第240話 エリー探検隊(上)
エリー探検隊は僕の部屋を出て、次なる秘境を目指す! ……多分だけど。
ノワールとエリーで話し合った結果、ベッドで寝た件は無かったことで落ち着いたのだが、ベッドの持ち主の前で相談されてもね。
エリー嬢は訓練場や色々な所を周りながら、ある建物の前で止まった。
『この建物が気になります!』
「ここは、洋服やぬいぐるみを作っている工房ですね。入ってみますか?」
「『ぜひ!』」
「カトリーヌさん、居ますか?」
「あら、エディ君。どうしたのって、ノワール様に、エリー様じゃない?」
「ええ、お城を探検しているのです。工房の中を見たいそうなんですが、入っても大丈夫ですか?」
「ええ、いいわよ」
二人共、目をキラキラさせて中を見ていたのだが、セリーヌさんを見た途端急に驚き怯えだした。
「どうしました?」
『エディ様、大変です!』
突然、エリー嬢はそう叫ぶと、僕とセリーヌさんの間に入り両手を広げると!
『スペクターが見えました! エディ様はエリーが守ります!』
スペクターと言えば害のある死霊じゃないか!? エリー嬢は怖いのか、小刻みに震えていた。
「どこですか!?」
エリー嬢とノワール嬢、二人が指さした方向にはセリーヌさんがいる。
「えっ!? この人はスペクターじゃなくてセリーヌですよ?」
『知ってますけど、セリーヌはこの間、死んじゃったじゃないですか!』
「えっ!? セリーヌ死んじゃったの?」
「エドワード様はいきなり何を言いだすのよ? 私は死んでないわよ!」
「ですよね? 二人はどうしてセリーヌが死んでると?」
◆
二人から説明を受けて謎が解けたのだが。
「「「……」」」
「つまり二人はエディ君を作ったセリーヌは、既に殺されていると思っていたんだね?」
二人が頷く。
「アレだけの物を無断で作ったのです、エドワード様が許しても、エドワード様の周りが許すはずありませんもの!」
「姉さん、毒キノコだけで助かったわね?」
「毒キノコを食べたのですか!?」
セリーヌさんが頷くと。
『やはり昇天出来なかったのですね! エディ様はエリーが守ります! スペクター退散!』
エリー嬢がそう叫ぶと、突然エリーの目がキラキラと輝きを放つ!
「何よ!? 何が起きてるの!」
セリーヌさんが目の輝きにビックリした後、急に倒れてしまう。
「姉さん! どうしたの!?」
カトリーヌさんが、セリーヌさんを揺さぶるが起きる気配はない。
「えっと、エリー? 今のは何?」
『突然眩しくなったのです!』
エリー嬢も理解してないみたいだな。
「エリー、あなたの目が輝いてたわよ?」
ノワール嬢がエリーに説明した。
『エリーの目がですか?』
「もしかして、本当にスペクターだったの……か?」
「ん……あれっ? 私どうしたのかしら……」
セリーヌさんが生き返った!
『水色になったです……』
水色?
「姉さん、大丈夫!?」
「あらカティ、そんなに慌ててどうしたのかしら? 私ならこの通り大丈夫よ」
そう言って微笑んだセリーヌさんは、聖母のような慈愛に満ちた表情だった……誰だこの人?
「エディ君、姉さんが変だわ」
「確かに変ですけど、これはこれでありなような……」
『エリーはスペクターを浄化しちゃったですか?』
「ちょっとエディ君、こんな姉さんは気持ち悪くて嫌よ」
「もうカティったら、姉の私に向かって気持ち悪いはないんじゃない?」
「……」
このセリーヌさんは一体誰なんだ? 一応確認してみよう。
「セリーヌ、母様から依頼されたぬいぐるみはどうですか?」
「もちろん、もう完成していますよ。あとはカティが服を作れば、完成しますわ」
そう言って、セリーヌさんが完成したばかりのエディ君とハリー君のぬいぐるみを見せるので確認してみる。2つ共肌着を着ていて、その肌着もしっかり縫い付けられていて脱げそうな気配はないし、中に仕掛けもない完璧な仕上がりである。
「変な機能はついてないようですね?」
「エディ君の件は大変反省しております、もう二度とあんな過ちはいたしませんわ」
そう言ってセリーヌさんは深々と頭を下げた。こんなしおらしいセリーヌさんは……よくよく考えれば、これでいいのかもしれない気がしてきた。
「よく分からないですが、こっちが本物のセリーヌということにしておきましょう!」
「そうね、言われてみれば、確かにこっちの姉さんの方が物静かでいいわ」
『こっちはエディ様のお父様のぬいぐるみですね! よくできています』
「本当ね。死んでいなかったのなら、セリーヌコレクションはまた発売するのかしら?」
「エドワード様にご迷惑をかけてしまいましたので、セリーヌコレクションはしばらくお休みいたしますわ」
このセリーヌさんイイネ!
『それは残念ですの。エリーのぬいぐるみも作って欲しかったです』
「エリーのぬいぐるみですか?」
「最初にエドワード様が質問されたように、ままごとをしたりいたしますので、エリーや私のぬいぐるみが欲しいと言っていたのですわ」
「そういう事なんですね」
「エドワード様の許可がいただけるのなら、お詫びにお作りいたしますけど?」
『本当ですの!?』
エリー嬢が身を乗り出した。自分のぬいぐるみが欲しいという気持ちは分からないが、凄く欲しいみたいだ。
「ほらエリー、エドワード様が許可しないとダメなのよ?」
『エディ様、ダメですか?』
この、虹色のキラキラした瞳で見つめられてノーとは言える精神力は、まだ僕には備わっていない。
「変な物を売りつけたセリーヌが、お詫びすると言っているので良いですよ」
『エディ様、大好き!』
そう言ってエリー嬢が抱きついて来る。これは貴族としてどうなんだろうか?
「エリー様はエドワード様のことが好きなんですね? エドワード様、それではいつもの絵を、お願いできますでしょうか?」
「エドワード様、絵というのは?」
ノワール嬢が質問してきた。
「ぬいぐるみのデザインは、僕が描いているのですよ」
「そうだったのですね!?」
元々この世界にもぬいぐるみが存在するが、お世辞にも可愛いとはいえないので、ウルスのようにディフォルメしたデザインを僕が描いていたのだ。エディ君のデザインは、ディフォルメ化の練習の参考にしたいからとか言われて描いたのだが、見事に騙された形になる。
「よろしければ、2人が居るうちに下絵を作りたいのですがいいですか?」
『はいです!』
「それではエリーから描きますね」
エリー嬢を見ながらディフォルメ化していく。エリー嬢は髪型がホワイトブロンドのツインテールなので、ぬいぐるみにしても分かりやすいだろう。
「こんな感じですね」
「エドワード様、凄いです! 絵もお上手なんですね!」
ノワール嬢が褒めるが、ぬいぐるみ的な絵なので、大したことはない。
『これがエリーのぬいぐるみになるのですね!』
「エドワード様、エリー様の目はどういたしましょうか?」
「虹色をどうするかですね? 確かに特徴的なので、何かアクセントを入れたいですね」
エリー嬢の瞳をじっくり観察してみる。何かいい案はないだろうか?
『エディ様?』
「そうですね、この後マーウォさんの所に行ってみることにします。何かいい宝石があるかもしれませんから」
「畏まりました」
セリーヌさんが『畏まりました』と言うと、違和感が半端ないな。
「それでは、次はノワールの番ですね」
「お、お願いいたします」
ノワール嬢は緊張しているのか、頬を赤く染めている。
彼女の長い黒髪に関しては、王国内ではおそらく他にはいないので、ぬいぐるみにしても一目でノワール嬢と分かるだろう。
『ノワールのぬいぐるみ、とても可愛いです!』
エリー嬢もノワールのぬいぐるみ原案を気に入ったようだ。
「こんな感じで、どうでしょうか?」
「これが私ですか!? 少し可愛く描き過ぎている気もしますが……」
照れているが、どうやら気に入ってもらえたようだ。
「エドワード様、マーウォさんの所へ行くのなら、ノワール様の目もお願いできますか?」
「分かりました。ノワールに関してはアメシストがピッタリだと思いますので、その中でも良い物を探してきますよ」
「お手を煩わせて申し訳ございません」
このセリーヌさん、パーフェクトだな。
セリーヌさんの浄化に成功したエリー探検隊は、ついに魔王城へ向かうのだった。




