのはエディ様だと伺っていますが……」


「ビアンカはエディ君の能力について何か知ってるかしら?」


「確か糸という前例のない能力だと聞いてます」


「やっぱり知ってるのね。でも糸を動かせることが出来るってのは知らないでしょ?」


「糸を動かせるですって⁉︎」


「まぁ魔力の消耗が激しくて長くは持たないらしいけど、それでも糸の先端さえ見つけられれば巻き取りできるでしょ?」


「そうですね、糸の先端が見つからなくて困ってましたから、そうしてもらえると助かりますね。ちょっとギルドマスターに相談してくるので待っていてもらえますか?」


「ええ、いいわよ」


 ビアンカさんが部屋を出ていくと。


「やっぱり能力の情報が出回ってたでしょ?」


「本当ですね」


「商人たちにとって情報は生命線だから早いのよ」


「でもどうして魔力の消耗が激しいとか嘘を言ったんですか?」


「あら、何でも馬鹿正直に言えばいいってもんでもないのよ。能力について全て隠し通すことは不可能なんだから、探られる前に情報提供すればそれ以上は探ってこないでしょ? それにデメリットを付け加えとけば、いいように使われることもないから都合がよいじゃない? 魔力の消費量なんてエディ君以外分からないんだし」


「なるほど、僕のためにそこまで考えてくれてたんですね。ありがとうございます」


「当たり前よ。エディ君は私の子みたいなもんだし、なんなら私の子になってくれても良いんだからね!」


「それいつも言ってるんですけど本気だったんですか?」


「あら、本気に決まってるじゃない。何だと思ってたのかしら?」


「メグ姉を揶揄ってるだけだと思ってました」


「反応がおもしろいからそれも少しあるけど。私ね……貴族に嫁いだことがあったのよ……」


「えっ、そうだったんですか?」


 それは知らなかった!


「その時に子供が産まれたのだけどすぐに死んじゃってね……私が悪いって追い出されちゃったのよ」


「そんな……」


「実家に戻って絶望していたところに、お乳をあげて欲しいってエディ君を抱えたメグが現れたの。最初はふざけるなって言ったのよ、だって私の子にあげるはずだったお乳をどうして何処の誰かも分からない子にあげなきゃならないのって。でもその後も毎日訪ねてくるメグを追い返したの、酷い女よね」


「……」


「そんなメグが訪ねてこなくなって……初日は清々したけど、次の日には赤ちゃんに何かあったのではないかと心配になって、その次の日にメグの様子をこっそり見に行って自分の愚かさに後悔したの」


「メグ姉は何をしてたんですか?」


「メグはね……あなたに自分の命を分け与えてたのよ……」


「……!?」


「メグの体の中から光の玉が出てきたと思ったら、やせ細った赤ん坊に吸い込まれていったわ。直後にメグは倒れてね、6時間ぐらいは目を覚まさなかったわ」


「メグ姉は大丈夫だったんですか⁉」


「そうね、あまり大丈夫とは言えなかったわ、赤ん坊を拾ってからずっと続けてたみたいで、一人で立ち上がるのも困難だったの。私はメグと赤ん坊を家まで連れて帰って看病したのよ。赤ん坊のエディ君にお乳をあげながら、メグには勝てないかもしれないけど、二人目の母親になろうと誓ったのよ。だから私の事は軽蔑してくれてもいいけど、信じては欲しいかな?」


「感謝しても軽蔑なんてしませんよ! 二人のおかげで今ここにいるんですから」


「ふふふ、ありがとう。でも感謝してるなら隠し事は嫌かな。祝福の儀で能力以外にもなにかあったんでしょ?」


「分かるんですか?」


「もちろん母親だもの。今回はメグの方が隠しきれてないってのもあるんだけどね。命にかかわるんでしょうけど、仲間はずれの方が死ぬより嫌よ」


「……分かりました。カトリーヌさんのお店に戻ったらお話しします」


「お願いするわね」


 ちょうどいいタイミングでビアンカさんが帰ってきた。


「お待たせしました。ギルドマスターから了承を得られたので移動しましょう」


 ビアンカさんの後をついていくと、そこは解体場のようで、ジャイアントスパイダーと戦った時に見た繭がいくつか転がっていた。

 

「エディ様は見たことがあると思いますが、ジャイアントスパイダーの繭です。繭といってもエサの貯蔵庫という表現が正しいのでしょうけど、ジャイアントスパイダーの糸はスパイダー系の中でも上位に入りますから、ギルドとしては出来るだけ長い糸を確保したいのです」


「へぇ、これがそうなのね。エディ君いけそう?」


「多分大丈夫だと思うのでやってみますね」


 そう言うと、僕はジャイアントスパイダーの繭に手を当てて念じる。


 すると、堅かった繭がほどけて中から冒険者らしき死体が出てきました……グロい。


 カトリーヌさんとビアンカさんは思わず口に手をあてるが、女としての体面は保てたみたいだ。


 次々に糸の先端を分かりやすく引き伸ばしていく。


「ふぅ、こんな感じでどうでしょうか?」


「エディ様、ありがとうございます。これで冒険者ギルドの連中に一泡吹かせられます」


「いえ、お役に立てたのならよかったです」


「それでは繭と冒険者の遺体を除いた分までの精算を一旦しますので、受付の方に行きましょう」


 受付に行くと精算を行います。


「マルグリット様から、ジャイアントスパイダーの魔石以外は精算してもよいと伺っておりますが、問題ございますか?」


「いえ、問題ありません」


「それではまず、こちらがジャイアントスパイダーの魔石になります」


 ビアンカさんが取り出した魔石は拳二つ分程の大きな魔石だった。


「結構大きいですね」


「この辺りの魔物の魔石としては特大サイズになりますね。続いてジャイアントスパイダー素材と子蜘蛛の方の魔石の精算になります。子蜘蛛は素材としての価値はありませんので魔石のみの買い取りとなります。ジャイアントスパイダーの素材が金貨100枚、子蜘蛛の魔石が1つ銀貨1枚となりますので132個で大銀貨13枚と銀貨2枚になります。支払いは現金かギルドカード振り込みのどちらになさいますか?」


「ギルドカードでお願いします」


「畏まりました。ギルドカードをお預かりいたします。あと今回のギルドへの貢献を高く評価しておりましてEランクへの昇格となります。Dランクとの案もございましたが、登録から間もないことを考慮してEランクとなっております。限りなくDランクに近いということを考慮して、引き続きギルドへの貢献をよろしくお願いいたします」


 帰ってきたギルドカードを確認すると、Eランクの文字が書かれていた。


【商会名】モイライ商会

【会頭】エディ

【ランク】E

【残高】金貨452枚、大銀貨25枚、銀貨2枚


「ありがとうございます。確認しました」


「それでは最後に、ジャイアントスパイダーの糸は、巻き取ったあとオークションへ出品することが決定しておりますので、オークションの売り上げの5割がエディ様のギルドカードに振り込まれます。冒険者の遺体及び装備品については、冒険者ギルドとの交渉後8割が振り込まれます。どちらもお時間がかかってしまいますが問題ないでしょうか?」


「はい、それで大丈夫です」


「畏まりました。 以上となりますので、引き続きよろしくお願いいたします」


 僕とカトリーヌさんはギルドを後にしたのだった。

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