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第174話 アラクネーの糸

 訓練場へやって来た僕たちは、早速アラクネーの糸を試してみることにした。


 まずは試し切りように、直径20センチ長さ1メートルの鋼の(いと)を出す。

 

「それじゃあ、試してみるね」


 アラクネーの糸を出し、ウィンドカッターの魔法を濃密に付与して、鋼の棒を2回切る。

 鋼の棒は、ミスリルの糸で切った時と同じように、ゴトリとずり落ちた。


『やったではないか!』


 ミスリルや他の金属同様、風、火、氷、雷は問題なく使うことができ、水や土に関してもミスリルの糸と同じ特性で、魔力自体は流れるが変化は起きなかった。


 アラクネーの糸にはワンダリングデススパイダー同様、5種類の糸、縦糸、横糸、牽引糸、付着盤、毒糸が存在し、毒糸を使って水の魔法を使ってみたところ、糸の先から魔法を発動させることが可能だったが、土の魔法は出す事が出来ないようだ。



「こんなところかな?」


『随分と使い勝手が良さそうな糸だな』


「これからは、基本アラクネーの糸と炭化タングステンの糸がメインになりそうな感じかな」


「エドワードのアイデア次第で、かなり幅広いことが出来そうだ」


「時間が出来たら、直ぐに合成を試せるように、前もって考えておいた方がよさそうだね」


『それがよいだろう、(ワレ)も思いついたら、教えることにするぞ』


「お願いするね」



 部屋に戻るとジョセフィーナがいた。


「エドワード様、戻って来られたのですね? 今、訓練場まで迎えに行こうとしていたところだったので、ちょうど良かったです」


「そうだったの?」


「旦那様がお呼びです」


「父様が? 分かったよ、行こうか」


 ジョセフィーナの後について行く。


「もう、パレードの事は決まったの?」


「そうですね、内容は決まりましたので、現在はそれぞれ準備に掛かっていますね」


「そうなんだね」


 会話をしながら、父様の待つ部屋まで移動する。


「旦那様、エドワード様をお連れしました」

「待っていたよ」


 中に入ると、父様と母様がいた。


「何かありましたか?」


「パレードの内容が決まったから、報せておこうと思ってね」


 全て当日まで内緒じゃなくて良かった。


「そうなんですね。どんな感じに、決まったのでしょうか?」


「プラクラの町を皮切りに、バーランス、トゥールス、ファーレンを経由して最後にローダウェイクで行うことになったよ」


「えっ!? ローダウェイク以外でも行うんですか?」


「もちろんだよ! ヴァルハーレン領全体で祝ってもらいたいからね!」


「そうよ! エドワードの雄姿を、みんなに見てもらわなくちゃダメだわ!」


 父様にしてはテンション高いな、2人の嬉しそうな姿を見ると、恥ずかしいから小規模にして欲しいとは言えないな。


「それで、パレードというのは、どんな感じで行うのでしょうか?」


「馬車で町をゆっくり走るから、エドワードは基本座っているだけだね」


 それ一番苦手なやつです。


「あとは、ワインなどの飲み物や料理を市民に振舞ったりもするよ」


 思ったよりも、普通で安心しました。


「トゥールスとファーレンにはまだ行ったことがないので、ヴァルハーレン領を回るのは、少しだけ楽しみです」


「戻って来てから、ずっと忙しかったからだね」


「ところで僕は何か手伝わなくてもいいのでしょうか?」


「特に何もないから自由にしてていいけど、しばらくの間ジョセフィーナとアスィミはやることがあるから、外に出る時の護衛はアキラに言ってもらえるかな?」


「分かりました。外へ出る時はそうしますね」


 アキラさんとツムギちゃんは、最近はモイライ商会の方の護衛やお手伝いをしていたので、会うのは久しぶりだ。


「くれぐれも1人では外に出ちゃダメだよ。仕方が無かったとはいえ、大勢の貴族の前で能力を使ってしまったから、エドワードの事を脅威に思って、刺客を送って来る可能性もあるからね」


「そうでした! すっかり忘れてましたけど、能力については他の貴族から何か聞かれました?」


「色々質問はされたけど、懐に入れておいた糸を操っておいた事にしておいたよ」


「それで納得したんですか!?」


「納得はしてないだろうね。だけど、何をやったかなんて誰にも分からないから大丈夫だよ。まあ、エドワードの事を調べようとする間者は増えるだろうけど、気にすることはないさ。圧倒的な力を見せつけたんだから、堂々としてなさい。エドワードはもう貴族の子じゃなくて正式な貴族、しかも侯爵なんだからね」


「分かりました」


「でもそうだね、侯爵が私兵を持っていないのもなんだし、エドワード専用の騎士を雇ってもいいかもしれないな」


「騎士を雇うんですか?」


「フィレール侯爵として動く必要もあるかもしれないし……」


 父様は何かに気づくと急に考え込み出した。


「何か気になることでも?」

「失敗したかもしれないな」

「何をですか?」

「エドワードの叙爵だよ」

「まずかったのですか?」


「何もなければ良いのだけど。叙爵したことにより、エドワードに直接依頼を出せるようになったんだよね」


「そうなんですか?」


「まあ、依頼がきたからと言って必ず受けなければならない訳じゃないし、その辺りは父様と母様に相談してみることにして、騎士は念のために揃える方向で進めようか?」


「分かりました」


 騎士には見えないが、アキラさんやジョセフィーナだけでも十分だと思うんだけど、貴族はとにかく見栄えを気にするので、それなりに用意しないといけないのかもしれない。

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