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第226話 石鹸とボディタオル、その先へ

 風呂上がり、エミリアさんが石鹸の感想をみんなに聞いて回っているが、かなり好評なようだ。


 ミラブールだけで洗うのとは、また違った爽快感があるな。


 ヴァイスの毛をドライヤーの魔法で乾かしながらブラッシングしていると、母様が並びその後ろにメグ姉、カトリーヌさんというふうに列ができた……次は私の番ということなんだろうか?


 ヴァイスのブラッシングが終わると、母様が近くに寄って来るので母様の髪も乾かす。ブラシはいつも僕が使っているお手製のやつだ。


「エドワード、そのブラシはどうしたのですか?」


「これは旅の最中に、ビックボアの毛を使って自作したブラシですね」


「エドワードの自作のブラシですか! (わたくし)もエドワードの作ったブラシが欲しいですわ」


「気に入ったのですね? ビックボアの毛はまだまだありますので、母様の分も作りますよ」


「ありがとう。それにしても、エドワードは髪を乾かすのが上手ですね?」


「そうでしょうか? ヴァイスの毛をいつも乾かしているから、上達したのかもしれませんね。母様乾きましたよ」


「ありがとう、()()お願いね」


「エディ、私もいいかしら?」


「もちろんいいよ。メグ姉には昔よく精霊魔法で乾かしてもらったね」


「そうだったわね。エディに乾かしてもらうのは初めてだわ」


 メグ姉の髪を乾かしていく、細い銀色の髪はとてもさわり心地がよかったのだが、結局全員の髪を乾かすことになってしまう。


 うーむ、石鹸を作りミラブール離れしてもらおうとした結果、ホイップの作業が増えただけでなく髪を乾かす作業まで増えてしまったが、髪を乾かしブラッシングするのは、ヴァイスにするのとは違った感覚で意外と好きみたいだ。


「エドワード様! この石鹸は売れますよ! ボディタオルもセットで売れる予感がします!」


 エミリアさんは結婚を諦めているようだ。同い年のセリーヌさんはまだ諦めていないようだが。2人とも美人なのに恋人も出来ないらしく、セリーヌさんはしょうがないにしても、エミリアさんは頑張れば出来そうなんだけどな。母性の薄さが原因なんだろうか? 『仕事が恋人です!』と言い切るあたりはエミリアさんらしい。


「売れるのはいいけど、作るのに時間がかかるのは問題だね」


「それは問題ありません。エドワード様に作り方を習って以降、1週間に1度作り続けているので、在庫に困ることはございません。そろそろ苛性ソーダ水が無くなりますので補充をお願いします」


「随分と用意がいいんだね、失敗したらとかは考えなかったの?」


「苛性ソーダ自体はエドワード様が作られましたし、失敗したとしても大した被害はないので問題はありません。そもそも、エドワード様のゴーレムの知識を使っているので、完成するのは間違いないと思っていました」


 そういえば石鹸を作るにあたってウルスを講師に使ったんだっけ?

 

「そこまで考えていたんだね」


「ところでエドワード様、お風呂で使ったボディタオルについてなんですが、一般販売するとしたらスパイダーシルクは使えません。それに代わる物はございませんでしょうか?」


「確かにそうだね。普通のシルクでもいいかな、それと麻のボディタオルも追加しようか?」


「追加する理由はあるのでしょうか?」


「そうだね、男の人には綿だと洗えてない感が強いと思うんだ。麻のボディタオルなら、しっかり洗えてる感があっていいと思うんだよね」


「綿のボディタオルは確かに優しい肌触りでした。男性用ですか……ハリー様やアルバン様など男性陣にも、3つの使用感を確認していただきましょう」


「それはいいんだけど、働きすぎて体を壊しちゃダメだよ?」


「心配していただいて、ありがとうございます。今の私にとっての最大のご褒美はエドワード様のミラブールでございますので、たまにでよいので出来れば今後も引き続きお願いいたします。今回の石鹸も凄いですが、やはりミラブールには敵いませんので」


 ホイップの魔法を使ってもミラブールの泡の大きさには勝てないから仕方ないのだが、何気にミラブールで洗ってもらいます宣言をされたような。


「ミラブールに敵わないとしても、今回の石鹸を販売始めれば、私たちの肌に他の方々が近づく事になりますわね……」


 母様のその一言に女性陣が注目する。注目されてもポンポン出てこないからね?


 うちの女性陣の肌や髪の綺麗さは際立っていて、どこへ行っても注目の的なのだ。石鹸を売り出せばミラブールに勝てないとはいえ、その優位性が薄れてしまうのか。


 貴族同士で交渉するにしても、美肌の謎を抱えている方が優位に立てる……とかあるのだろうか? 母様は僕に洗ってもらっていると真実を話しているが、相手からしたら冗談にしか聞こえない、もし真実だとしても、僕に洗って欲しいとお願いする訳にもいかない……母様って意外と考えているのだろうか?


 この国の女性の化粧と言えば香水と口紅ぐらいだ。中世ヨーロッパでは白粉(おしろい)があったそうだが、鉛で出来ていたため肌には良くなかったとか、結果肌が荒れたりシミが出来たりして、それを隠すためにつけぼくろが大流行したとか意味わからないな。


 化粧水だとか美容液を作れば良いのかもしれないが、保存料などの添加物も無いし、冷蔵庫が普及していない状態でそんなものを作って売ると逆にクレームなどが来そうだな……うちの女性陣が使う分には専用の冷蔵庫を作ればよいだけだから、大丈夫なような気がしてきたぞ。


「何か肌に潤いを与えそうなものを考えます……」


 そう言った瞬間、女性陣の目が光ったように見えた! ほんの一瞬だったが獲物を狙う鷹のような鋭さの視線だった。


「そのような物があるのかしら?」


「おそらく探せばあると思います」


「どうしてそう思うの?」


「お風呂上りに肌が乾燥することはありませんか? おそらく肌の水分が減っているのだと考えています、それを補うことの出来る物を探せば、肌に潤いを与えることに繋がるかと」


「なるほど、確かにエドワードのミラブールで洗ってもらった時以外では、そういったことはありますね」


「ミラブールで洗うと大丈夫なんですか?」


「そうよ、ミラブールで洗ってもらうと肌の調子が良くなるわ、だからみんなエドワードに洗って欲しいのよ」


 女性陣が頷いているがメリッサさんやセリーヌさんは今度から1人で洗うんですよ? セリーヌさんがやる予定だった毒キノコの実験を、お肌の実験に切り替えるのもいいかもしれないと思ったのだった。

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