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第175話 技の練習

「ツムギちゃん、その格好はどうしたの?」


「アシハラ国にあるクノイチと言う職種の衣装なんです! セリーヌさんに、母の形見の衣装を見せて、私のサイズに合うものを作っていただきました」


「そうなんだね……」


 アラクネーの糸を実際に使ってみたいので、アキラさんに魔の森までの護衛をお願いしたところ、ツムギちゃんがくノ一、つまり忍者の衣装で現れたのだった。やっぱり忍者もいたんだね。


「アキラはツムギちゃんがついて来て大丈夫なの?」


「ずっとエドワード様の役に立とうと訓練を続けて来たので大丈夫でござろう」


「まだ、祝福の儀も済んでいないと思うんだけどな」


「エドワード様、アシハラ国では出来るだけ早くから魔物を倒した方がよいとされているのでござるよ」


「そうなんだね、そんなに深くに行かなければ大丈夫かな……しょうがない、それじゃあ行こうか?」


「「畏まりました」」



 プレジール湖を渡るため、船に乗り込む。


「船長、今日もよろしくね」

「お任せください、それでは出発します」


 城から出た船は帆を張り、風魔術で進み出す。


「エドワード、私もあの服が欲しいな」


 ウルスがわけの分からないことを言い出した。


「くノ一の衣装なんか何に使うの?」


「私も忍びになりたいのだ! 糸を使う忍び、カッコよくない?」


 ……確かにありだな、僕用の衣装も作ってもらおうかな? 待てよ! ウルスに着せればクマのぬいぐるみ感が一気になくなるな!


「帰ったらセリーヌさんにお願いしてみようか?」


「エドワードにしては珍しく話が分かるじゃん」


「いや、ウルスに衣装を着せるのもいいかなって」


 ぬいぐるみの販売が好調なら、お金持ちの間で流行ったとされる、ビスク・ドールをマネて色々な衣装を作れば売れるかもしれないな。


 色々考えているうちに到着したので魔の森へ向かう。


 ◆

 


「それじゃあヴァイス、魔物の気配があったら教えてね」


(われ)に任せろ。あっちだな』


 ヴァイスが指示した方向へ行くとビックボアを発見する。ビックボアはこちらに気付くと突進して来た。


「スパイダーウェブ!」

 

 ビックボアの前方にアラクネーの糸で作ったクモの巣を張ったところ、そのままクモの巣に捕まった。


「フゴッ! フゴッ!」


 ビックボアがどんなに暴れても、クモの巣に捕まった虫のように身動きがとれない。


「……お父様これはいったい」


「これがエドワード様の能力の一端(いったん)だ、これしきで驚いていては、身が持たないでござるぞ」


「そうなんですね、分かりました」


 何か色々言われているが、まだビックボアはクモの巣でもがいてるんですけど。ここからどうしようか……このまま雷を流してみよう。


 クモの巣に雷を流すと、焦げ臭い匂いと共にビックボアは死んでしまう。クモの巣に直接魔法を流せるのは非常に便利だ。

 しまった! この毛皮はもう素材としてはダメだな……。


「凄いです! このような事も出来るのですね!」

「遠距離だけじゃなく、近距離も驚異的でござるな」


 ビックボアを空間収納庫に片付ける。


「よし、次を探そうか?」

『次は向こうの方だな』


 ヴァイスに指示されて向かった先には、フォルターグリズリーがいた。ホーンラビットを食べている最中で、まだこちらには気がついていないようだ。


「折角複数の糸を同時に操れるのだから、決まり技みたいのを作ったらどうだい?」


 ウルスがアドバイスをしてくれた。


「複数の糸を使うの?」


「いつも練習しているんだから、戦闘でも活用しないと。今は12本同時に操れるでしょ?」


「そうだけど、手足を縛るぐらいなら、さっきのクモの巣の方が早いんだよね」


「例えばさっきみたいに素材をダメにするんじゃなくて、素材をいかに綺麗に手に入れるかに重点を置いてみたらどうだい?」


「なるほどね、少し考えてみるよ」


 綺麗な毛皮を手に入れるには、毛皮を傷つけてはいけないのはもちろん、血液も付かないようにしなければならない。フォルターグリズリーは肉も美味しいから、血抜きも出来るだけ早くした方がいいな……。


「よしイメージを固めたから行くね」


 イメージをしっかり固めて、フォルターグリズリーに向けて放つ。


斬首の吊るし人(ザ・ハングドマン)!」


 僕が叫ぶと、2本のアラクネーの糸がフォルターグリズリーの脚に巻き付き持ち上がり、フォルターグリズリーを逆さまにする。さらに2本の糸が両手を左右に引っ張り、動けないようにした。最後にフォルターグリズリーの頭をウィンドカッターを纏った糸が胴体と斬り離すと、頭の無くなった首から大量の血が流れ落ちる。


「「――!」」

 

「成功した!」


「『成功した!』じゃないでござる! 何ですかあの物騒な技は!」


「エドワード様、凄いです!」


 意外とツムギちゃんの方が、胆力あるのだろうか?


「エドワード、私のリクエスト通りだね」


『うむ、これなら美味しい肉が取れそうだな』


 タロットカードの吊るし人をイメージしつつ、首を斬る技にしてみた。逆さまに吊るしたところで、首を落とすので胴体に血がつかない、素材に優しい仕様となっている。


 フォルターグリズリーを空間収納庫に回収すると。


「よし、今の技をもう少し練習しようか?」


『うむ、質の高いお肉を確保するのだ! 次はあっちだ!』


 この後、ヴァイスに導かれるまま、お肉を狩りまくった……いや、技の練習をしたのだった。


 十分練習して満足したので、今は休憩している。アーススライムの糸で柵を作っているので、魔物が襲って来ても安心だ。


「そう言えば、ツムギちゃんは何で戦うの?」


「これです」


 そう言ってツムギちゃんが出したのは、小刀とクナイと手裏剣だった。手裏剣は釘の頭が無いタイプだ。


「なるほど、その短い針は投げるんだね?」


「よくわかりましたね?」


「僕の能力でも、似たような物を出しているからね」



 会話をしていると、ラーゼンクーが突進してきてアーススライムに激突した。


「このアーススライムの糸は頑丈でござるな……」


「便利でしょ? そうだ! ツムギちゃん攻撃してみたら?」


「よろしいのですか?」


「もちろんだよ、今なら安全に攻撃出来て、練習にもなるからいいんじゃない?」


「ありがとうございます。それではお言葉に甘えて」


 ツムギちゃんは手裏剣を構えると、ラーゼンクーに向かって投げた!


 ラーゼンクーの体に刺さるが、致命傷ではないので、生きているし凄く怒っているようだ。


「ブモーッ!」


 怒ったラーゼンクーは、アーススライムの柵に何度も突撃してくる。


「申し訳ございません。まだ未熟なので、深くには刺さらないようです」


「まだしょうがないよね……そうだ! ちょっとそれを見せて?」


「シュリケンをですか?」


 やっぱり手裏剣と言うらしい。


「うん、その先にこれをつけてっと。もう一度ラーゼンクーに向かって投げてくれるかな?」


「分かりました、それでは……」


 ツムギちゃんが手裏剣を投げると、手裏剣はラーゼンクーの首に刺さった。


 ところが先ほどとは違い、ラーゼンクーは急にのたうち回り出しそのまま死んでしまう。


「「――!」」


「エドワード様、今のはいったい何を塗ったのでござるか⁉」


「ワンダリングデススパイダーの毒で痙攣、不整脈、頻脈を起こす毒だね」


「そんな物騒な毒を!」


「エドワード様、凄いです! これならツムギでも魔物を倒せます!」


 ツムギちゃんは前向きなようだ。


「そうだ! この手裏剣の先端の加工以外は僕の能力で出せるから、それをレギンさんかロヴンに加工してもらえばいくらでも作れるし、僕のガントレットみたいに収納庫から取り出せる仕組みにしたら便利なんじゃない?」


「そのようなことが、可能なのでしょうか?」


「レギンさんに頼めば、何とかしてくれるはずだよ!」


「エドワード様、そのような高価な物はまだツムギには早いかと」


「戦うのだったら、早いとか遅いとかはないんじゃない? しっかりした装備をしないと!」


「そうでござるが……」


「よし、帰ってレギンさんに相談しよう!」


 技の練習を終えた僕たちは、レギンさんの所へ向かうのだった。

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