第235話 夕食にて
夕食は人数も多いので、パーティーのときのように、立食スタイルで行う事になった。父様たちはまだ仕事があるということで、後から来ることになっているが、本当はみんなが気を使わずに食べられるよう、時間を設けてあるのだとか。
冒険者クラン、エディ親衛隊のみんなは、見たこともない料理に目を輝かせて食べている。
薄いグリーンの髪が綺麗なシプレさんは、皿に大量の唐揚げを乗せて、パクパクと凄いスピードで食べていた。
栄養は全て胸に行ってるのだろうか、シプレさんはクラン最大級の持ち主だ。まだ成長するだろうから、カトリーヌさんに追いつくポテンシャルを秘めてるのかもしれないな。
おもしろいと感じたのは、各隊のリーダーになっている人たちは、食べ方が上品で、言葉遣いもわりと丁寧だ。冒険者として上を目指すには、貴族と話す機会もあるので、勉強したのだろう。
「エディ君のおすすめはありますか?」
撫でられ隊リーダーのリーリエさんに、話しかけられた。リーリエさんは、純白の髪に赤い瞳が特徴的なのだが、それ以上に冒険者と思えないぐらい肌も白く、まるでドール人形のようだ。
「パスタはもう食べましたか?」
「パスタですか?」
まだ食べてないようだったので、メイドに2人分頼んだ。
「この細長いのがパスタなんですが、ヴァルハーレン領では、パンに代わる主食として広がって来てるんですよ。このように、フォークで口に入る分を絡め取って食べます」
「なるほど、フォークでクルクルするのですね……」
リーリエさんは、フォークで絡めとると口に運ぶ。
「――!」
「どうでしょうか?」
「とても美味しいです」
「ソースを変えると、色々な味が楽しめますよ」
「ヴァルハーレン領には、美味しい料理がたくさんあるのですね?」
「パスタもそうだけど、美味しい料理は、ほとんどエディが考え出しているわ」
「シスじゃなかった、マルグリットさん、本当なんですか!?」
リーリエさんは、メグ姉の事をシスターと呼んでいたのだろうな。
「本当のことね、エディは凄いのよ」
そう言ってメグ姉が僕の自慢を始めると、みんな集まってきた。
「ところで師匠、レギンさんの行方は知りませんか?」
アザリエさんは、レギンさんを探しているみたいだ。
「レギンに会いたいの?」
「会いたいというか、冒険者として旅立つ時に、師匠がレギンさんから装備を買ってくれたのを、憶えていますか?」
「そうだったかしら?」
メグ姉は忘れているようなのだが、みんなにレギンさんのところで装備を買ってあげたのは、意外だった。
「みんな師匠には感謝してるんですよ? その装備をメンテナンスしたいというか、出来れば新しい装備をレギンさんから買いたいと思っているのですが、肝心のお店が無くなって、メンテナンスも出来ない状況なんです」
「他の武器屋では出来なかったのですか?」
「そうなんだ。一度頼んだ事があったんだけど、余計ボロボロにされちゃってね。下手な装備を買うよりは、ボロボロなレギンさんの装備使う方が良いっていうのも、悩みのタネなのよ」
「儂がどうかしたか?」
「ああ、レギンさん。今レギンさんの話をしてたんですよ」
「儂の話をか? お前たちがコラビの孤児院出身の子らか。ぜんぜん憶えておらんが、白髪の泣き虫の嬢ちゃんは憶えているな」
「――!」
リーリエさんはガックリと膝をついた。泣いてるイメージは、僕だけではないようだ。
「どうして、レギンさんがここに!?」
アザリエさんや親衛隊のみんなが驚いている。
「なんじゃ知らんのか? 儂は今、小僧の商会の鍛冶師じゃ」
「そうなんですか!?」
「あら、エディ君の周りは賑やかね?」
カトリーヌさんなど、モイライ商会の職人組も食事会に参加するようだ。
「あっ、オッパイお化け!」
シプレさんがカトリーヌさんを見て指差して言うと、拳骨がシプレさんの頭の上に落ちた。シプレさんも十分、お化けの部類に入ると思いますよ。
レギンさんに親衛隊の話を説明し、彼女たちが武器を売って欲しい事も伝えた。
「なるほどな、よしお前たち、小僧の騎士団に入れ!」
『えっ!』
「小僧の騎士団に入れば、お前たちが望む以上の物を作ることができる」
「レギンさん、エディ君の騎士団に入らなかった場合は、どうなりますか?」
「武器も売るし、修理もできるが、それは普通のレベルの装備じゃな」
「レギンさんの装備は普通のレベルでも、他領から買いに来るぐらい、人気商品なんですよ?」
「小僧よ、そんな普通のレベルじゃつまらんだろうが、儂が全力で装備を作ってやるから、早く騎士団を作れ」
「それが、応募に来るのは、他の貴族の間者や密偵みたいな人が多いみたいで、なかなか人が集まらないらしいのです」
「まあ侯爵とはいえ小僧はまだ小さい、その騎士団に入ろうとする人間の方が、少ないのだろう」
「だと思います。まあ、アキラとツムギちゃんもいますし」
「某にお任せくだされ」
「私がエドワード様の敵を全て暗殺します!」
アキラさんとツムギちゃんも来てたようだが、ツムギちゃんはレギンさんに装備を作ってもらってから、少し物騒になった。
「あなたがエディ君の騎士団の団長なんですね?」
アザリエさんがアキラさんと話す。
「いかにも、エドワード騎士団団長のアキラでござる。こっちにいるのが、娘のツムギですな。エドワード騎士団といっても、2人だけでござるが」
「エドワード騎士団、暗殺部隊のツムギです!」
ツムギちゃん、騎士団には暗殺部隊とか無いからね?
そこへ父様たちもやって来ると。
「ウチの料理人が作る料理は美味しいだろう? エドワードが考案した料理も多いんだよ」
「大公様、私たちのために、このような料理を用意してもらいありがとうございます」
「ん? 急いで結論を出さなくてもいいんだよ?」
今の流れって、結論を言う流れだったの!?
「いえ、あまりメンバーを甘やかしてそれに慣れてしまうと、怪我や最悪の場合死に繋がりますので、話し合った結論を先に言わせて下さい」
「なるほど、君のような子がリーダーをやっているから、欠員を出す事なく乗り切っているんだね」
「ありがとうございます。メンバーと相談させていただいた結果、エディ様の騎士団のお話は、大変光栄に存じます。どうぞよろしくお願い申し上げます」
「本当かい!? フィアに言われていたとはいえ、半信半疑だったのだけど、受けてもらえて良かったよ!」
どうやら、母様は最初からそのつもりだったようだ。
その後、おばあ様がお祝いにおじい様の秘蔵の酒を出そうとしたのだが、以前秘蔵の酒を全て空けてしまったので、僕がセラータで見つけた大地の恵みを樽で提供した。
そして今、提供したのを若干後悔している。
女性とはいえ冒険者、それもこれだけの人数がいれば、色々な酒癖の人も当然存在する。
僕は今、泣きながらワインを飲むリーリエさんに、絡まれている。但し絡まれているというのは、よくあるウザ絡みではなく、物理的に抱きつかれているのだが、非常に酒臭い。
この近さでリーリエさんの純白の長い髪を見ると、色々と傷んでいるのが気になってしまう。ブラッシングしたい……。
ヴァイスや母様などは既にツヤツヤなので、これだけの強敵をみるのは、アスィミ以来かも。
冒険者なので仕方がないのかもしれないが、リーリエさん以外にも何人か髪の長い人がいるな……ヴィオラさんの菫色のポニーテールも、とても気になる案件だ。
現在、南のファンティーヌで買ったつげ櫛のような櫛に、北のファーレンで見つけた椿油を染み込ませた櫛を作っている最中だ。櫛から出番がきたと呼ばれているような気もするが、美容物を最初に使うのは母様に使えと、父様の血が騒いでる気がするので止めておこう。
それにしても、冒険者のメンバーは慣れているのか、リーリエさんが酔い始めた途端に、側からいなくなったな。そんな面倒な人を押し付けないで欲しい。飲酒の年齢制限がないとはいえ、13歳のリーリエさんに、ガバガバ飲ませるのはどうかと思う。
まあ、みんな僕の騎士団の団員が増えたことを喜んでいるので、今日は大人しく抱きつかれていようと思うのだった。




