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第171話 帰還と報告

 元バーンシュタイン公爵こと、レイナードさんの話が思いのほか長かったため、ローダウェイクへの帰還は次の日となってしまった。


 翌日は特に問題なく出発でき、トラブルもないまま、ローダウェイクへ帰還することができたのだ。


「ハリー様、ソフィア様、エドワード様、お帰りなさいませ」


 家令のルーカスを始めメイドたちが出迎えてくれる。


「ルーカスただいま。父様と母様は?」

「部屋の方でお待ちになっております」

「そうか、ではフィアにエドワード、報告に行こうか」

「分かったわ」

「分かりました」


 報告のため、おじい様やおばあ様が待つ部屋へ移動する。


 部屋へ入ると……。


「エドワードぉー!」


 いつものおじい様の抱擁が待っていたのだった。


「おじい様におばあ様。ただいま帰りました」


「エドワードお帰り。ハリーにソフィアも移動で疲れているだろうが、早速報告を聞こうか?」



 父様が分かりやすく説明していくのを、おじい様とおばあ様は口を挟むことなくジッと聞いている。

 報告が終わるとおじい様が。


「まずはエドワードの侯爵の叙爵からだな。エドワードおめでとう、よくやった!」


「さすがはあたしの孫だね!」


「ありがとうございます。喜んでもらえて良かったです!」


「これはあれだな! パレードとお祭りをしなければならんな!」

「当然だね!」


 とんでもない事を言い出したぞ!

 

「おじい様とおばあ様、パレードとお祭りというのは、少しやり過ぎじゃないでしょうか?」


「全然やり過ぎじゃないよ! アルバン、期間はどのくらいにするんだい?」


「そうだな、最低でも1週間は必要だな」


「1週間!? そんなにお祭りをするのですか!」


「エドワードは陛下を救っただけではなく、大勢の貴族の命や令嬢たちを救ったのだ! 英雄と呼んでも差し支えないだろう」


「父様、残念ですが、城内での戦闘は箝口令が敷かれています」


「当然と言えば当然か、城内に賊の侵入を許しただけでも箝口令が敷かれるのに、今回は人間が魔物化するという大事件だからな」


「父様と母様は、そういった例をご存じでしょうか?」


 父様の質問に、おじい様とおばあ様は考え込んでいる。何か心当たりがあるのだろうか?


「ハリーには以前、エルフと人族が仲違いしたきっかけを話したな」


「ステータスの良いとこ取りをする実験を、かつて行っていたという話ですね」


 そんな実験が行われていたのか!?


「そうだ。ここからは儂も実際に見聞きした訳ではないから推論になるが、種族の良いとこ取りを考える者がいるということは、魔物の能力を取り込めないかと考えるものがいても、おかしくはないだろうとは思わんか?」


『――!』


 そんな事が実際に可能なんだろうか? ブラウとアヴァールは確かに、オクルスプス並みの再生力を持っているだけではなく、オクルスプスの弱点でもある素早さも手に入れているようだったが。

 

「そう言えば、ブラウが魔物化する前に、アヴァールがブラウの背中にナイフを刺していましたね。あのナイフに何か塗ってあったか、あのナイフ自体がそういった魔道具なんでしょうか?」


「ふむ、そんな事が魔物化する前にあったのだな……」


「ナイフに刺されたブラウが、微動だにしなかった事を考えると、既に薬などで強化を行っていた影響の可能性も考えられますね」


「エドワードは、よくそんなのをポンポンと思いつくわね」


 おばあ様が感心しているが、まさか地球の知識なんですとは言えないな。

 

「僕の能力が変わっているせいですかね? ……そうだっ! 魔物の能力を、僕とは違った形で取り込める能力があるっていうのは、どうですか?」


「なるほど、エドワードは糸に関係する魔物の魔石を取り込めるから、そういった未知の能力があっても不思議ではないな」


 おじい様も感心しているところを見ると、そう言った話は聞いたことがないのだろう、自分で言ったものの、可能性は薄そうかな。


「父様、イグルス帝国で、過去に魔物を戦争に投入したとかいう事はないんですよね?」


 父様がおじい様に質問する。


「うむ、無いな。そういえばお前たちにも報告せねばならん事があったのだ。今回のスタンピードの原因が分かったぞ!」


「「「――!」」」


「原因って、分かるもんなんですか!?︎」


「通常なら分からないだろうが、今回は特別だ。要するに、セラータの町で起こったような事が起きたのだ」


「もしかして、イグルス帝国の仕業でしょうか?」


「相変わらずハリーは鋭いな。どうやらイグルス帝国の町が落ちたらしい。それも森に飲み込まれるような形でな」


「「「――!」」」


「ねえ、ヴァイス。エンシェントトレントって他にもいるのかな?」


『エンシェントトレントぐらい、魔の森の中心部に行けばいくらでもいるだろう。我が眷属のエンシェントウルフはあの個体だけだろうが』


 ヴァイスが、どうだ凄いだろうとばかりに威張っているのだが、ただ可愛いだけなので癒されるだけだな。


「ヴァイス殿は何と?」


 おじい様が聞いてきたので答える。

 

「魔の森の中心部に行けば、エンシェントトレントはたくさんいるそうです」


「そうなんだね……たくさんいるのか……」


「父様どうしました?」


「いや、たくさんいるのなら、王国でも今以上に注意しないと、いつ町が無くなってもおかしくないからね」


「確かにそうですね」


「父様の情報から、イグルス帝国が魔の森で何かをやってるのは間違いなさそうだね」


「その行為が、町を落とす実験だとしたら怖いですね」


『――!』


「エドワード! 今何を言った!?︎」


 おじい様がビックリしたのか聞きなおしてきた。


「えっ? 町を落とす実験のことですか?」


「実験か……そんな事が可能だとしたら、恐ろしいことだな……」


「でも、コントロールしようと思ったら、いくつも町を潰さなければならないですよ?」


「試すのが敵国の魔の森だったら、無差別にできるのではないか?」


「……そうですね。おじい様の言う通りです。何をすれば起きるのかだけが分かればよいのですね……」


「うむ、恐ろしい話だが、イグルス帝国を詳しく調査せねばならないようだな?」


「そうですね、それでは父様、王家への報告はどうしますか?」


「もう少し詳細が分かってからでよいだろう。そもそも、セラータの町がどのようにして滅びたのかを知っている者自体少ないからな」


 エンシェントウルフに教えてもらった真実を知っているのは、ごく一部だけだ。


「それにしても、イグルス帝国の行いで、こちら側までスタンピードのとばっちりを受けるのは割に合わないですね」


「うむ、ブラウがいなくなった今、本気でイグルス帝国の事も考えねばならないな」


「取りあえず、大きな報告はそんなところかな」


「それじゃあ、もうエドワードは借りてってもいいね?」


「母様はエドワードに用事が?」


「そうだね、それじゃあエドワードは借りていくね。ソフィアも行こうか?」


「はい、お義母様」


 僕はおばあ様に抱えられると、部屋を後にした。


 おばあ様に抱えられたままの僕は、そのままお風呂へ直行するのだが、最初はおばあ様と母様だけだった女性陣もお風呂場へ到着するころには、いつものメンバーになっているのだった。


 いや、そういえばビアンカさんが増えていたな。

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