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第238話 実験施設の拡張工事

 早く実験施設の拡張をしたい僕とレギンさんは、父様の執務室へ向かう。


「父様、エドワードです」


「入っていいよ」


 執務室の中に入る。


「おや、レギンまで一緒ということは、何かあったのかな?」


 シュトゥルムヴェヒターの研究施設を作るために、実験施設を拡張する説明をした。


「なるほど、プレジール湖の水中にね……」


 さすがの父様も考え込んでいる。


「駄目ですかね?」


「少し考えていただけだよ。エドワードの能力は、成長が早すぎて理解が追いつかないね。まず、ピウスフリーシアンの小屋というのも見てないのだけど、この間エミリアから連絡があった件だよね?」


「そうですね。父様の代わりにということだったので、張り切って作りました」


 父様は頭を抱えると。


「エミリアからは上手くいったとしか聞いてなかったけど、そういうことになっていたとは……ルーカス、悪いが後から視察に行く予定を追加しておいてくれるかな?」


「畏まりました」


「それで、試しに作った小屋は、今見ることができるんだよね?」


「はい、実験施設の方にあります」


「見に行こうか。ルーカス悪いが、母様を実験施設の方へ連れてきてくれるかな?」


「畏まりました」


 そういうとルーカスさんは、おばあ様を呼びに行った。


「僕たちも実験施設の方へ移動しようか?」


「父様、おばあ様を呼んだのはどうしてでしょうか?」


「プレジール湖はヴァルハーレン家と関わりが強いから、母様にも一度確認しておいた方がいいと思ってね」


「そうだったんですね」


 実験施設でしばらく待っていると、おばあ様が到着した。


「あたしの判断が必要なことなんて、まだあったかい?」


「まずはエドワードの話を聞いてもらえますか?」




 おばあ様にシュトゥルムヴェヒター研究施設の話をすると。



「プレジール湖の中に研究施設とは、随分とぶっ飛んだ発想だね?」


「レギンさんのアイディアです」


「小僧の能力がないと作る事なんて無理だからな?」


「エドワード的には作っても問題なさそうかしら?」


 おばあ様が僕に尋ねる。恐らくエンシェントウルフ的な存在の事を言っているのだろう。


「そこまで深くに作るつもりはないので大丈夫だと思いますが、実際のところは作って見ないと分からないですので、しばらくの間シュトゥルムヴェヒターは研究する時だけ空間収納庫から出そうと思っています」


「そこまで考えてあるのなら、エドワードに任せるわ」


「おばあ様、ありがとうございます」


「だけど十分注意するんだよ?」


「分かりました」


 父様が蔓で作った小屋を触っている。


「これだけの小屋を一瞬で作れるなんて、不足している住居問題も解決できそうだね?」


「住居が不足しているんですか?」


「ローダウェイクだけじゃなくて、ヴァルハーレン領全体で不足しているね、大工が休みなしで頑張っているみたいだけど、追いついていないかな」


「僕が作ってもいいんですが、見栄えもあまり良くないですし、大工の仕事を取っちゃうのもどうなんですかね?」


「なるほど、確かに大工の仕事を取ってしまうのはまずいから、大工と調整してみるよ」


「分かりました。必要ならいつでも言ってください」



 父様とおばあ様が帰って行ったので、早速施設の拡張に取り掛かる事にした。



「この施設は最初から地下室が用意されているようじゃな」


「本当ですね。僕も知らなかったです」


「よし、この地下から更に穴を掘り、出来た空間に小僧の蔓を敷き詰め部屋を作り、斜め下に広げて行くのだ」


「斜め下に広げるんですか?」


「そうじゃ、湖の中とはいえまだまだ浅い、もっと深くに作らないと上から見えてしまうからな」


「なるほど、それではまず穴を掘らなければいけないんですね?」


「そうなんだが、そのまま普通に掘っても時間がかかると思わんか?」


「確かにかかりますが、何か良い魔道具でもあるのですか?」


「魔道具は無いな。儂は小僧の能力でなんとかなると思っているのだが」


「僕の能力でですか?」


「そうじゃ、出来そうなのがあったろ?」


 地面を掘る能力……そんなのあったかな? 取りあえず能力を見てみよう。


【能力】糸(Lv7)

【登録】麻、綿▼、毛▼、絹、ガラス、パスタ

【金属】純金属▼、合金▼、ミスリル

【特殊】元素、スライム▼、スパイダー▼、カタストロフィプシケ、蔓、ファンタジー▼

【付与】毒▼、魔法▼

【素材】カタログ

【形状】糸、縄、ロープ、網、布▼

【裁縫】手縫い▼、ミシン縫い▼

【登録製品】カタログ

【作成可能色】CMYK

【解析中】無


 見てみた感じではそれらしい糸は見当たらないけど……。


「タングステンの糸で地面に穴を開けまくって、蔓をスコップみたいにして掻き出しますか?」


「それじゃあ普通に掘るのより、ちょっと便利なぐらいだろうが。アーススライムの糸を使えただろう?」


「アーススライムは使えますが、糸を硬化させて簡易的な橋を作ったり、野営の際に柵として使ったりするぐらいですよ?」


「そんな使い方をしているのか!? 小僧、たとえばウォータースライムはどんな特性を持っている?」


「ウォータースライムですか、出した糸の任意の場所から水を出すことが出来ますね」


「その出てくる水はどこから来ているのだ?」


「水ですか? ……あまりウォータースライムを使ってないので考えた事も無かったですが、言われてみれば確かに気になりますね、魔力を変換しているのでしょうか?」


「儂も見たことが無いのではっきりとは分からないが、恐らくそうであろうな。要するに魔道具の水筒と同じ事だな」


「なるほど、つまりアーススライムも同じことが出来るということですか?」


「まあまて。それでは出すことしか出来ないではないか」


「確かにそうですね」


「話を戻すがウォータースライムで少し水を出してみろ」


「分かりました」


 ウォータースライムの糸を出して水を少し出す。


「やはりそうか。スライム自体に穴が開いているわけでもないのに、水が出るのは不思議じゃないか?」


「本当ですね……」


 今まで気にしたこと無かったけど、言われると確かに不思議だな。


「スライムは住んでいる環境で変化するという説がある。それはつまり、その環境の餌で変化するということだ」


「つまりウォータースライムの餌は水ということですか?」


「信じがたいことではあるが、その可能性もある。儂は取り込んだ物に含まれている魔力の可能性もあると思っているが、しかしそんな事を言いたいのではなく、要するに本来は吸い込んだものを吐き出しているということだ」


「レギンさんの言いたいことが理解できました。少し実験してみましょう」


 まず蔓を使ってバケツを2つ作り、片方に水を入れて、バケツからバケツにウォータースライムの糸を這わす。


 這わしただけでは何も起こらないので、糸を掴みバケツの水を吸い上げるようにイメージすると、水の入ったバケツから吸い上げて空のバケツに水が移った。


「さすが小僧。直ぐに理解したようじゃの?」


「同じ事をアーススライムで行えば、地面を簡単に掘ることが出来るかもしれないということなんですね!」


「自分で言ったこととはいえ、なかなかおもしろくなってきたな! 早速試してみろ」


「分かりました!」


 まず掘った土をどこに出すかだけど……建物の中は邪魔だから外へ出すことにした。


 直径20センチのアーススライムの糸を地下から外まで這わせる。


 そしてスイッチオンでは無いが、魔力を流しながら地面の土が外に出るようにイメージすると、どんどん外へ排出して行った。


 これは凄く楽しい。イメージとしては、豆腐をストローで吸っているような感じなんだろうか? 地面が面白いように掻き出されて、あっという間に空間が出来上がったのだ。


「これは楽しいですね。地面が柔らかくなったのかと勘違いしましたよ!」


「儂が思っていた以上に凄いな。次の作業にかかるか?」


「そうしましょう!」


 空間に蔓を敷き詰めて部屋を作る。湖と面した床に直径20センチの穴を開けて、アーススライムを差し込み土を吸い出していくと湖と繋がったのが分かった。


 アーススライムの糸を無くすのと同時に穴を塞いで、湖の深くへ向かって廊下を伸ばしていく。水圧とか関係あるのかは分からないが、直径2メートル50センチの円形で延長していった。


 しばらく進むとレギンさんが声をかけてきた。


「小僧、そろそろいいだろう。この辺りから部屋にするといい」


「分かりました」

 

 200メートルのクジラが入るぐらいの部屋だからな、直径は70メートル、長さ300メートルぐらいの部屋で試してみよう。足りなかったら後で拡張すればいいだけだからね。


 完成した部屋をレギンさんが魔道具のカンテラで照らすが、広すぎて光が届かない。


「これは凄い大きさじゃな。後で光の魔道具を設置することにして、取りあえずシュトゥルムヴェヒターを置けるかだけ確認するのだ」


「分かりました」


 シュトゥルムヴェヒターを空間収納庫から出してみると、無事置くことができたのだった。

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