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第256話 フィレール侯爵騎士団の装備(下)

 フィレール侯爵騎士団の新装備は、みんなにかなり好評のようだ。

 

「この布もエディ様が用意されたのですか?」


 アラクネーの糸で出来た布が気になったのか、アザリエが質問してきた。


「そうですね、僕の能力で出すことが出来る糸の中で、今のところ一番丈夫な糸で織った布になります」


「この間の温室も凄かったですが、エディ様の能力は、応用の幅が広いのですね」


 アザリエが感心していると。


「つまり、私たちはエディ様に包まれているという事ね!」


 リーリエ、それは違うと思うし、アザリエや他のみんなも『なるほど』と納得しないで。


「レギンさんの話を纏めると、騎士団みんなで動く際には胸当てや肩当てを着けて、それ以外の護衛などの任務では外してもよいということですね?」


「うむ、その通りじゃ。ガントレットには収納の魔石を仕込んで、武器を仕舞えるようにしてある。収納の魔石はガントレットから取外し可能にして、魔石の中に入れてあるバングルにも取り付け出来るようにしてある。どちらを使うかは各自で自由にするがよい。収納の魔石は装備と、あと少しぐらいしか入らないから注意するのじゃぞ?」


「収納の魔石!?」


 親衛隊のニジェルが驚き、その横でシプレが自分の武器を出して見せたのだが。


 どうやら、シプレの武器は大きなハルバートのようだ。シプレの母性には無限の力が詰まっているのかもしれない。それにしても、シプレは少し、胸当てが苦しそうに見えるな。


 シプレが武器を出したのを見て、みんな一斉に自分の武器を確認し始める。


 殆どのメンバーはロングソードやレイピア、長物ではスピアを使う人が多いように見える。その中でも目を引かれたのは、撫でられ隊のノーチェが持っている、柄の長い斧のような武器、バルディッシュだった。


 騎士団の中で一番身長も低く、見た感じでは僕と同じぐらいか、ちょっとだけノーチェの方が上ぐらいなのに、バルディッシュを持っているのはちょっと目立つというか異様だ。振り回すことが出来るのだろうか?


 それにしても、アラクネーの糸の特性を、まだまだ理解していなかったな。攻撃を受けると硬化するなんて、何て便利な布なんだろう。カトリーヌさんは、普通にハサミで裁断してたと思うのだが、その辺は攻撃判定にはならないという事なのか、服飾関連の加護を持っているからなのかは不明だな。


 まあ、スパイダーシルクの布でも、普通の人には針を刺すのも難しいみたいなので、加護の力が関係しているのだと思う。ワンダリングデススパイダーシルクはセリーヌさんでも扱えたが、アラクネーシルクはカトリーヌさん以外には加工することが出来ない。

 セリーヌさんは、かなり悔しがっていたので、余計な事ばかりを考えているからと釘を刺しておいたら、少しだけ改心したように見えたがいつまで保つことやら。今度エリー嬢に浄化してもらった状態で、加工することができるか試してみたいところだ。

 

 一通り装備の確認を終えた騎士団のみんなが、急に整列し始めた。


 各隊の隊長を先頭に5列で並び終えると、アザリエが一歩前に出る。


「エディ様に覚えはないでしょうが、あなたは私たちの恩人です。親に捨てられて絶望していた私たちは、赤子だったあなたに出会い、あなたの笑顔に心を癒され、私たちは人の道を踏み外さずに生きてくることが出来ました。今の私たちにとって、あなたに仕えることが誇りであり希望です。私たちはここに、改めて永遠の忠誠を誓います」


「ありがとう……みんなに相応しい主になれるように頑張るから、みんなもついて来て欲しい」


 これでフィレール侯爵騎士団が、それらしい形になった。残念な事に、騎士団長のアキラさんはツムギちゃんと共に、現在王都へ行っているため不在だ。ビアンカたちと、モイライ商会準備のために行っているのだが、かなりタイミングが悪いと思ってしまった。


 装備の確認は終わったのだが、何人かは調整が必要ということで、レギンさんやカトリーヌさんの工房へ向かって行った。もちろんシプレの胸当てもサイズを調整するとのことだ。


 

 ◆


 みんなと別れ、自分の部屋に帰って来た。ジョセフィーナとアスィミだけでなく、本日の護衛である、ハグし隊のシスルとデイジーは一緒について来ている。


 シスルは、ハグし隊リーダーで、赤紫色の髪でお団子ヘアにしていて瞳はブルー、母性は小さめだ。


 デイジーは、明るめのブラウン色の髪、肩にかかるくらいの長さで外ハネしている髪型。瞳の色はピンク色でとても珍しい。後で胸当ての調整が必要に見えるので、母性はかなり大きめだと思う。


「これが、噂になっているエディ様の部屋……」


「スー、ハー。スー、ハー」


 シスルがキョロキョロしながら呟き、デイジーが一生懸命深呼吸をしている……僅差で噂が気になるかな。デイジーについては、取りあえずスルーしておくか。


「つまりこれがシュヴェちゃん1号ですわね?」


「その通り、エドワード様が討伐された、シュトゥルムヴェヒターをぬいぐるみにしたものだ」


 ジョセフィーナが即答で答えるが、シュヴェちゃんってどうして知っているのだ? シュヴェちゃんの事を知っているのは……そういえば、帰り道でジョセフィーナに教えたような気がする。ジョセフィーナの方を見ると顔を背けたので、犯人決定というか、おそらく母様の主催の勉強会で話したのだろう。


「ところで2人は着替えなくて大丈夫なの?」


 フル装備は大変そうに見える。


「騎士団の正装なので問題ありません。それにエディ様が包み込んでくれているおかげで、全く寒くありませんし」


 シスルは当然といった感じで答えるが、寒くないのは僕が包み込んでいる訳じゃなくて、マグマスライムが付いてるからって、カトリーヌさんから説明あったよね?


「メイド服も衝撃的でしたが、騎士団の装備も騎士っぽさを残しつつも、斬新な仕上がりですね」


「カッコいいですよねー。これを着ているだけで、強くなったと思ってしまいます」


 ジョセフィーナとデイジーが騎士団の装備の感想を述べている。


「ジョセフィーナはどっちかというと騎士の格好の印象が強いから、騎士団の装備の方がよかったらそっちでもいいよ?」


「えっ!? 騎士団の装備をですか?」


 ジョセフィーナは、そう言うと考え込んでしまった。騎士団の装備を着けたい気持ちはあるけど、何か葛藤しているようだ。


「……このままメイド服で構いません」


 意外な結論だった。最初はメイド服を、こんなひらひらした服とか言ってたのに。


「ジョセフィーナさん、意外です!」


 アスィミが驚く。


「エドワード様の侍女は今のところ2人しかいないからな。アスィミはそのうちクビになる可能性もある、私だけでもしっかりお世話せねばならん」


「ちょっと待ってください! どうして私がクビになるんですか!?」


「逆に、どうしてクビにならないと言い切れるのだ? 普段の自分の行動を思い出してみたらどうだ?」


 クビになって当然という顔で、アスィミに言い返す。アスィミは目を閉じて考え込むと、次第に顔が青ざめていく。何か思い当たる節があるのだろう。


「えっ!? 嘘ですよね? 私クビにならないですよね?」


 焦ったアスィミが、僕に縋りついて来た。


「僕の人事権はフィレール侯爵騎士団だけだから。その辺りは母様が決めることだけど、真面目に仕事をしていれば、大丈夫なんじゃないかな?」


「その辺りが怪しいから、心配してるんじゃないですか!?」


 仕える本人を前にして、自信満々に言う事じゃないな。黙って立っていれば美少女なのにもったいない。


「アスィミさんがクビになるのでしたら、侍女枠も良いですわね……」


 シスルが呟いた。

 

「何を言ってるんですか!? エドワード様の侍女は譲りませんからね!」


 それを決めるのは僕じゃないので、なんとも言えないが、専属侍女って何歳ぐらいまでつくのだろうか? 今度母様に聞いてみようと思うのだった。

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