第21話 目覚めと難題
目覚めるとベッドに寝かされていた。
「そうだ! ジャイアントスパイダーを倒した後、メグ姉に助けられたんだった」
自分の体を見てみると、怪我は全て治されているようで、痛みも全くない。
血だらけだったはずなんだけど、綺麗になっていて、着ていた装備も部屋の隅に置かれていて綺麗になっていた。
メグ姉が洗ってくれたのだろうか……。
「考えても分からないから、メグ姉の所に行こう」
ベッドから起き上がり立ちあがろうとするが、ベッドから落ちて床へ倒れてしまった。
「あれっ。力が入らない……」
床の上で立ち上がろうと、じたばたしているとメグ姉が入って来て僕を抱きかかえる。
「エディ大丈夫!? まだどこか痛むの?」
「痛みはないんだけど、体に力が全く入らなくて立つことができないんだ」
メグ姉は僕を持ち上げると、ベッドに寝かせてくれた。
「それなら多分、昨日ジャイアントスパイダーの親蜘蛛を倒したからじゃないかしら?」
「えっ、ジャイアントスパイダーを倒したのが原因なの?」
「ジャイアントスパイダーってかなり高ランクの魔物だから、エディとはかなりのレベル差があるはずよ。それを倒したことによって、エディのレベル大きく上がったせいじゃないかしら? 一般的に体をレベルに合わせて作り変えるとか言われているのだけど、急激にレベルが上がると、体がレベルアップに追いつかないことがたまにあるのよ。どれだけ上がったのか一度ステータスを確認してみたら?」
「そんなことがあるんだね。確認してみるよ」
【名前】エドワード・ヴァルハーレン
【種族】人間【性別】男【年齢】7歳
【LV】7
【HP】70
【MP】615
【ATK】70
【DEF】70
【INT】600
【AGL】70
【能力】糸(Lv2)▼
【加護】モイライの加護、ミネルヴァの加護
「5つも上がってる!」
「そんなに上がったの? 凄いじゃない、動けるようになるまで寝てなさい。血だらけのエディを見た時には凄く心配したんだから」
「ごめんなさい。あと、助けてくれてありがとう。メグ姉が来なかったら危なかったよ」
「ふふっ、どういたしまして。それで結局、鉄鉱石は見つかったの?」
「それが、1つだけ見つかったんだけど、手を伸ばした瞬間に捕まったみたいなんだ。でも、その代わりジャイアントスパイダーの糸が登録できたんだよね」
「ジャイアントスパイダーの糸ですって!? シルクより高級品じゃない」
「そうなの?」
「シルクと違って水にも強いし、頑丈でちょっとした鉄の防具なんかよりも強いから、貴族とかお金持ちに大人気の希少素材よ。洞窟にジャイアントスパイダーの糸がたくさん転がってたけどそれは商人ギルドに預けてきたわ。そっちはオークションになるのじゃないかしら」
オークションなんてあるのか、どんな商品がでるのか少しだけ興味あるな。
「貴族に人気があるの? それじゃあ作りだせるとか言わない方がいいかな?」
「そうね、信用できる人以外には絶対に言っちゃダメね」
「分かった、気をつけるよ」
「そういえば、ジャイアントスパイダーを真っ二つにして、洞窟に穴を開けたのってエディでしょ? あれは一体何をしたらああなったわけ?」
僕はレギンさんのところで買った剣のことを説明した。
「そんな剣があったのね。エディは普通の人より魔力が異常に多いんだから、気をつけないと危ないわ。下手したら洞窟が崩れて、生き埋めになってたところよ」
「倒せなかったら死ぬと思って、ありったけの魔力を込めちゃったからなー。でもメグ姉の言うとおり崩れてたらと考えるとゾッとするな」
「そうね、込める魔力の把握と上限を決めておいた方がいいわね」
「練習できるといいんだけど、どこかいい場所ないかな?」
「だったら、今度連れてってあげるわ。私が一緒にいれば大丈夫だと思うし」
「メグ姉って凄く強かったんだねー、凄くカッコよかったよ!」
「亡くなった神父様がね。自分が死んだら、教会に居られなくなる可能性もあるからって鍛えてくれたのよ。これでも元Aランクの冒険者なんだからね」
それにしてもAランク冒険者を育てられるって、亡くなった神父様って強かったのだろうか?
いつもニコニコとして、優しかったイメージしかないや。
「そうだ! メグ姉に渡したいものがあるんだった」
「えっ、私に?」
「ほら、カトリーヌさんのお店でシルクを売ったら金貨120枚になったでしょ?」
「そうね、あんなに高くなるなんてビックリしたわ」
「僕が初めて稼いだお金だから、メグ姉に感謝したかったんだ。半分の金貨60枚を受け取って欲しいんだけど」
「うーん、そうね……気持ちは嬉しいのだけど、やっぱりお金は受け取れないわ」
「えっ、どうして?」
「あら忘れたの? 元とはいえAランクの冒険者だったのよ。蓄えぐらいしっかりあるわ。怪我しないように、装備を整えてくれた方が安心なんだけど……でも、エディの気持ちをムダにするのも悪いから、こういうのはどうかしら?」
そう言ったメグ姉の提案に、僕は頭を抱えるのであった。




