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第245話 美白液と美容液

 毒の件は美容絡みという事で、細心の注意を払って実験していたのに、結局バレてしまった。


 まあ、急におじい様がツヤツヤになれば、バレるのは当たり前なのだが。


 当然みんなも直ぐに使いたいと言い出すが、副作用などの研究がまだだと言うと、大人しく引き下がったのは意外だった。


 まあ冒険した結果、肌が荒れては意味もないので、正しい判断なのだろう。


 しかし、それで終わるほど女性たちの美への追求は甘くないのである。


 直ぐに母様とおばあ様は動き、実験体となってくれる人を探したのだ。


 当然守秘義務も生じるので、信用のおける人物が必要になる。そこで白羽の矢が立ったのは、メイド長のハンナさん(45歳)と、騎士団長フォルティスさんの奥さんであるケイティ・グロースさん(40歳)である。ケイティさんは商人ギルドにいるアリアナさんのお母さんでもあるので、綺麗な奥様といった感じである。


「ケイティにハンナ悪いわね?」


「クロエ様の御役に立てるのであれば、このケイティ、命も惜しくありませんわ」


 命に係わるものでもないと思うのだが、おばあ様はいったい何て言ったのだろうか?


「ケイティ様、エドワード様の実験は何も恐れるものはないかと思われます」


「あらハンナ、そうなの? そういえばハンナ、前に会った時よりも少し活力に溢れているかしら?」


「お気づきですか? 詳細は申し上げられませんが、これもエドワード様のお陰でございます」


 そこまで言ったら、もうほとんど答えを言ったのと同じじゃないだろうか?


 スライムベッドを使うようになってから、ハンナさんの体調は当社比で7割増しをキープし続けているという話だ、情報源はアスィミなので信用性に欠けるが、見るからに調子が良さそうなのは確かだ。


 

「それではエドワード、二人に使い方を教えてあげてもらえるかしら?」


「分かりました、二人に試してもらいたいのはこの2つです、1つは美白液、もう1つは美容液と名付けました」


「美白液に美容液ですか? 名前から察すると美容に関係する物のようですが」


 ケイティさんが答える。


「美白液はシミなどを薄くして白く綺麗な肌にしていく薬で、美容液は肌に潤いを与え、瑞々しい肌を保ちシワなども減らす効果が期待できる薬です」


「「そのような薬が!?」」


「そうですね、既におじい様が実験してみてかなりの効果がありましたので、あとは使用頻度による効果やトラブルがないかを検証することになりますね」


「なるほど、アルバン様が若返ったとメイドたちが噂していたのは、エドワード様の仕業でしたか」


「えっ!? おじい様の件ってそんなに噂になっているの?」


「もちろんでございます。特に結婚適齢期を過ぎている者たちにとっては深刻な問題ですので、非常にそういった話題には敏感でございます」


「そうなんだ、二人とも、今回の件はたとえ家族であっても内緒にしなければならないけど大丈夫で……」


「「大丈夫です!」」


 言い終わる前に返事してきた。


「二人とも、娘さんがいると……」


「「問題ありません!」」


 二人とも返事が早すぎるな!


「それでは使い方ですが、最初に美白液、次に美容液の順で使ってもらいます。それぞれの液はこのコットンに染み込ませて、肌を優しく叩くように塗ってください」


「「畏まりました」」


「そうだ、二人には顔が見やすいようにこの鏡も渡しておきますね」


 二人に木の持ち手のついた直径30センチの手鏡を渡す。


『――!』


「エドワード? この鏡は何?」


 母様の前でこの鏡を出せばそうなるのは予測済みだ。


「これもレギンさんと開発中のガラスを使った鏡ですね」


 正確に言うとガラスは直径30センチ、長さ5ミリの糸なのでレギンさんはガラスを作っていないのだが、細かい事はまあいいだろう。持ち手や装飾の入った木の部分はもちろんリュングが加工している。


「私たちの分もあるのかしら?」


「もちろん、母様とおばあ様の分も用意してあります」


 二人にも鏡を渡す。透明ガラスが作れることになったので、鏡も実験的に作ってみたのだ。


 鏡を作る上で硝酸が必要になってくるのだが、毒の中にある酸毒の強さを自分でコントロール出来ることが発覚したので、硝酸と同じぐらいの酸にしてみたところ銀鏡反応を使った鏡を作る事に成功した。


 酸毒は酸の強さをコントロールできる毒だ。酸をコントロールすることにより、フルオロ酸もビックリするような超酸から、クエン酸のようなものまで作れてしまうことになるのだが、その辺りも今後詳しく実験が必要な毒の1つだ。


「エドワード、これは販売するのかしら?」


「今のところそのつもりはないです。レギンさんにガラスばっかり作らせるわけにはいかないですからね」


「そうね、ハリーもガラス職人がなかなか見つからないと言っていたから、こればかりはしょうがないのかしら?」


「金属を磨いた鏡と違って、落としたら割れますので気をつけてくださいね」


 そう言うとみんな頷く。


「それでは、美白液と美容液を1日1回塗って取りあえず3日、7日、14日、30日で違いを見てみる事にしましょうか?」


「肌の良し悪しはエドワードに分からないでしょうから、(わたくし)とお義母様で見ましょう」


「そうしていただけると助かります。それでは肌が荒れるようであれば、直ぐに使用を中止するようだけ気をつけてください」


「「畏まりました」」


「二人とも、早速使ってみたらどうだい?」


 おばあ様がそう提案すると、二人は美白液をコットンにしみ込ませて顔に塗り始める。


「クロエ様! 前から気になっていたシミが薄くなりました!」


 ケイティさんがそう言うと、おばあ様が確かめている。


「なるほど、一気に無くなる訳じゃなくて、徐々に薄まっていくのね?」


「そうみたいです。おそらくですが、クールタイムが必要みたいなので、連続しても消えたりはしませんから」


「そうなんですね」


 薄まったシミにもう一度美白液を塗ったケイティさんに言うと、少しガッカリした表情を見せる。


 ハンナさんも美白液を塗り終わり、薄くなったシミに満足そうだ。


 次に二人が美容液を塗ると驚きを見せた。


「これは塗ると明らかに肌の張りがちがいますね!」


 ケイティさんより5歳年上のハンナさんの方が明らかに効果が高いように見える。


「ハンナ、明らかに肌が若返ったんじゃないかしら?」


「クロエ様もそう思いますか!?」


 少しだけ若返ったハンナさんに、おばあ様が凄く嬉しそうだ。


 おばあ様とハンナさんは同い年だ。若い時はハンナさんがおばあ様の専属侍女をしていたそうなので、二人しか分からない何かがあるのかもしれない。


 二人が塗り終わり、効果も確認できたので、後は経過を見守るだけだな。


「それにしてもエドワード、もうこれって完成しているんじゃないかしら? ここまでの効果があるのに、使えないなんて凄く悔しいわ」


「物としては完成していますが、どんな問題が起きるかは未知数なので我慢してください」


 そもそも、母様とおばあ様は必要ないと思いますよ! とは口が裂けても言わない……いや、褒め言葉なんだから言った方が良いのか?


 そのあたりの機微についてはこれから勉強していくことにしようと思うので、今回は黙っておくことにした。


 偶然の産物ではあるが、前回風呂で約束した美容液を作ることができたのだった。

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