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第246話 冬の訪れ

 朝、部屋の中で目を覚ますが、いつもより暗く感じる。まだ起きるのが早かったのだろうか? スライムベッドから出るととても肌寒く、いつもより静かに感じる。

 

 木で作られた窓を開けてみると、冷たい空気が部屋に入ってきて頬を刺した。そこには驚くべき光景が広がっていた。雪だ! 真っ白な雪が降り積もっている、夜の間にどれだけ降ったのだろうか。庭や屋根どころか、目に映るすべてが雪に覆われていたのだった。


 窓枠に積もった雪を手に取ってみるととても冷たく、手の体温で溶けて行くのがわかる。

 

『エディよ、寒いではないか』


「ごめんねっていうか、ヴァイスは狼なのに寒いの?」


(ワレ)をそこらにいる野良狼と一緒にするでない。今では立派な室内狼だぞ!』


 室内犬なら聞いたことあるけど、室内狼って初めて聞いたよ。あと決して立派ではないと思う。


「室内狼って褒め言葉じゃないと思うけどね。初めて雪を見たからちょっとテンション上がっちゃたよ!」


『雪ぐらいではしゃぐとは、まだまだ子供だな』


「ヴァイスは見たことあるの?」


『もちろん雪ぐらい見たこと……そういえばないな』


「そうなんだ、北欧神話って寒そうなイメージだから、飽きるぐらい見てるのかと思ったよ」


『我はアースガルドっ子だぞ、閉じ込められていたのも、アース神族の奴らがスポーツを楽しむアームスヴァルトニル湖にあるリュングヴィ島で昼寝にはピッタリの気候だ!』


 アースガルドっ子ってなんだ? 江戸っ子みたいなもんなんだろうか。


「アームスヴァルトニル湖って神がスポーツを楽しむリゾート地みたいな感じ?」


『その認識で間違いないだろう』


 なんだろう。繋がれていたとはいえ、リゾート地だと一気に悲壮感みたいなのは薄れるな。


 ヴァイスと会話していると、ジョセフィーナが入ってくる。


「エドワード様、おはようございます。今朝は随分早くに起きられていたのですね?」


「なんだか静かだなと思って目が覚めちゃってさ、外を見たら雪が積もってたんだよ!」


「外を見られたんですね、仰る通り雪が積もって、朝から雪かきの作業に追われている者も多いです」


「そうなんだ、結構積もっているみたいだけど、どの位積もったのかな?」


「1メートルぐらいですね」


「そんなに積もったの!?」


「エドワード様、ローダウェイクで1メートルの雪は普通でございます」


「そんなに積もると、雪かきも大変そうだね?」


「プレジール湖の水を撒いて溶かしたりするのも併用しておりますので、城の者は慣れているのかと」


 なるほど、プレジール湖の水は地下から湧き上がっているから、一年を通して水温が安定していると言っていたな。


「朝食を食べたら外に出てみるよ!」


「畏まりました」



 ◆


 朝食を食べる、父様は雪の状況を把握するため、朝早くから仕事をしているので不在だ。


「エディは雪が降って嬉しそうね?」


 メグ姉が僕の顔を見て話しかけてくる。


「雪を見たのは初めてだから。早く外に出てみたくてね」


「コラビは一年中暖かかったから、慣れるのにしばらくかかりそうだわ」


「私もそうね、これだけ寒いと指先が思うように動かなくて、針仕事が大変だわ」


 カトリーヌさんもそうだが、雪に慣れていないコラビから来た人たちは順応するのに時間がかかりそうだ。


「マグマスライムが必要なら言ってくださいね?」


「そうね、後でお願いしようかしら」


「分かりました」



 ◆


 朝食を食べた僕はヴァイスと一緒に、除雪をしていない庭の方へ出てみると、降り積もった雪が目線の高さぐらいまであった。


「本当に1メートルぐらい積もっているんだね!」


『フワフワで美味そうに見えるぞ』


「シロップをかけたら美味しそうだね?」


『シロップというのにも興味はあるが、この間パルフェにかけたソースが合うと思うのだ』


「マンゴーソースのこと? 確かにあれも合いそうだね。今度やってみようか?」


『それは楽しみだ!』


 糸を使い壁を少し登ると、雪に向かってダイブしてみる。


「エドワード様!」


 心配したジョセフィーナには悪いが、雪がふわふわで結構楽しいな。


 しかし、起き上がろうとしたその時、背中に雪が入ってしまったのだ。


「背中が!」


 ジョセフィーナは僕のそばに駆けつけると、僕に付いた雪を掃うが、ジョセフィーナも雪まみれになってしまった。悪いことをしたな。


「エドワード様、あまり無茶はおやめください」


「ごめんね、ふわふわの雪を見たら、ついやってみたくなって」


「私も子供の頃に、やってみた事がありますので、気持ちは分かりますが、糸を使って壁に登るのはやり過ぎかと」


 ジョセフィーナの言う通りだな。


「それにしても、たくさんの雪を除雪するのは大変そうだね?」


「プレジール湖の水も使いますが、風の魔術を使える者が飛ばしたりもしますので、そこまでではないかと」


「なるほど、風の魔術をつかうのか」


 確かに降り積もった雪はパウダースノーなので、風で飛ばした方が早そうだ。


 雪を掴み握って雪玉を作る。雪を使った遊びといえば雪合戦、雪だるま、かまくら作りか。山に行ってスキーやスノーボードというのもあるが、道具が必要なので今回は却下だな。


 手に持った雪玉を大きくしようと雪をくっつけてみるが、雪がサラサラで上手くくっつかない。そこで降り積もった雪に水魔法を使って霧吹きしてみる。


 少し湿った雪は簡単にくっつけることができて、雪玉はさらに大きくなった。


 雪玉を転がしてどんどん大きな雪玉を作って行き、あっという間に僕より大きな雪玉が出来上がったのだ。

 

「エドワード様、この大きな雪玉をどうするのですか?」


 出来上がった雪玉は、直径1メートル50センチぐらいだろうか。通常ならこれにもう1サイズ小さい雪玉を乗せて雪だるまの完成なのだが、それではおもしろさに欠けるような。


 小さい体のためステータスの数値通りの力が出ないとはいえ、地球上の怪力自慢よりは遥かに強い力を持っているのは確かなので、まずはベースとなる雪玉を2メートルぐらいの大きさにして。次に、1メートル50センチぐらいの雪玉を作り。蔓を使ってベースの雪玉に乗せると通常の雪だるまが完成する。


 ここから小さな雪玉をどんどんくっつけたり、糸で削って形を整えたりすること数時間、ついに巨大ウルス雪像が完成したのだった。


『おお! エディ凄いではないか!』


「エドワード様……」


 ジョセフィーナもあまりの出来に、声にならないようだ。決して呆れているわけではないと思いたい。


「この大きなウルスはエドワードの仕業か……」


 帰って来た父様がウルスを見て()()している……はずだ。


「なかなか良い出来だと思うのですが、どうでしょうか?」


「……確かに良い出来ではあるけど、何のために作ったのかな?」


「何のため? ……特に意味はないですけど、あえて言うなら、作ってみたかっただけですね」


「作って見たかっただけで、ここまで大きな物を作るのはエドワードらしいな」


「ありがとうございます」


「……」


 アレっ? 今のって褒めてる流れじゃないの?


「あら、エドワード見事な雪像ね? 雪像なんて懐かしいわ」


 母様がやって来たのだが、そんな薄着で寒くないのだろうか?


「母様は寒くないのですか?」


「あら、ニルヴァ王国はもっと寒いから、このくらいは寒いうちに入らないわ」


 ニルヴァ王国ってそんなに寒いのか! 絶対に行きたくないな。


「フィア、ニルヴァ王国では雪像を作るのかい?」


「冬は雪に埋もれてしまうニルヴァ王国での楽しみの1つよ。様々な雪像を作って神鳥に見てもらうのだけど、ここまで大きくて精巧に作ってあるのは初めて見るわ」


 ちょっと調子に乗って大きくし過ぎたかな。それにしても、ニルヴァ王国は寒いけどほのぼのとしたイベントもあるようだ。


「それじゃあ、エドワードの中に流れるフィアの血が騒いだのかな?」


「関係ないと思うわよ?」


「そうなのかい?」


「ええ、だって私は一度も作った事ないもの。それにあのイベントあまり好きじゃないのよね、折角作っても神鳥が気に入らない雪像を破壊しちゃうから」


 前言撤回、思ったよりハードなイベントだったようだ。

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