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第20話 Side氷華のマルグリット

 私は商人ギルドを出たところでエディに話しかける。


「エディはこの後どうするの?」


「鍛冶屋に行こうと思ってるよ。装備と鉄が欲しいから」


「そうなのね? 私は行くところがあるから、ここで一旦お別れね。鍛冶屋は商店街から一本逸れた道にある、斧のマークが目印の店にしなさい。店主がレギンって名前なんだけど、私の紹介だってこれを渡せば売ってくれると思うわ。表の通りの鍛冶屋だけは絶対ダメよ、質が悪い上に高いから」


「分かったよ。メグ姉、何から何までありがとう」



 エディは嬉しそうに鍛冶屋に向かう。紹介状用意しておいた私、グッジョブ!


 さて、喜んでばかりもいられない。私のエディに不正を働いたクズを処理しに行かなければ。


 エディは大丈夫とか都合がよいとか言ってたが、それでは私の気持ちが収まらない。


 私はそのまま冒険者ギルドに向かいました。




 冒険者ギルドに入ると。知人が声をかけてきます。


「マルグリットさん! お久しぶりです。というかナイスタイミングです。マルグリットさんクラスじゃないと無理な案件がありまして、冒険者が行方不明になる事例が……」


 矢継ぎ早に話しかけてくるので、取り敢えず待ったをかける。

 

「ちょっと待って! エイレーネ、依頼を受けに来たわけではないわ」


「えっ、どういう……」


「あなた今、副ギルド長でしょ? よくもエディに不正を働いておいて、平気で私に話しかけられるわね!」


「不正って何のことでしょうか?」



 私の不正という言葉に反応した数人の受付嬢を確認する。


「エイレーネは知らないようね。でも副ギルド長なんだから知らないじゃすまされないわ。ほらそこの受付嬢、副ギルド長に報告してないことがあるんじゃない? あなたも同罪ね」


「ヒィー!」


 話しかけた受付嬢がガタガタと震えだします。


「ちょ、ちょっと待って下さい! 私が話を聞きますから少しだけ時間をください!」


「証拠が残らないぐらい粉々にするから大丈夫よ?」


「全然大丈夫じゃないです! えっと、ほらエディ君が知ったら悲しがりますよ……たぶん」


「うーんそうかしら? エディは優しすぎるのよね……」


 私が考え込んでいると。


「今のうちよ。そこのあなたとあなた! 何か事情を知ってるわね? 死にたくなかったら今すぐ話しなさい!」


 エイレーネは受付嬢から報告を聞くと、みるみる青ざめていった。


「あの、クソギルドマスター! あなたすぐギルドマスターを呼んできなさい!」


 受付嬢がギルドマスターを呼びに2階へ駆け上がり。しばらくするとギルドマスターが下りてくる。



「ちっ、誰だ俺様を呼びつけるやつは……氷華⁉」


「あら、ペトロス。あなたみたいのがギルドマスターだなんて、このギルドも質が落ちたわね」


「な、何しに来やがった! そうか依頼が欲しいのか? 今ちょうどいい……」


「何寝言ってるの? あなたが昨日やらかした不正の件に決まってるじゃない!」


「俺は不正なんてやってない――」



 ペトロスが続きを喋ろうとした瞬間。周囲の温度が急激に下がり、氷の花があちこちに咲き始める。



「ペトロス……死にたくなかったら言葉は選んで喋りなさい……あなた昨日、私のエディの冒険者ギルド登録を不正に握り潰したわね?」


「エディ? ……生産職のガキの……⁉」


「ふふっ、どうやら思い出したようね? 最後に何か言い残すことはあるかしら?」


「ちょっとストーップ! マルグリットさん、ストップです。まだっていうか殺しちゃダメです!」


「あら、エイレーネ。あなたそっちにつくの?」


「こんなクズの味方するわけないじゃないですか! 何があろうとマルグリットさん側なので任せてください……ペトロスあなた賄賂を受け取ったんですってね?」


「な、なんでお前がそんなこと知ってるんだ?」



「そんなの決まってるじゃないですか聞いたからですよ」

 

「町長が喋ったのか?」

「「「……」」」


「バカがギルドマスターだとほんと苦労します。マルグリットさん、そいつ拘束してもらえますか?」


「お安い御用よ」


 氷で作られた手枷と足枷がペトロスを拘束していく。


「な、何をしやがる? 俺様はギルドマスターだぞ!」


「黙れ! 賄賂をもらって不正を働いたんだ、もう犯罪者だよ」


「なっ! ……」


 項垂れるペトロス。


「そいつを牢屋に運んでおいて」


 エイレーネが言うとペトロスは連れて行かれました。


「マルグリットさん、これで許してもらえませんでしょうか?」


「そっちの二人はどうするの?」


 私がそう言うと、二人は震えだす。


「もちろん、減給にします」


「うーん、その辺が落としどころかしらね?」


「それで、そのエディ君を連れてきてもらえませんでしょうか? 冒険者登録もしますので」


「それについてはお断りよ。もう商業ギルドに登録しちゃったから必要ないし。ふふっあなた達あとで怒られるわよ、有能な人材を逃したって! それじゃあ私は帰るわね」


 そう言って私はギルドを後にしました。エイレーネは依頼がどうとか叫んでいたけど知ったことではありません。私はもう引退してますし。

 


 ちょっと遅くなったと思って急いで帰ったのだけど、まだエディは帰ってきてないようですね。


 おかしいですね、装備を買うのに時間がかかっているのでしょうか?


 胸騒ぎを感じてレギンの店に急いで向かいました。


 やはり早くに店を出たらしいです、さては鉄鉱石を探しに行きましたね、お姉ちゃんの勘がそう告げます。


 門の守衛に聞いたところ、やはり鉄鉱石を探しに行ったようですね、急ぎましょう。


 山の麓に来ましたが、エディの姿がどこにも見当たりません。どうやらエディはトラブルに愛されているようですね。


 お姉ちゃんなら()()()()()()()()という弟センサーを働かせると、魔の森の方角からエディを感じるではないですか。


 これはお仕置き案件ですが、今は急ぎましょう。



 魔の森を少し入ったところで、轟音と共に突然山が割れて大きな穴が開きます。


 穴から中を覗くと、血だらけで今にも倒れそうなエディが子蜘蛛に襲われようとしていました。

 

「よくも私のエディちゃんを傷物にしてくれたわね!」


 思わず本心が漏れてしまいました。失言は置いといて親蜘蛛を探すと、エディの目の前で真っ二つになっていました。


 つまり最初から私の目の前にいたようですが、お姉ちゃんの目にはエディ以外は映らないようにできているようです。困ったものですね。

 

「親蜘蛛はエディが殺したのね凄いわ。後はまかせなさい」



 まずはエディを安心させるのが先なので、子蜘蛛たちを凍らせ殺します。


 エディは安心したのか、気を失ってしまいました。


 抱きとめたエディを見ると頬に深い傷が入っているではないですか!


 全力の精霊魔法で傷を消し去ります。これもお姉ちゃんとしての嗜みですね。


 エディの傷も治り、一段落ついたので辺りを見回して状況を整理します。



 どうやらここはジャイアントスパイダーの巣になってたようですね、周りに食べ散らかした死体が散乱しています。落ちている装備を見た感じ、冒険者ですね。


 そういえば、最近どこかで冒険者が行方不明になっている事件が発生していると言っていたような気がします。そう、エイレーネが言ってたような。


 どうしましょうか……ジャイアントスパイダーはエディが倒したので、エディが解決したと言えます。なのに冒険者ギルドに報告するのは癪ですね。


 遺品やモンスターの死骸を収納リングに入れた私は、エディを抱えて商人ギルドに向かいます。

 

 商人ギルドでビビアン……違った、ビアンカを呼び出し、状況を説明するとエディの手柄として処理してくれるとのことだったので、後は全部丸投げです。ジャイアントスパイダーの魔石以外の素材は卸すと言ったら嬉々として請け負ってくれました。


 さて帰りましょうか。私にはまだ大事なミッションが残されてますから。

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