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第229話 キノコ狩り

 今日こそはキノコ狩りをしようと、プレジール湖を渡り魔の森へ入った。参加メンバーはヴァイスにおじい様、ジョセフィーナだけだ。


 トリュフが見つかると嬉しいが、デーキンソン侯爵領と違いここは魔の森なので、強力な毒キノコがある可能性も考えられるので、気を付けていきたい。


「儂がトリュフを見つけてやる!」


「おじい様、魔の森にどんなキノコが生えているかの調査も兼ねているので、毒キノコでも教えてください。ヴァイスとジョセフィーナもお願いね」


「任せておくがよい!」


(ワレ)が見つけるのだ!』


「エドワード様、お任せください」


 あんなに毛嫌いしていたのに、おじい様と父様はすっかりキノコ好きとなったようだ。


 そういえば、デーキンソン侯爵領で貰ったオレンジ色のミカンの皮みたいなキノコだが、ウルスに聞いてどんなキノコか判明した。ジロール茸というキノコで日本では杏茸と言うらしい。フランス料理には欠かせないキノコらしく、何に入れても美味しいと言うだけあってみんなにも好評だった。


「エドワード、このキノコは食べられそうじゃないか?」


「初めてみますが、毒キノコですね」


「そうか、美味しそうに見えたのだが毒キノコなんだな」


「おじい様、絶対に食べちゃだめですよ?」


「それは分かっているが、さっきから毒キノコしか見つからないな」


「そうですね、やはり魔の森では毒キノコしか育たないのでしょうか?」


「魔の森ではか……確かに魔の森では食べられるキノコは無いのかもしれんな。今回はしょうがないとしても、次回はバーランス近くの森で探してみようか?」


「おじい様、いい考えです! あそこならデーキンソン侯爵領に近い環境かもしれません」


「それならば今回はエドワードの実験用に毒キノコをたくさん手に入れつつ、美味しそうな魔物を狩ることにしよう」


 それから3時間キノコを探し回ったが、結局毒キノコしか探し出せなかった。


 ◆


 そして現在、帰りの船で魚を捕っている。


 そう、釣っているわけではなく、以前川でやったクモの巣を使った投網で捕っているのだ。


「エドワード、その捕り方はなんだかズルいのう……」


「糸に魚が貼り付いているのは、確かに異常な光景ですね」


 おじい様とジョセフィーナはクモの巣に貼り付いた魚を見て呟いているが、僕もこの光景に慣れている訳ではないので、違和感が半端ない。


 さすがにぶっつけ本番で人体実験をするのは可哀想なので、生きている魚でまずは試してみようと思っているのだ。


 蔓でバケツを作って魚を入れていく。蔓同士をくっつけることが出来るようになったため、こういったちょっとした物を作れるようになったのはとても便利だ、エンシェントトレントには感謝しかないな。


 魔の森で様々な毒キノコを取り込んだせいで、毒の種類が一気に増えてしまった。


【毒】下痢、腹痛、めま(New)、頭痛、全身(New)、嘔吐、発熱、口(New)、乾(New)、色素(New)、錯乱、睡眠、幻覚、麻痺、昏(New)、脱毛、発(New)、出血毒、痙攣、不整脈、頻脈、持続勃起症、内臓細胞破壊、酸毒、カプサイシン

 

 完全に毒マスターと言っても過言ではないだろう。【めまい】のような比較的優しい症状はともかく、【全身痛】や【昏睡】といった恐ろしい症状まである。【発光】のような意味不明な毒まであるところが、魔の森の恐ろしさなんだろう。


 ◆


 城に着いたので人気のない裏庭で実験してみることになった。


 まずは蔓のバケツを量産し、魔法で水を入れ魚を1匹ずつに分けると、毒キノコを取り出した。


「エドワード、それはどんな症状が出るのだ?」


「おじい様、これはエッグテングダケと言って、下痢に腹痛そして内臓細胞破壊ですね」


「なんじゃその内臓細胞破壊というのは? 響きだけでも恐ろしいな」


「予想になってしまいますが、内臓の動きを止めて死に至らしめるのではないでしょうか?」


「やはりキノコは恐ろしいな……」


「やはり、確実に安全と言われているキノコ以外は、絶対口にしてはいけないと再確認できましたね。それでは早速試してみます」


 バケツの中に、エッグテングダケをいくつかに割いて入れる。


 入れてしばらくすると、魚は死んで浮いてきた。


「「「……」」」


 こういうのを見ると、毒キノコの恐ろしさが分かるな。


「エドワード様、これは浄化したぐらいで、どうにかなる問題ではないのでは?」


「うむ、毒キノコを無理して食べなくても良いのではないのか?」


「ただの興味本位なので、無理して食べようと言うわけじゃありませんよ?」


「そうだったのか、それを聞いて少し安心したぞ」


「美味しいとかはどうでもいいのです。毒キノコの毒は聖属性でしか浄化できないと聞きましたが、毒キノコを直接浄化するとどうなるのか気になりませんか?」


「今までそんな事を気にした事は無かったが……確かにそう言われると気になってくるな」


「そうですよね! それでは早速浄化してみましょう」


 エッグテングダケに浄化の魔法をかけてみる。やり方は母様の魔術を見ていたのでバッチリだ。


 浄化の終わったエッグテングダケを、先程と同じように割いてからバケツに入れると、おじい様とジョセフィーナも気になったのか覗き込む。


 しかし、バケツの魚はどれだけ待ってもそのまま死なずに泳いでいて、それどころかエッグテングダケをツンツンと食べていた。


「大丈夫なようですね?」


「うむ、大丈夫どころか毒キノコを食べておるな……」


「エドワード様、これは大発見ですかと!」


「ジョセフィーナよ、このことはまだ内緒にしておくのだぞ」


「アルバン様、どうしてでしょうか?」


「うむ、浄化魔術すべてがこの結果を生み出すと決まっていないからだ。エドワードが使っているのは、浄化魔術ではなく浄化魔法だからな」


「なるほど、母様がやってみないと駄目なんですね?」


「そうだな……一度ソフィアに相談した方がよいな。ソフィア自身も聖属性の使い手としては普通ではないという話だから、一般的な聖属性の使い手の話も聞いておいたほうが良いだろう」


「母様基準でも良くないということなんですね?」


「その通りだ」


「分かりました。ジョセフィーナも今回のことは内緒にしておいてね?」


「エドワード様の凄さを広められないのは残念ですが、畏まりました」


 無理して広めなくていいからね?


「それでは実験を続けます。念のため、他の毒キノコでも試してみますね?」


 そう言うと、空間収納庫から布に包まれたキノコを取り出し布を開く、そこには真っ赤な炎の形をしたキノコがあった。


「なんじゃそのキノコは!? 見るからにヤバそうだな?」


「ええ、デーキンソン侯爵領にも在ったキノコなんですが、バクエンタケというキノコらしいです。素手で触るだけで皮膚が爛れるので布に包んでありますが、食べるとかなり苦しんでから死ぬようですね。このキノコの毒を登録したところ、脱毛という毒の特性も追加されました」


「脱毛とは……バクエンタケはなんと恐ろしい毒を持っているのだ……」


 まずはバクエンタケを割いて、魚の入っているバケツに入れる。


「「「……」」」 


 あまりのグロさに声すら出ない。バクエンタケをバケツに入れた途端、魚の鱗が剥げ落ち肉は爛れ、ありとあらゆる物を水中で撒き散らして、最後は骨だけになって死んでしまった。


「このキノコの浄化は無理なんじゃないかな?」


 おじい様、僕もそう思いました!


 結果は試してみないと分からないので、バクエンタケを浄化し、いくつかに割いて同じように魚のいるバケツに入れる。


 しかし、魚は何事もなく泳ぐどころか、先程のエッグテングダケ同様ツンツンとバクエンタケを食べているのだった。


「このような禍々しい毒キノコまで浄化されるとは、さすがはエドワード様です!」


「うむ、しかしこのキノコはさすがに食べられると分かっても食べたくはならないな」


「確かに食べたくはならない見た目ですが、毒はしっかり浄化できてるみたいですね」


 浄化が万能なのか、僕の浄化が凄いのかは分からないが、毒キノコは安全に食べられそうだった。

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