表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
188/434

第185話 屋台

 パレードの最終日は特に問題も起きることなく終わり、これで全てのパレードが終了したのだった。

 

 それから数日経ったところで、商人ギルドの方から相談があるので、数人で城を訪れて説明したいという連絡が入った。現在、城の方は通信施設関連でバタバタしていたため、今日は父様と2人で商人ギルドへ来ている。


「大公様に侯爵様、この度はわざわざご足労いただきありがとうございます」


「レークスの方から説明したいという連絡が来るのは珍しいからね、それで何か問題が起きたのかな?」


「問題と申しますか、まずは部屋の方へ参りましょう」


 アリアナさんに案内されて、会議室のような大きな部屋に入ると、そこには初めて見る商人ギルドの職員が数人いた。


「大公様と侯爵様はそちらにお掛け下さい」


 取りあえずソファに座ると、レークスギルド長が話し始める。


「実はお二人にお越しいただいたのは、先日のパレードに関係する話なのです」


「なるほど、それでどういった話なのかな?」


「パレードが終わってから数日の間に、何件も店を開きたいという者が現れまして、それがパレードで大公家の料理人が作っていた物の類似品だったため、儂らでは許可を出して良い物か判断つきませんでしたので、今回お越しいただいた訳です」


「なるほど、パレードでうちの料理人が使っていた、屋台をマネしたいということだね?」


「さすがは大公様、その通りでございます」


「そうだね、私としては特に問題ないと思うけど、エドワードはどう考えるかな?」


「僕としても特に問題ありませんが屋台だと、店舗というよりは露店に近いと思うのです。どういった扱いで許可を出すのかは決まっているのですか?」


「案はありますが、土地が絡んできますので、最終的な判断は大公様次第になります」


「なるほどね、まずはその案を聞かせてもらおうかな?」


「畏まりました。それでは、今回の件を取りまとめている責任者のマヌエラから話をさせましょう。マヌエラ頼んだぞ」


「ひゃい! そっ、それでは、わたっ、私の方から説明させていただきまふ……」


 かなり緊張しているみたいだけど、大丈夫なんだろうか?

 

 マヌエラさんは深呼吸を何回かすると話し始める。


「まず、申請が来ているのは6件ですが、申請前の相談件数も合わせると20件を超えます」


「結構来ているんだね」

「そうですね」


 父様と僕が返事をすると、更に話を続ける。


「それでまず、一番の問題が大公家のアイデアを丸パクリしているところなんです。串焼きやカラアゲなどは、そのままの見た目をマネしています。マネは見た目だけなので、味の方は大公様の屋台とは比べ物にはならない物ですが、庶民が気軽に食べられるという事を考えると、許可していただけるとありがたいです」


「見よう見まねで作った物にケチはつけないから、話を進めていいよ」


「ありがとうございます。次の問題は店を出すエリアや賃料になりますが、店舗形態から考えますと、商店街エリアよりは安く、露店エリアよりは高い賃料になると考えています。商店街近くだと、高い賃料を払っている商店街の方たちから苦情が入りそうなので、それ以外で設ける必要があります」


「なるほど、パレードの時は一か所に固めると人が集中しそうだから分散したが、商売として始めると設置する場所が問題になってくるんだね」


「大公様の仰る通り、どこでもで勝手に始められるとトラブルの引き金になりますので、新しいエリアを設置したらどうかという意見が現在のところは多いです」


「ふむ、エドワードはどう考える?」


「まず、マヌエラに聞きたいのだけど、今始めようとしている人たちは屋台を置きっぱなしにするのか、毎日セッティングするのかどっちかな?」


「あっ! ……申し訳ございません。その話は聞いてないです……」


 マヌエラさんの顔が、この世の終わりみたいな顔になったぞ。


「責めてる訳ではないので気にしなくて大丈夫ですよ。今言った通り、露店と言っても様々な形態があるということです。基本的には毎日片づけて開始時にセッティングする方式で行った方が良いとおもいますが」


「それはどうしてでしょうか?」


「屋台を置きっぱなしにした場合、夜間に破壊や盗難に遭う可能性や、ずっと固定された場所になると、ゴミなどを放置する可能性も考えられますからね」


「なるほど、露店エリアと同じで片付けまでをセットとするのですね?」


「露店エリアがそうなっているのなら話は早いですね、屋台を出す場所ですが1つは露店エリアにして、料金も同じで良いと思います。ただ匂いなどの問題も考えられますので、露店の中でも飲食販売エリアみたいのを作った方がいいのかもしれません」


「屋台も露店の1つという考え方なのですね?」


「そうですね、メリットとしては場所の賃料が安く、これから始める人にとってはチャレンジしやすい点でしょうか。デメリットとしては、客のターゲット層がばらけるので、収益についてもそこまでの期待は出来ない点でしょうか」


「露店を見にたくさんの人が集まって来るのに、収益が期待できないのですか?」


「僕も露店を一度見に行きましたが、魚や野菜といった食材の販売が多いように感じました。商店街ではなく、わざわざ露店で食材を求める人たちが、串焼きなどを求めるのかは僕には判断つきませんね」


「確かに商店街で買えない人たちが、串焼きのような贅沢品を買うとは考えにくいです」


「露店エリアについてはそんなところですかね。では、マヌエラさんに質問しますが、屋台を利用する客はどんな人が多いと思いますか?」


「屋台を利用する人ですか? そうですね……やはり、冒険者や商人が多いと思います」


「そうですね、僕もそう思います。なので、噴水のある広場から、冒険者ギルドまでの直線の道を屋台エリアにしてはどうでしょうか?」


「なるほど……噴水広場から冒険者ギルドまでの道には商店もないですし、屋台エリアにするにはちょうどいいですね」


 そこまで話したところで、レークスさんが話し出す。


「侯爵様のお考えは素晴らしいですな。大公様、いかがでしょうか? 新たに屋台エリアを設けてもよろしいでしょうか?」


「エドワードの案はよく考えられているね。取りあえず春から半年間、試験的に許可を出そう。半年後に売り上げやマナーなどの問題も含めて継続するか、もう一度話し合う事にしようか?」


「大公様ありがとうございます! ところでエドワード様、1つ気になったのですが、広場に近い方と冒険者ギルドに近い方ではどちらの方が良い立地になるのでしょうか?」


「それは僕にも分かりませんね、冒険者ギルド側なら冒険者に人気は出そうですが、実際のところはどんな物を売るかによって変わってきますので、こういうのはどうでしょうか?」


 ・場所については商人ギルドで区画を作っておく。

 ・区画使用料は一月単位とする。

 ・区画の場所は一月ごと人気店から選べる、もしくは抽選とする。


「エドワード様、区画の場所を人気店から選べるというのはどういう事でしょうか?」


「どの区画がそのお店に合っているのかは、売るものによって違うと思いますので、まず最初の月はどの区画が良いか希望を聞いて、希望者の多い場所はくじ引きなどで決めます。その次の月からは人気の高い店、売り上げ順などで決めればよいと思いますが、順位の高い店から好きな場所を選べるようにすれば、おもしろいかなと」


「競争心を煽るわけですな」


 レークスさんが答える。


「そうですね、競争心を煽れば、提供する料理の質も上がるかなと思いまして」


「侯爵様の考えは素晴らしいですな。大公様、今の案を基にこちらで進めさせていただきますが、よろしいでしょうか?」


「そうだね、後の事は治安が悪くなるなどの問題が起きない限りは、商人ギルドに任せるよ」


「ありがとうございます。それでは早速進めさせていただきますので、開始時期が決まりましたら、アリアナを使いに出します」


「よろしく頼むよ」


 こうして、屋台エリアがローダウェイクに新設される事となったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ