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第244話 実験の副産物

 最近は毒の耐性についての研究のため、実験施設にいる事が多いのだが、実験による副産物とでも言おうか、思ってもいない物を作ってしまったのかもしれない。


 人体へ使う前に、別の生き物で実験してみたいのだが、この効果は魚では分かりにくいのだ。


「父様に一度相談してみるか……」


 いきなり母様に相談すると面倒な事になると、父様のDNAが騒いでいる気がするのだ。


 父様の執務室に移動する。


「父様、エドワードです」


「エドワードかい? 入っていいよ」


 執務室に入ると、父様一人だけだったようなので、ちょうど良い。


「エドワード、キョロキョロしてどうしたんだい?」


「父様に相談したいことがありまして」


「どんな事かな?」


 実験で出来た副産物の話をすると。


「……なるほど、確かにそれは大変な物を生み出してしまったようだね……」


「内緒にしておいた方が良かったでしょうか?」


「エドワード、女性たちの勘をバカにしてはいけないよ。特にフィアに関しては、勘なんて呼べるレベルではないからね。最初に僕へ相談したのは良い判断だよ」


「何か魚以外で実験に使えそうな生き物はいませんでしょうか?」


「一応、魚には使ってみたんだよね?」


「そうですね。死ぬことはないので、体への負担はないと思われますが、適量を知らないと使わせることもできないので」


「そうだね……死刑囚でもいれば良かったんだけど、ローダウェイクでは滅多に出ないんだよね」


「そうなんですね」


「そうなってくると、オークぐらいがちょうど良さそうだね、ルーカス!」


 父様が呼ぶとどこからかルーカスさんが現れた!


「ハリー様、お呼びでしょうか?」


「アキラは今どうしてるのかな?」


「騎士団団長のフォルティスやアーダム隊長と共に、エドワード親衛隊のメンバーを鍛えている最中でございます」


「それじゃあしょうがないね、父様を女性陣に悟られないように、呼んできてもらえるかな?」


「畏まりました」


 そう言うとルーカスさんが消えた! ルーカスさんのあんな動き見たことないんだけど!?


「おじい様と二人で行けば良いのですね?」


「いや、念には念を入れて僕も行くよ」


「父様も行くのですか!?」


「そうだね、エドワードと父様、僕の三人で行けば安全だろうし、実際にこの目で効果も見てみたいからね」


「分かりました」


 おじい様だけでも十分なのに父様までなんて! どこの軍隊と戦いに行くのだろうかってレベルだ。


 しばらくすると、おじい様がやって来たのだが、部屋に入ったのが全く分からなかった。


「エドワード、少し驚き過ぎではないか?」


「突然目の前に現れたらビックリしますよ」


「気配を消して来たからな。それでハリー、ここまでして何をさせるつもりだ?」


「実は……」


 父様がおじい様に説明する。


「そのような危険な物を生み出すとは……」


 あれっ? おかしいな……そんなに危険な物だっけ?


「それで父様、早速魔の森でオーク辺りを捕まえて実験したいと考えておりますので、一緒に同行お願いします」


「そういう事なら任せておけ。そうだな……もし女性陣に見つかり何か聞かれたら、エドワードの釣りを見に行くという事にするのだぞ?」


「分かりました」


「ルーカス、しばらく出かけてくるけどよろしく頼むよ」


「畏まりました。お気をつけて」


 ◆


 三人で船に乗り、プレジール湖を渡り魔の森を目指す。


「何とか船に乗ることが出来ましたね」


「うむ、エドワードは気配の消し方を覚えた方がいいかもしれんな」


「おじい様、それは僕も思いました」



 プレジール湖を渡り終えた僕たちは魔の森へ入ったのだが、明らかな人選ミスが発覚する。


 父様とおじい様、二人はどれだけ手加減しても魔物を瞬殺してしまうため、捕獲には全く役に立たなかったので、実験にちょうど良い魔物は僕が対応することになった。


『エディ、向こうからオークの臭いがするぞ』


 頭の上のヴァイスが教えてくれる。


「向こうからオークの臭いがするそうです」


「よし、そっちに向かおうか、一体ならエドワードが対応して、複数いるならその他のは僕たちで対処しよう」


「お願いします」



 ヴァイスが足を指した方へ向かうと、オークが三体いたと認識した瞬間には一体になっていた……父様とおじい様、二人とも倒すのが早すぎます。


 残った一体をアラクネーの糸で拘束し、睡眠の毒で眠らせる。


「エドワードの糸はいつ見ても凄いな」


「うむ、さすが儂の孫じゃ」


 瞬殺の二人に凄いと言われてもね。


「取りあえず捕まえたので、早速実験しましょう」


「警戒は儂らに任せて、しっかり実験しなさい」


 今回実験する毒は、乾燥と色素斑の2つだ。他にも実験したい毒は山ほどあるのだが、特にこの2つは緊急性を要すると判断した。


 空間収納庫から液体の入ったたくさんの瓶を取り出す。この瓶は毒の実験のためレギンさんに作ってもらったのだ。


 瓶の中には2つの毒を薄めたものが入っており、だいたい200ミリリットルに5ミリリットルの毒を溶かしてある。


 それに対し、その2つを浄化した液体が残りの瓶だ。毒の量は変わらないが、水の量は200ミリリットルから1リットルまで200ミリリットル刻みで用意した。


「それでは効果が分かりやすい、色素班から試してみます」


 オークの腹に色素班の毒を塗布してしばらく待つと、塗った部分に茶色いシミができた。


 直接毒を注入すると真っ黒になるのだが、薄めたものを塗るとシミになるようだ。


 今度はそのシミに、浄化済の物を塗布してみる。


 同じ濃度の物なら綺麗に消えるがそれより濃度が薄い物だとシミは薄くなるみたいだ、連続して同じところに塗っても効果はないようで、もしかしたらクールタイムが存在するのかもしれないな。


 

 色素班の毒に対する実験が終わったので、今度は乾燥の毒の実験に移る。


 この毒を魚に直接注入したところ、セリーヌさんが実験室で見た、ミイラみたいな魚が出来上がったのだ。


 まず、色素班同様、薄めた乾燥の毒を塗布してみる。


 オークの肌はカサカサになってシワができた。


 次に同じ濃度の浄化した毒を塗布すると、肌は元に戻る。


 この毒も濃度が薄い物は症状が改善していき、連続使用についても、同じように効果はなかった。

 

「実験としては成功したのかな?」


 実験を見ていた父様が質問してくる。


「そうですね、肌質の改善効果が確認できますね。おそらく人でも同じように効果があると思われます。濃度が高いものの方が効果は高くなりますが、副作用などがあるのかは、長期の実験が必要なので今すぐには分かりません」


「儂で試してみたらどうだ?」


「おじい様でですか? そんなのはダメに決まってます」


「なに、死ぬわけじゃないんだ、気にせず試してみよ」


「エドワード、父様がここまで言うのだから試してみたらどうだい? もちろん一番濃度が低いやつでだけど」


「……分かりました」


「よし、そうと決まればまずはシミだな。この辺りにシミがあるはずだ」


 おじい様が指差した所には確かにシミができている。もしかして意外と気にしているのだろうか?


 シミに1リットルで薄めた浄化済の色素班の毒を塗ってみると、シミは少しだけ薄くなった。


「どうだ? 変わったか?」


「少しだけ薄くなりましたね」


「そうなってくると、濃いやつが気になって来るな」


「そうですが、しばらくは一番薄いので様子を見ましょう」


「エドワードがそういうのなら仕方ないな、よし次のやつだな!」


 次は乾燥の効果を試してみよう。


 1リットルで薄めた浄化済の乾燥の毒を試してもらう事にしたのだが、おじい様は浄化の毒を手にかけると、そのまま顔に塗ってしまったのだ。


「おじい様、いきなり顔に塗るなんて危険です!」


 おじい様の顔は潤いが増し、シワも少し減ってしまったように感じる。


「これは薄めてあるのに、効果がはっきりしているね!」


「自分で触ってみても違いが分かる、肌が若返ったみたいだ!」


「おじい様……その顔で城へ帰ったら、おばあ様たちにバレてしまうじゃないですか!」


「「あっ!?」」


 おじい様だけでなく、父様まで忘れてたようだ。


「エドワードすまん! 同じ濃度の毒を塗れば、元に戻せるのではないか?」


「確かに理屈としては合ってますけど、折角肌が若返ったのに、わざわざ老化させるのもどうかと思いますので、このまま帰りましょう」


「そんなことしたら、儂クロエに怒られそうなんだが?」


「ここは正直に話して怒られましょう。どの道、母様に嘘は通用しないんですから」


「そうだね、父様ここは諦めましょう」


「嫌だ! ソフィアはまだ優しいからそんなこと言えるのだ! クロエが怒ったら怖いのだぞ!」


「さあ、父様帰りましょう」


「そうだね、そうしようか」


 最後まで諦めの悪いおじい様を連れて、城へ帰ったのだった。

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