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第228話 牛乳の供給

 エディ親衛隊という冒険者クランが存在していて、その設立にメグ姉が関わっていることが判明した訳だが。


「エドワード様、それではマルグリット様立会いの下、面会するという形でよろしいでしょうか?」


「そうですね、どうやら僕とも面識があるようなので、一度会ってみたいと思います」


「さすがに2、3歳の話では覚えてないわね」


「2、3歳ですか? さすがに覚えてないですね……そういえばその中に、白い髪で赤い瞳を持った人はいますか?」


「多分リーリエのことね」


「リーリエと言うのですか? 最近は見ないのですが、昔たまに夢の中に出てきたので、誰だろうと思っていたことが一時期あったかな」


「リーリエさんは『エディ君に撫でられ隊』のリーダーですね」


 2、3歳の子供を撫でたいのではなく、撫でられたいというのは、どういう心境なんだろうか?


「それではエドワード様、日程調整をして改めて伺いたいと思いますが、商人ギルドじゃなくても大丈夫でしょうか?」


 以前は通信施設工事中だったのでまずかったのだが、既に完了しているので大丈夫だ。


「城の方で大丈夫ですが、何人ぐらいになるのでしょうか?」


「そうですね……面会に何人来るのか今のところ分かりませんが、1パーティー4人で5パーティーありますので最大20人ほどだと思われます」


「了解しました。それでは決まりましたら、事前に人数の方も教えてくださいね?」


「畏まりました」


「ねえ、アリアナ。その子たちにはコラビの孤児院にいたエディとエドワードが同一人物だと報せておいてね?」


「よろしいのでしょうか?」


 アリアナさんは僕に許可を求めた。


「そうですね、その方が話は早いので報せちゃってください」

 

「畏まりました、それではまた改めて伺います。面会してくださるとのことなので、カシーミャゴートの毛皮は置いていきます」


「それも会ってから正式に買い取る方向で進めたいので、申し訳ないですが持って帰ってもらえますか?」


「買い取る方向ですか? 確かにその方が変な要求も出来ないですし、良い判断だと思われます」


 アリアナさんはそう言うと、商人ギルドへ帰って行った。


 ◆


 応接室を出て廊下を歩いていると、エミリアさんと出会う。


「あっ、エドワード様、探していたのでちょうど良かったです。相談があるのですが、よろしいでしょうか?」


「僕をですか? いいですよ、どこで話しますか?」


「実はピウスフリーシアンの件で問題が起きましたので、出来れば現地まで視察に行きたいのです」


「ピウスフリーシアンといえば牛乳ですか? 安定した牛乳の供給は必要ですので、すぐに行きましょう」


「ありがとうございます。ハリー様は現在トゥールスの方へ行ってますので、通信兵に連絡を取ってもらったところ、エドワード様に頼んでみてという話でしたので探していたのです」


「父様が僕にですか? それでは頑張らないといけないですね」



 エミリアさんと馬車でピウスフリーシアンがいるという所まで向かう。


「おっ、アレがそうだな」


 木の柵で囲われた中に、ピウスフリーシアンが十頭見えた。


 馬車が停まると1人の男の人が近づいて来る。


「エミリア様、今日はどうなさいましたか?」


「今日は、大公家嫡男のエドワード様に来ていただきました」


「ははー!」


 いきなり土下座したんだけど!?


「エドワード様、彼はここにいるピウスフリーシアンをテイムしているヒコヴォシです」


「彦星?」


「いえ、ヒコヴォシです。ヒコヴォシ、もう面を上げなさい」


 ヒコヴォシか……微妙に掠ってるな……ウォリヒメとかいう1年に1回しか会えない奥さんとかいそうだな。そういえばあの物語ほとんどの人が恋人だと勘違いしているが、実際には夫婦だという話だ。


「そんなことしたら、神様に申し訳ないです!」


「えっとヒコヴォシ? 話をしたいから立ってもらえるかな」


「畏まったですだ!」


 ヒコヴォシは僕に言われて立ち上がるが、語尾が変だ。


 ヒコヴォシがテイムしているピウスフリーシアンは角の生えた牛の魔物で、テイムすることによって乳を搾ることができるようになる。

 オスとメスをテイムしている状態で子供が生まれると子供はテイムされた状態で生まれるのだが、ヒコヴォシは現在十頭まで増やしたそうだ。


 どうでもいい話なのだが、奥さんの名前はオリュヒメーというらしい。今は出かけているが、一緒にピウスフリーシアンの世話を手伝っているのだとか。


「ヒコヴォシにはいつも美味しい牛乳を提供してもらって助かってるよ」


「もったいねえですだ!」


 エミリアさんが頭を抱えている。どうやら父様と会話するために言葉を勉強させてたらしいのだが、興奮すると田舎の言葉が出てしまうらしい。


「父様もそんなことで怒らないから、大丈夫だよ」


「それは分かっておりますが、大公家専属テイマーとして恥ずかしくないようにしなければなりません」


「まあ、その辺りは徐々にということにしておいて、問題っていうのは何かな?」


「申し訳ございません! すべてオラのせいですだ!」


 ヒコヴォシはまた土下座した。


「私もすっかり頭から抜け落ちていましたので、彼だけのせいではないですが……問題というのはもうすぐ降る雪の件です」


「雪が問題なんですか?」


「多少ならば問題ないのですが、この辺りはかなりの豪雪地帯と聞きましたので、問題ないのかを色々確認して回っていたところ発覚いたしました」


「なるほど、僕も初めてだからどのくらい降るのか分からないんだよね。それで降った時の問題点は……」


 辺りを見回して分かった、牛舎が無いんだ。


「ピウスフリーシアンって夜はどうしてるの?」


「さすがエドワード様、お気づきになりましたか……通常は夜もこのままここで寝かせています」


「つまり屋根のあるところが欲しいということだね?」


「屋根!? そこまでしていただく訳にはいかないだ。冬の間だけ実家さ帰らせてもらおうかと思って、エミリア様に相談したんだ」


 なるほど、この世界には牛舎という概念自体ないからしょうがないのか? いや実家に帰られると、牛乳が手に入らなくなるじゃん! デザートなどに欠かせない牛乳がないと、牛乳の必要ない新しいデザートを作らないと駄目になるような気がする!


「要するに雪が積もらないピウスフリーシアンたちの寝床があればいいんだよね?」


「そうなんですが、今からでは何をするにも間に合わないので、いいアイデアがないかエドワード様に相談した次第です」


「牛乳が無くなるのは非常に困るので、何とかしましょう」


「何とかするとは、何か良いアイデアがあるのでしょうか?」


「アイディアというか今ここで作っちゃいます」


「へっ!?」


 建てるのに良さそうな場所を選択すると蔓を使って牛舎を作る。数が増えてもいいように、大きめに作っておこう。

 

 ウネウネとイメージ通りに建物が出来上がっていく光景は、いつ見ても不思議な感じだが、非常に便利だ。


 しばらくすると、円錐の屋根の形をした大きな蔓の塊が出来上がった。大まかなイメージとしては、カバみたいな妖精が住んでいるような家だ。但し高さは2階分ぐらいしかなく、直径は20メートルぐらいあるので随分と横に広がってるのだが。


「エドワード様、これはいったい……」


「ちょっと待ってね、まだ入り口がないから」


 アラクネーの糸を使って入り口の部分をカットし、蔓という名の丸太で補強し入り口が完成する。中へ入り天井を見上げると明かりが漏れていた。


 蔓をぐるぐる巻いたりして作っているので仕方ないのだが何とかしたいな。出来上がった建物に手を当てて穴が無くなるように念じると蔓同士がくっついてスキマが無くなった。


「よし、完成だ!」


「『完成だ』じゃありません! 何をやったんですか!?」


「何をって、エミリアもシュトゥルムヴェヒターを見る時に登ったでしょ? あれと同じ蔓を操る能力ですよ。扉は作れないので手配しておいてください。そのくらいなら間に合うでしょ?」


「畏まりました。扉くらいなら間に合う……そうじゃなくて……はぁ、こんな物まで作れてしまうんですね……」


 エミリアさんがガックリ項垂れていると、ピウスフリーシアンたちが牛舎に入ってきた。どうやら自分たちの家だと理解したようで意外と賢いのかもしれないな。


 これで冬の間も安定して、牛乳を手に入れることが出来るようになったのだった。


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