第237話 シュトゥルムヴェヒター研究施設?
実験施設で毒の実験をしていると、エディ親衛隊の人たちから色々な毛皮を貰ってたのを思い出したので、登録してみることにした。
『毛糸素材、カシーミャゴートの毛を確認。解析しますか?』
【素材】毛、カシーミャゴート、毛糸の原料
解析しますか? ・はい ・いいえ
〈はい〉を選択する。
【素材】毛糸素材、カシーミャゴートの毛(解析中)
【登録数】1/10
【解析予測時間】24時間(登録数によって変わります)
これで、カシミヤのセーターとか作れそうだな。
問題は他に貰った色々な毛皮なんだが、アングリーゴートやアングリーラビットなど既に登録されている毛皮もたくさんあったので、それらはそのまま追加で登録しておいた。
そして、まだ登録したことのない毛皮が3つ残った。魔物のサイズ的な大きさで考えると小さい方から、1メートル50センチ級、2メートル級、3メートル級になっている、どの毛皮も異常なぐらいにいい肌触りだ。
取りあえず、小さい方から順に登録してみよう。
まず、1メートル50センチ級の魔物の毛皮からだ。
『毛糸素材、グレートセーブルの毛を確認。解析しますか?』
【素材】毛、グレートセーブル、毛糸の原料
解析しますか? ・はい ・いいえ
〈はい〉を選択する。
【素材】毛糸素材、グレートセーブルの毛(解析中)
【登録数】1/10
【解析予測時間】24時間(登録数によって変わります)
グレートセーブル、つまり黒貂のことかな? セーブルといえば世界三大毛皮の1つだ。これでコートとか作ったら凄そうだな、1メートル50センチ級ということは、普通のセーブルの3倍以上の大きさになるのか。
よし、次は2メートル級の毛皮登録してみよう。これは真っ白な毛に黒い斑点が入った毛皮で、おそらく猫系の魔物の毛皮でないかと思う。
『毛糸素材、ビックリンクスの毛を確認。解析しますか?』
【素材】毛、ビックリンクス、毛糸の原料
解析しますか? ・はい ・いいえ
〈はい〉を選択する。
【素材】毛糸素材、ビックリンクスの毛(解析中)
【登録数】1/10
【解析予測時間】24時間(登録数によって変わります)
リンクスも世界三大毛皮の1つだな。あっという間に2種類揃ってしまった。それにしてもビックリンクス……なんか微妙に弱そうな名前だな、2メートルのオオヤマネコ型の魔物と考えればかなり強そうなんだが、色々とモヤッとする名前だ。
気を取り直して、最後の一番大きな毛皮を登録しよう。
『毛糸素材、アールチンチラの毛を確認。解析しますか?』
【素材】毛、アールチンチラ、毛糸の原料
解析しますか? ・はい ・いいえ
どうやら、地球における世界三大毛皮をコンプリートしてしまったようだ。取りあえず〈はい〉を選択する。
【素材】毛糸素材、アールチンチラの毛(解析中)
【登録数】1/10
【解析予測時間】24時間(登録数によって変わります)
……まさか一番大きな毛皮がチンチラの毛皮だとは、大きなネズミに食べられるビックリンクスを思わず想像しちゃったよ。
それにしても、アールチンチラのアールってなんだ? だいたいこの世界の大きいサイズの魔物はビッグ、グレート、キングなどが頭についているパターンが多かったのだが、アールっていうのは初めてのケースだ。
アール、R? ラージはLだし……! もしかして伯爵のアールか? そうなってくると更に上の位がいるということに……。
この世界のチンチラヤバいな……伯爵の上っていったら侯爵、公爵、大公、王か……他にも王子とかいたらどんな大きさなんだろうか、完全に捕食者だな。王様はもしかしたら天災級かもしれない。
しかし、これだけの大きさなのに登録するためには10枚必要なのは、ちょっと納得がいかないような、まあ1日待てば登録されるところは親切設計なんだけどね。
それにしても、ニルヴァ王国というのは寒いと聞いているだけあって、色々な毛皮の魔物がたくさんいるみたいだ。
◆
「小僧、待たせたな」
「レギンさん、わざわざすいません」
「気にするな、シュトゥルムヴェヒターの素材で何を作るのか、小僧の案を聞きたくてウズウズしていたのじゃ」
「それなら良かったです」
シュトゥルムヴェヒターで作りたい物をレギンさんに説明すると。
「それはおもしろいな! もしそれが実現するのなら凄いことじゃが、実現するまでの課題は多いぞ?」
「この大きさの魔物は滅多にいないと思うので、チャレンジしてみる価値はあると思うのです」
「そうじゃな、小僧が商会を始めて1年足らずで、飛躍的にあらゆる技術が進歩したことを考えれば、不可能ではないのかもな」
「問題はシュトゥルムヴェヒターを置く場所がないんですよね」
「それは確かに大問題じゃな、施設を建てるとすれば、この間披露した所になるが、いちいちプレジール湖を渡るのも面倒だし警備の問題もあるからな」
「出来るだけ近くにないと困りますもんね?」
なかなか良い案が出なくて二人で考え込む。
「そういえば、小僧が建てたピウスフリーシアンの小屋はどうやって建てたのだ? 扉をつけにいったのだが一瞬で建てた物には見えなかったぞ」
蔓を使った牛舎の立て方をレギンさんに説明した。
「なるほど、場所が確保できれば蔓で建てるつもりだったのか、確かにそれならば一瞬で建てられるな」
「高い空中に建てようと考えたんですが、父様に止められました」
「極秘にしなければならんのに、目立ってどうするのだ?」
「地下も考えたのですが、蔓では地下を掘り進めることは無理でした。空間を造る魔道具とかないのでしょうか?」
「そんな魔道具があれば便利そうだが、シュトゥルムヴェヒタークラスの空間魔法を使う魔物の魔石が必要そうじゃが……そうだ! プレジール湖の中に作ったらどうだ?」
「プレジール湖に浮かべるんですか? 確かに北側は大公家以外立ち入り禁止ですが、結局目立ちますよ?」
「そうじゃない、水中に作るのだ! 小僧の実験施設は幸いプレジール湖に面している、実験施設の地下から移動できるようにしたらどうだ?」
「なるほど、プレジール湖の深くに作ればいいのか。建物は作れそうですが水抜きが大変そうですね」
「ふむ、たとえばだが、最初に水の入らない小さな建物を建て、徐々にそれを広げる事は可能か?」
「最初に繋げた状態の物を作ってから、それをそのまま広げるんですね? やったことないので試してみましょう」
蔓を使いテントサイズの小屋を作り蔓同士を結合させる。
中に入り小屋が広がるようにイメージしてみると、そのまま拡張することが確認できる。どうやら後からでも形状変更できるみたいだ。
「広がった!」
「これで施設が作れるぞ!」
実験施設を拡張できそうなので、父様の所へ了解を取りに行くのだった。




