第165話 新たなる力?
昨日は疲れた……2体の異形を倒すより、帰ってからの方が疲れたかもしれない、世界が変わっても、女性たちの色恋話好きは変わらないようだ。
2体の異形を倒したということは、レベルが上がってるかもしれないので確認してみることにした。
【名前】エドワード・ヴァルハーレン
【種族】人間【性別】男【年齢】7歳
【LV】40
【HP】1100
【MP】2015
【ATK】1040
【DEF】1040
【INT】1420
【AGL】1150
【能力】糸(Lv7)▼、魔(雷、氷、聖、空)
【加護】モイライの加護▼、ミネルヴァの加護、フェンリルの加護
【従魔】ヴァイス、ウルス
レベルが上がってる! しかも4つも上がってついにレベル40になったぞ。【MP】も遂に2千を超えたな……。
ん? 糸の能力のレベルが7に上がっている! 早速見てみよう。
【能力】糸(Lv7)
【登録】麻、綿▼、毛▼、絹、パスタ
【金属】鉄、アルミ、鋼、ステンレス、ピアノ線、ナトリウム、マグネシウム、チタン、タングステン、炭化タングステン、銅、銀、金、白金、ミスリル
【特殊】元素、スライム▼、スパイダー▼、カタストロフィプシケ、蔓、グラウプニル(使用不可)
【付与】毒▼、魔法▼
【素材】カタログ
【形状】糸、縄、ロープ、網、布▼
【裁縫】手縫い▼、ミシン縫い▼
【登録製品】カタログ
【作成可能色】CMYK
【解析中】無
レベル7に上がったが、グラウプニルは使用不可のままだな。素材の欄も登録製品と同じでカタログ表記になったようだ。
そして、レベル7の新たなる力は『合成』らしい。『素材の合成』との違いがあまり分からないな、少し整理してみよう。
レベル1ー植物素材の登録
レベル2ー鉱物素材の登録
レベル3ー魔物素材の登録
レベル4ー素材の合成
レベル5ー製品登録(服など単一素材で製作可能)
レベル6ー製品登録2(服など複数素材で製作が可能)
レベル7ー合成
各レベルによる糸の能力なんだが、こうして考えると『素材の合成』の上位互換のような気がするな。
『ねえ、ウルス。糸の能力のレベル7の能力の合成って今までと何が違うか分かる?』
『分からないね。ある程度どんな能力か分かればアドバイスを出せるけど、現段階では私にも分からないな。ただ、魔力消費には気を使った方が良さそうな能力だろうね。レベル7になる条件が【MP】2千ってことも考えられるから』
『なるほどね、その可能性もあるね、試すのはローダウェイクへ帰ってからの方がいいかな?』
『その方がいいかもね』
ステータスの確認をしていると、ジョセフィーナがやって来た。
「エドワード様、旦那様がお呼びです。バーンシュタイン公爵が挨拶に見えられたそうです」
「バーンシュタイン公爵が? 分かったよ」
ジョセフィーナの後を着いて応接室まで行く。
「旦那様、エドワード様をお連れしました」
「入って来て」
中に入ると、バーンシュタイン公爵以外に4人もいた。
「ヴァルハーレン大公家嫡男のエドワード・ヴァルハーレンにございます」
挨拶をすると赤髪、青目の30歳ぐらいの男性が僕を観察するように見ている。
「今回来たのは会議でも話があったと思うが、今回の会議を最後として儂は引退する。よって次の公爵の挨拶回りに来たのだ」
「私の所へですか?」
父様が答えた。
「ああ、それについては私から説明しよう。奥方と子息には初めて会うので、まずは自己紹介から……」
今喋っている人が赤髪、青目でさっき僕を観察するように見ていたバーンシュタイン公爵家嫡男で次に公爵となる、イグニス・バーンシュタイン(32歳)でその隣のブロンド髪に青目の女性が奥さんのマリアンヌさん(29歳)、燃えるような赤い髪にガーネットのような赤い瞳の長女プラーミア嬢(8歳)、桜色の髪に右目がルビーのような赤色、左目がアメシストのような紫色のオッドアイの次女フラム嬢(6歳)だそうだ。
オッドアイの人を初めて見たが、なるほど神秘的な感じがする。ノワール嬢やエリー嬢に並ぶ神秘的さかもしれない。しまった、ジッと見過ぎたせいかフラム嬢が俯いてしまった。
「ハリーも知っての通り、私は貴族派というタイプではないからな。父の引退と共にバーンシュタイン家は貴族派から抜ける。もちろん今迄の繋がりを無下にする訳ではないが、今後は他家とも交流していこうと考えている」
「なるほど、それでうちに挨拶を」
「まあ、他にも父がべた褒めだった、エドワード君を一度見てみたかったというのもあるが、主な目的は最初の方だよ」
べた褒めって、バーンシュタイン公爵は何を言ったんだ、気になるな。
「あの2体を葬り去った攻撃を見た時には、年甲斐もなく声を上げてしまったぞ! あれ程血が騒いだのはクロエを見た時以来じゃな」
「おばあ様ですか?」
「そうじゃ、戦場を飛び回るクロエの姿には、男であっても憧れを抱いたもんだ」
「そうだったんですね。バーンシュタイン公爵は、その……お体の方は大丈夫なんでしょうか?」
「魔術の事を言っておるのか? 心配することはない、儂は十分長生きしておるからな。妻も5年前に亡くしておるから、いつお迎えが来てもおかしくないわい。儂のような老いぼれの心配までして、なるほど、強いだけではなく優しい心も持っておるのか。プラーミアにフラムよ。これがエドワード・ヴァルハーレンだ。顔は……奥方に似て優しい顔をしておるが、既に儂よりも強いぞ」
「この子がおじい様よりですか? そんなはずありません!」
プラーミア嬢はおじいちゃん子なのかな? それに対しフラム嬢は俯いたままだ。
「おお、そうだエドワードに1つ聞きたいのだ、孫のフラムはちょっと変わった瞳の色をしていてな。先程ジッと見ていたがどう思った?」
「えっ! どう思うですか? 左右の瞳の色が違う人は初めて見たのですが、神秘的で綺麗な瞳の色だと思いますよ」
「――ッ!」
フラム嬢は一瞬僕を見た後、真っ赤な顔になりまた俯いた。かなりの恥ずかしがり屋みたいだな。
「やはりおもしろいな。孫のどちらかと婚約せんか? 何なら二人共でもいいぞ」
『――!』
いきなりの爆弾発言に一同驚愕する。
「父上! いきなり何を言い出すんだ。大公様に失礼ではないか」
「イグニスよ、そなたはエドワードの活躍を見ておらぬから、そんなに悠長なことを言っていられるのだ。早く動かぬと、孫の幸せが逃げて行くではないか」
どうも貴族派のトップというイメージというか、噂と違うように感じる人だな。
「ハリーよ実際の所はどうじゃ? 会いに来るものはいなくても、手紙ぐらいはもう来ておるのだろう?」
「バーンシュタイン公爵の言う通りですね。エドワードと歳の近い娘を持つ貴族からは、ほぼ全て来てますね」
「なっ!」
「ホレ見たことか、イグニスに公爵を譲るのが少しだけ不安になったぞ。それでどうするのだ?」
「そうですね、エドワードの事についてはローダウェイクに帰ってから考えるつもりですよ。まだ再会して間もないので親子の絆を深めるのが先だと思っていますので」
「まあ、そうなるだろうな。しかし、儂からの申し出も候補には入れておいてくれよ? そうだな……お前たち若者が好きそうな大義名分を揚げるなら、国王派と元貴族派のトップの婚約は新しい王国には必要だとかはどうじゃ?」
「「――!」」
どうやら父様とイグニスさんには何か響いた物があったようで、2人で会話を始めた。
「エ、エドワード様の能力は糸だと聞いたのですが本当なんでしょうか?」
まさかのフラム嬢から質問が来た。
「ええ、そうですよ。ほらっこんな感じで」
ポケットから出した糸を動かしてみる。
「わぁ、凄いです! エドワード様は……その……変わった能力で嫌な目に遭ったりとかしないのですか?」
なるほど、フラム嬢がずっと俯いているのはオッドアイを見られたくないのだな。
「実は孤児院の時の話なんですけど、祝福の儀を受けたら冒険者になろうと約束してた子たちがいたのですが、糸の能力を授かったところ仲間から外されたことがありました。まあそのおかげで両親と再会する事が出来たんですけど」
「やはり、そういったことはあるのですね……」
「フラム嬢は瞳の事で、色々言われた事があるのですね?」
「はい……」
「言いたいヤツには言わせておけばいいのですよ。きっとフラム嬢の事を理解してくれる人はいるはずですから。もしかしたら、テネーブル伯爵のノワール嬢と気が合うかもしれませんね、彼女も容姿で苦労していたみたいですよ」
「そんな方がいらっしゃるのですね」
「ええ、貴族派で無くなれば交流できるかもしれませんし、もし会うことがあったら言っておきましょうか?」
「お願いいたします」
「へー、あなた凄いわね! フラムと一瞬で仲良くなれるなんて、なかなかいないわよ!」
プラーミア嬢が口を挟んできた。この子は空気を読めないタイプなんだな。
「話しかけていただいたのはフラム嬢からなので、僕は凄くないですよ」
「――! そうよ、フラムは凄いのよ。あなた分かってるじゃない!」
プラーミア嬢はフフンと無い胸を張る。妹思いの姉ではあるようだ。
この後、3人で会話を楽しくできたと思うが、バーンシュタイン公爵の孫を見つめる優しい視線が妙に気になったのだった。




